中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

a-moll 其の四

2008-06-24 23:11:22 | クァルテット
 メンデルスゾーンは言うまでもなくロマン派の作曲家ですが、ヴィヴァルディやバッハ、そしてベートーヴェンを強く尊敬していました。それらの作曲家の音楽をすみずみまで研究していた事は、彼の作品の中にもよく表れています。

 例えば、このa-mollの第二楽章の中間部のフーガの所なんかは、バッハのオルガン曲のようでもあり、ベートーヴェンの「セリオーソ」のようでもあります。それらが若くて、健康的な理想にあふれた青年のなかで融合したよたうな感じがします。

 ところで、メンデルスゾーンは同時代のロマン派の作曲家達の事を、どう思っていたのでしょうか?初めにお断りしておきますが、実は彼は、けっこう口が悪いのです。

 「パリ風の絶望的欲望、情熱にのみ心を煩わし、拍子と休止、まさしく音楽的なものをあまりにも無視し過ぎる」

 ショパンの事です。「拍子と休止」というあたりで、メンデルスゾーンが「キチッとした拍節感」こそが音楽的だと感じていた事がわかります。

 「彼の管弦楽法はひどく汚く、ごちゃごちゃとなぐり書きされているので、かれのスコアを一度手に持ったら、手を洗わずにはいられないくらいです。それに、殺人、苦悩、悲惨だけから音楽を構成するというのは、恥ずべき事です。」

 ベルリオーズの事です。メンデルスゾーンの純粋な透明感とは、水と油でしょうね。特に「幻想交響曲」は嫌いだったようです。しかし、きわめつけは次です。

 「指は多いが、頭脳は足りない」

 …誰かわかりますか?ごめんなさい、リストさんです…。これはリストの作品ではなく、演奏の事です。リストの演奏は、効果を狙って楽譜の指示を明らかに無視したものだったようです。過去の偉大な先人を強く尊敬するメンデルスゾーンには、それがどうしても許せなかったのでしょう。

 これらを見ても、メンデルスゾーンの音楽はロマンティックですが、それは決して感情的だったりショッキングなものではなく、古典的な精神で創られたものだという事がわかります。

 同業者に厳しいのは世界中誰でも、いつの時代も一緒ですが…。

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コメント (4)
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