http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20091226-OYT1T00026.htm
2009年12月26日配信
記事の紹介です。
来年度予算 公約優先では財政がもたない(12月26日付・読売社説)
政権交代で予算編成の過程は様変わりした。だが、出来上がった来年度予算案は、国債と税外収入に頼る構図が相変わらずで、借金体質は例年に増して強まった。
◆税収はわずか37兆円◆
政府は25日、2010年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は92・3兆円と、当初予算では過去最大である。
具体的な政策の実行にあてる一般歳出は53・5兆円に膨らんだ。国債の利払いや償還に使う国債費は20・6兆円で、地方交付税は17・5兆円だった。
一方の歳入は、税収が37・4兆円と、第2次補正後の09年度予算とほぼ同じであり、26年も前の水準まで落ち込む。
財政投融資特別会計の積立金や外国為替特会の剰余金など、いわゆる埋蔵金をかき集めた10・6兆円の税外収入と、44・3兆円の国債発行で不足分を補う。
歳入全体に占める国債への依存度は48%と、ほぼ半分を借金で賄う計算だ。
景気は財政出動で下支えしなければ危うい状況である。このため、国債の増発はある程度やむを得ないが、中長期的には、借金依存の財政を放置出来ないのも明らかである。
◆政権公約墨守で迷走◆
今回の予算編成を難航させた最大の原因は、政権公約(マニフェスト)に掲げた政策の実現に鳩山内閣がこだわったことである。
内閣が発足するや、自公政権が決めた概算要求基準(シーリング)を廃止し、各府省に概算要求を出し直させたことが、迷走の始まりだった。
概算要求の総額は95兆円と、09年度当初予算を6・5兆円も上回った。子ども手当、高校授業料の実質無償化や高速道路料金の一部無料化など、政権公約の関連項目が並んだためだ。
これらの取り扱いについて議論するうち、鳩山内閣は二つの“誤算”に見舞われた。
一つは税収の大幅な落ち込みである。景気の低迷で、09年度は法人税を中心に、予想より9兆円以上減少することがわかった。10年度も税収の回復は期待できず、前年度並みの水準を見込まざるを得なくなった。
二つめは、予算の無駄減らしによる財源の確保が、期待はずれに終わったことである。
民主党は、一般会計と特別会計を見直せば、10兆円や20兆円の財源を確保するのは容易だと主張してきた。政権公約には、政権奪取から4年後に、年間17兆円近い財源を捻出(ねんしゅつ)すると明記した。
ところが、鳴り物入りで始めた事業仕分けでは、無駄の洗い出しが進まなかった。当初は3兆円の削減を目指したが、実際には1兆円程度にとどまった。
民主党が想定したほどには、無駄がなかったということである。それなのに、財源はあると言い続けた鳩山政権の責任は重いと言わざるを得ない。
鳩山首相は、深刻な財源不足に直面してもなお、政権公約の実行にこだわり、税制改正大綱のとりまとめは大幅に遅れた。
結局、小沢幹事長が出した民主党の要請を受け入れ、暫定税率廃止の撤回など政権公約の一部を修正した。この結果、予算案の年内編成になんとかこぎ着けた。
だが、農家への戸別所得補償など、来年の参院選を意識したと思われる党主導の政策に多額の予算をつけたのは問題だった。
景気低迷が続く中、公共事業関係費を前年度比18%、1・3兆円も削り、5・8兆円に縮減したことも懸念材料である。
◆財政再建は待ったなし◆
10年度予算案の決定で、新たな数字が浮かび上がった。国と地方の長期債務が10年度末で862兆円程度と、国内総生産(GDP)の1・8倍にも及ぶ見通しになったことだ。欧米の主要国に比べると、日本が突出して高い。
日本には1400兆円を超す個人金融資産があり、「国内だけで国債などの消化が可能だから大丈夫」という見方がある。
だが、住宅ローンなどの借金を除けば、残りは1000兆円余りだ。長期債務との差が年々縮小している現実を見れば、やはり国として安定した税収の確保を考えねばなるまい。
鳩山内閣は、最有力の財源である消費税について、次の衆院選まで税率引き上げを封印した。しかし、こうした状態では、財源不足でまともな予算が組めないことがよくわかったはずだ。
仮に消費税で方針転換しても、社会保障の財源として必要なことなどを丁寧に説明すれば、国民は理解を示すのではないか。
来年夏の参院選後には消費税率引き上げの議論を始め、景気が回復すれば直ちに実施できるよう、鳩山内閣は準備に入るべきだ。
(2009年12月26日01時18分 読売新聞)
記事の紹介終わりです。