紙一重の際どい試合でした。鹿島らしい勝ち方といえばそれはそうだし、川崎らしい負け方といえば、それもまたその通りの内容。天皇杯の醍醐味は先週のHonda戦のような、カテゴリーの違うチームが対戦する事がその一つなのかもしれませんが、プロの試合の面白さの一つは力の拮抗したチーム同士が対決する事です。緊迫感に包まれていてハイレベルでクオリティの高い内容でした。
局面での一つのポイントは田代対山脈でしたが、さすがにハイタワーを相手にすると、田代もいつものようには制空権を取れません。周平の高さとカバーリングが効いていました。1対1で抜かれそうになっても体を使って止めていて、周平の大きさ(存在も上背も)を感じました。ただ田代もピッタリのタイミングで飛べば競り負けません。本山のゴールもその田代の競り合いから繋がった形。
守備面は9月の対戦に比べると、そこまでガチガチのマンツーマンではなく。基本は人に付く形でしたが、ゾーンで守るところは守ってマークをしっかり受け渡していました。シュートを打たせるにしてもコースを限定して「打たれる」よりは「打たせる」場面が目立ちました。終盤は押し込まれましたが、どれだけ選手交代しても結局最後はジュニーニョに預けてきたので、そこに人数を割けばよいからあまり危険性は感じなかったです。ましてやそのジュニーニョは愛媛戦に続いてシュートが全く入らない日でしたから。点を取る時は恐ろしいくらいの固め打ちをしますが、逆に取れない時のジュニのシュートは本当に入らない。
川崎で怖かったのはテセとユウスケ。ユウスケには前半から何度も右サイドと突破されて、おまけに前半のうちに新井場が警告を受けたから本当に嫌でした。スピードがあって敵にしたら本当に危険だなと感じました。テセはポストもそれなりに無難にこなしていて、得意のフィジカルを前面に押し出した競り合いを仕掛けてきたのが厄介でした。
影のMVPは小笠原ですね。中盤の底で体を張ってディフェンスに徹しました。フィジカルの強さが生かされていました。後半に一度だけ、自陣深くで憲剛にボールを掻っ攫われたシーンがあったけどそれ以外はほぼパーフェクト。特にマギヌンを封殺して川崎の前線と中盤の連動性を失わせたのは、鹿島の勝因の大きなポイントとなりました。
川崎の『再び国立』で初タイトルに懸ける意気込みは充分に伝わってきました。僅差の勝負をモノにできなかった、これがタイトルにあと一歩手が届かなかった要因。ただこれはナビスコ決勝の後にも記したけど、この0-1の1点の壁と負けた悔しさを乗り越えた先には初タイトルが待っていると思うし、それを達成した時には真の強豪と呼ばれるようになるでしょう。浦和やガンバもそうやって今の地位を築いてきましたし、川崎も彼らと同じ道を辿れるはずです。来年はきっともっと強くなりますよ。
決勝の相手は広島。出足の鋭さと豊富な運動量から来る躍動感溢れるフットボールはかなり脅威。ただしこちらも5年ぶりの元日国立、簡単に引き下がるわけにはいきません。強い鹿島の復活を印象づけるためにも、天皇杯を取って素晴しい新年の幕開けといきたい。