フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 少し前になってしまいましたが、新しい本を出版しました。
           

 『テレビドラマを学問する』(中央大学出版部、880円+税)という本です。中央大学出版部のウェブページに出ている宣伝文は以下の通りです。
            

 テレビドラマはこれまで、小説・演劇・映画などに比べて、個々の作品が本格的な批評の対象になることはあまりありませんでした。しかし、テレビドラマには「通俗」「娯楽」にとどまらない、さまざまな可能性が含まれています。本書は、スポ根・必殺もの・学園ドラマから岡田惠和・野島伸司作品、さらには韓国ドラマの流行や『仁―JIN―』『家政婦のミタ』のヒットに至るまでを徹底的に分析。テレビドラマの歴史と現在、魅力と意義を解明したテレビドラマの総合的入門研究書です。(ISBN 978-4-8057-2705-8)

 私は自分を「文学研究者」と自己規定しており、今もそれは変わりません。ただし、「文学」をそれだけが特別なものと考えるのではなく、演劇、映画、テレビドラマなどとあわせて、「フィクション研究」という枠組みのなかで小説などの文学を考えたいとも思っています。今回も、テレビドラマを研究対象としたのは、この「フィクション研究」の一環だと考えています。
              

 また、この『テレビドラマを学問する』は、中央大学が高校生や一般の方にも読んでいただけるシリーズの1冊として刊行しています。テレビドラマのように身近すぎて意識しないメディアについても、こんなふうに研究対象として考察することができるということを、実践的に示してみたいと考えてこの本を書きました。
 テレビドラマを含めたフィクション研究の入門書として、できるだけ多くの方に読んでもらえたら幸いです。
            








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 ゼミ

           
 今年も、中央大学宇佐美ゼミの合宿に行ってきました。
 宇佐美ゼミの場所は都内某所です。河口湖とか軽井沢とか、そういうゼミ合宿をしたいという声もあるのですが、私の最大の希望は、「みんなが参加できるゼミ合宿」ということです。
 たとえば、まだ就職活動を続けているなどの理由で、期間内に用事がある学生でも、途中参加とか、日中に少し抜けるとか、そういう工夫をすれば合宿に参加できます。
 長年の経験で、ゼミ合宿ほど学生同士が活発に交流し、お互いに親しくなれる機会は他にありません。ぜひこの行事に参加してほしくて、私のゼミは毎年都内のたいへん便利な場所でおこなうことにしています。
          
 その甲斐あって、今年も体育連盟の活動でどうしても参加できなかった1人の学生を除き、全員がこの合宿に参加してくれました。
 もちろん、勉強はしっかりしますが、その他にもレクレーションのディベート大会、バレーボール大会もあり、夜は飲み会もあり。今年もおおいに意義のある、かつ楽しい合宿ができました。
            

 ゼミ
 (ゼミをしているときの様子)

 ゼミ
 (チーム対抗のディベート大会)

 ゼミ
 (なぜかディベート大会にカスタネット)

 ゼミ
 (夜は集まって飲み会)


 ゼミ
 (もっとも熱くなるバレーボール大会)

 ゼミ
 (皆さん、おつかれさまでした)

            









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 中央大学学術講演会のために青森市に出張してきました。
 この講演会は次のような趣旨でおこなわれています。

「中央大学学術講演会」とは、本学における学術研究の成果を広く社会に普及することを目的として、学員会(卒業生)地域支部の全面的なご協力の下、本学の教員が講師となり、市民の皆さまや本学の学員(卒業生)の皆さまを対象に開催している講演会です。講演では、時事的な問題や地域に密着したテーマについて、講師の専門分野の見地からわかりやすく解説いたします。(中央大学ウェブページより)

 私の研究分野の中から、今回は村上春樹『1Q84』について講演しました。成田本店という書店さんの御協力などもあり、中央大学関係者だけではなく一般の方も来ていただき、100名を越える方が来場されました。来てくださった方々には感謝申し上げます。

 講演会の跡には中央大学学員会(卒業生の会)の青森県支部会やその懇親会もおこなわれ、私も出席させていただきました。
 多くの中央大学関係者の方々に歓迎していただき、楽しく、かつ有意義な1日を過ごさせていただきました。

  
  (学員会青森県支部の懇親会)





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  (石巻市にまだ残る瓦礫の山)


 青森市で講演するにあたって、その前に宮城県石巻市へ寄り、プロジェクト結(ゆい)の活動を見てきました。

 プロジェクト結は次のような活動をする団体です。

主に、子どもたちの放課後の学びと遊びの場づくりを展開する「日常支援」と、子どもたちや地域の方を元気づけるイベントの企画・開催を展開する「非日常支援」を行います(ウェブページより)。

 今回この団体を訪ねたのは、私が中央大学大学院で指導した卒業生の塚原諒君が、この団体のメンバーとして活動しているからです。塚原君は大学院在学中からこの団体の活動に加わり、今春に大学院を修了した後は、この団体の有償ボランティアをして活動しています。
 私は、10歳から18歳まで宮城県仙台市で育ちましたので、東日本大震災に際しては多くの友人・知人が被災しました。震災後もそういった人々と連絡をとりあったり、私なりに寄付をしたりしましたが、実際に東北地方に出かけることはしていませんでした。
 今回、青森市に講演で出かけるということで、その前に石巻市の現状を見て、塚原君たちの活動の様子を見学させてもらいました。

 石巻市で大きな被害のあった地区では、まだ空き家になったままの家や瓦礫があちこちに目につきました。津波と火災のため、報道でもしばしば取り上げられた門脇小学校は、まだそのままの姿を残していました。

  
  (津波と火事の被害にあった門脇小学校)

 こうした現状の中で、プロジェクト結のメンバーたちは、支援物資の仕分けや搬入、仮設住宅の子どもたちの支援などをおこなっています。
 全国から集まった支援物資は、移転した後の旧石巻市役所に集められていますが、その量は膨大で、段ボールを開いて仕分けしないと使うこともできません。そうした地道な作業をプロジェクト結のメンバーたちが時間をかけておこなっているということでした。

 また、石巻市にはまだたくさんの仮設住宅があります。中には1500世帯もあるような大きな仮設住宅もあります。「震災後の復興」ということが言われますが、このような仮設住宅の多さは、「復興」どころか、まだ元の生活に戻ることさえできていないという状況を示しています。
 こうした中で生活する子どもたちについて言えば、通常の生活をすることすら困難です。ましてや勉強や遊びをする余裕が十分になく、プロジェクト結のメンバーたちが仮設住宅の集会室などでその支援をしているとのことです。

  
  (プロジェクト結によって仕分けされた支援物資)

 具体的には、集会室に遊び道具を持って行って小さい子どもたちを遊ばせたり、もう少し大きな子どもたちにはクッキーを作ってもらったり、といった活動をしています。また子どもたちの勉強を見てあげたりといった学習支援もあわせておこなっているとのことでした。

  
  (石巻市内の仮設住宅の1棟)

 震災から1年半が経ち、多くの人の意識の中から震災のことを徐々に消し去られていきつつあります。しかし、こうして被災地を実際に訪れてみると、まだ震災の傷が確実に人々の生活を奪ったままになっていると思い知らされます。
 だからこそ、こうした状況を復旧・改善させていく努力が、自治体・民間を問わず必要なのだと思います。今回、石巻市の現状とプロジェクト結の活動を見学して、そういう思いを強くしました。



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 12合同研究会

 大学院の合同研究会に出席してきました(9月2日開催)。

            
 この研究会は、早稲田大学(教育学研究科)、日本大学(文学研究科)、中央大学(文学研究科)で日本の近現代文学を研究している大学院生たちの合同研究会です。もともと早稲田大学と日本大学でおこなっていた研究会に、昨年から中央大学も参加させていただいたという経緯です。
 今回の会場は早稲田大学14号館で、たいへん真剣な研究発表がおこなわれ、私たち参加した教員も一生懸命アドバイスをしました。今回のプログラムは次のようなものでした。

10:30~12:00 ポスター発表
13:00 宮脇正一郎(早稲田大学)
     横光利一の欧州体験――「憂鬱」と「日本人であるといふこと」
13:30 大熊達也(早稲田大学)
     宮本武蔵の大衆認識――吉川武蔵以前の描かれ方
14:00 東雲かやの(早稲田大学)
     「読むこと」の正体――川端康成『無言』論
14:30 舩山修平(中央大学)
     『狂つた一頁』と芸術映画の〈領土性〉――同時代の映画批評を中心に
15:30 古山綾子(中央大学)
     柳美里作品の家族像の変化 ――「フルハウス」を中心に
16:00 川口玲菜(日本大学)
     内田百『山高帽子』におけるプロットの不在
16:30 渡部敦(日本大学)
     円城塔「良い夜を持っている」をめぐって――「記憶の街」と読書する身体

 閉会の挨拶で石原千秋さん(早稲田大学)がこの会の意義を2点語っていました。一つはこの研究会で発表することを励みに大学院生が研究に精進すること。もう一つは、他の大学の先生のアドバイスの仕方を聞いて、教員の指導の参考になること。確かに院生にとって、午後の研究発表だけでなく、午前のポスター発表まで含めて参加者全員が何らかの発表をしますので、自分の研究をアピールするたいへんよい機会になったようでした。教員である私にとっても勉強になったことは、石原さんのおっしゃる通りでした。
 中央大学はまだ参加して間もないので、軌道になるまでもう少し時間がかかるかもしれませんが、この合同研究会を通して、学内の研究活動がさらに活発になるといいと感じました。

12合同研究会
懇親会の最初の様子。
千葉俊二さん(早稲田大学)の挨拶を真面目に聞いている皆さん。
その後、お酒が入ってからどうなったかはちょっと公開できません。



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    12三重

 三重県に出張して、高等学校で国語を教える先生方の研究会に出席してきました(8月31日)。
            
 正式な会合名は、三重県国語教育研究会・教材開発小研究会というもので、教科書に掲載されていない文章による独自の教材を考えている先生方の研究会合です。
 そこに講師として招いていただきました。私は文学研究者ですが、国語教科書についての論文・講演録などもかなり発表していますし、明治書院の国語教科書の編集委員も長く務めています。ですので、今回はその両方の立場を考えて、「国語教科書の小説教材をめぐって」というお話をさせていただきました。現状の教科書の小説採録がどのようにおこなわれているかと、その状況の中で独自に教材を選定する場合に何が必要かということを考えてみました。
            
 ここ数年、国語の先生方の前でお話をする機会が増えてきました。その多くは「講演」の形ですので、まとまったお話ができる分、私からお伝えする方向が中心になります。今回は15人ほどの少人数の会ということで、私から1時間ほど話をさせていただき、その後2時間以上、高校の先生方と質疑応答や意見交換をすることができました。
 講演の形でお話をさせていただくこともたいへん光栄ですが、一方で、こうした十分な時間をとって国語の先生方と意見交換できることは私にとってたいへん有意義なことでした。
 私は国語教科書について、論文を書いたり講演をしたりしていますが、国語の教員として勤務したのは、遠い30年ほども前に、2年間非常勤講師として勤めたに過ぎません。言うまでもないことですが、教室の状況も生徒の反応も年々変化しており、その変化を、こうした機会を通じて知ることができるのはたいへんありがたいことです。
 今回は、三重県のたいへん熱心な先生方とじっくりお話をすることができて、今後も国語教科書や国語教育について考えていく重要な機会を与えていただいたと感じました。今回、招いていただいたことと、活発な意見交換をさせていただいたことに心から感謝したいと思います。
            

  12おかげまいり
   (伊勢神宮近くで買ったおみくじ付き「おかげまいり犬」)




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 ブログに書くことはさまざまあったのですが、忙しくてブログをぜんぜん更新していませんでした。まとめて書きます。
 まずは墓石を立てたこと。
            
 昨年9月4日に父・宇佐美松玉がなくなったことはこのブログにも書きました。(→ 「父・宇佐美松玉のこと」 
 父は次男だったので、自分の墓を持っていませんでした。そこで、本家と同じ麻布の寺の墓地に墓所を購入していました。ただ、墓石は作っていなかったので、先日の父の一周忌に間に合うように私が墓石を注文して、新しく立ててもらいました。

 墓石を作ってもらうなんて、あったとしても一生に一度のことです。どういう気持ちかと聞かれても、何か複雑な気持ちでよくわかりません。「自分も死んだらこの墓に入るんだなあ」とは思いました。
 昨年に父が亡くなってから、その後の葬儀や相続の手続きなどに膨大な時間をとられました。ですから、この墓石を立てて、父の死後の一連のことが、「ようやく終わったあ」とも思いました。もしかしたら、これが私の一番正直な気持ちかもしれません。
            



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