中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

a-moll 其の一

2008-06-01 23:24:59 | クァルテット
 今まで「裏メン」として、メンデルスゾーンが「弦楽四重奏曲第2番 作品13 a-moll」を作曲した18歳の頃までの事について書いてきましたが、下調べはこのぐらいにして、後は個人的な思い入れを書かせて頂きます。わかりやすく言い換えると、少し話を拡げ過ぎて、収拾がつかなくなってきたという事でございます。

 18歳の若さで作曲されたこの曲は「第2番」とされていますが、それは「2番目に出版された」という事で、実はメンデルスゾーンが初めて書いた弦楽四重奏曲です。しかし聴けばわかるように「習作」という感じは全く無く、ベートーヴェンの四重奏曲を研究し尽くした事がはっきりと見てとれます。

 と、いうような事がこの曲に関する一般常識ですが、個人的にはこの曲の一番の特徴は、「涙が出るほどみずみずしい」という事だと思っています。ここには「新しいモノを創ってやろう」などというような、若い作曲家特有の自己顕示欲も感じられません。

 この「みずみずしさ」は独特のものです。それは単純に「育ちが良い」というものともまた違います。純粋にベートーヴェンやバッハを尊敬する天才青年の空想とでも言えるでしょうか。そのどこまでも純粋な世界は、言葉で表現するのが難しいものです。

 「河原の小石はみんなすきとおって、たしかに水晶やトパーズや、またくしゃくしゃの褶曲をあらわしたのや、またかどから霧のような青白い光を出す鋼玉やらでした。ジョバンニは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、美しい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。」

 「ジョバンニ」と言えばご存知、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。このような「嬉しい」とか「哀しい」などの感情とは関係ない所にある、儚く切実な美しさを、この曲には感じます。(就寝時間ですので続きはまた今度…)

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