フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 このブログに何度か書いたこともあるテレビ深夜番組に、今週も出演します。文才のある芸人さんが文章を書いて競い、私がその判定をします。このシリーズも今回が最終回で、「第1回文才王決定戦」として、これまで高く評価された文章を書いた3人の芸人さんが、新たな文章を書きます。
 『お願い!ランキング そだてれび』(テレビ朝日)
  9月27日(火)24時45分~ ※日付は水曜日

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 私が勤めている中央大学文学部国文学専攻には国文学会という組織があり、その研究発表会がおこなわれました。今年は久しぶりに対面開催となりました。
 この発表会では、学会員なら誰でも発表できますが、通常はその年度に修士論文を提出する予定の大学院生が発表することになっています。今年度の発表者は修士論文提出予定者8名。プログラムは下記の通りです。

 研究は一人で黙々とおこなうという一面はあります。研究分野にもよりますが、「個」の力と努力が必要なことは言うまでもありません。しかし、その一方で、多くの人の知恵を借りることが大切な場合もあります。大学院生であれば、指導教員から指導を受けることはもちろん、他の教員から、大学院の先輩・後輩から、多くのアドバイスをもらうことも必要です。
 この国文学会研究発表会はそのような機会です。8人の大学院生たちがこの機会に多くの有益な助言を受け、各自の研究成果へと結び付けていってくれることを願っています。

 花散里論 ─橘とほととぎすの持つイメージについて─
  三浦 香乃 (博士前期課程)

 和泉式部の身体表現と四季詠について
  飯塚 瑞乃 (博士前期課程)

 「銀の匙」論 ―「東京朝日新聞」という媒体の作用をめぐって

  田井 康平 (博士前期課程)

 谷崎潤一郎「美食倶楽部」における幻想の根源

  四井 万緒 (博士前期課程)

 夢野久作の思想の流れ ―海外背景の作品群に基づいて―
  李 兆青 (博士前期課程)

 日本文学におけるピュグマリオン・コンプレックスの描写
  家村 文響 (博士前期課程)

 澁澤龍彦『唐草物語』における語りの構造
  阿部 菜々香 (博士前期課程)

 『1Q84』におけるシステムの危険性と対抗方法をめぐって

  趙 淳青 (博士前期課程)



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 私は文学研究者・テレビドラマ研究者であり、フィクション作品全般を研究対象としています。膨大なドラマ作品を見るのに専念する余裕がないので、私は仕事をしながら耳だけドラマの音を聞いている時間が長くあります。本当はそんな「ながら視聴」ではなく、ドラマを見ることに集中したいのですが、残念ながらそういう余裕がありません。そんな中で、ドラマなどのフィクション作品以外にもテレビを見ることはあり、ドキュメンタリー作品を耳で聞きながら仕事することもあります。
 NHKのドキュメンタリーといえば、その名も『NHKスペシャル』が以前は思い浮かびましたが、近年は『アナザーストーリーズ』と『映像の世紀』の出来がすばらしいと思っています。この2つのシリーズについてはあらためて書きたいと思いますが、どちらも見ごたえのあるドキュメンタリー作品で、勉強になることが多々あります。『アナザーストーリーズ』は、硬派の内容もあれば、文学、芸能、音楽などのテーマもあり、その多様さが大きな特徴です。一方の『映像の世紀』は政治面などを中心とした歴史的資料が多く用いられているのが特徴です。中でも、今週放送された「9・11同時多発テロへの点と線」は出色の出来映えでした。これほど見ごたえのあるドキュメンタリー作品は、そうそう見られるものではないとまで感じました。
 ただ、好みの問題もあるとは思いますが、多少不満に思う作品もあります。ドキュメンタリーというよりは科学番組なのかもしれませんが、近頃よく放送されている『コズミックフロント』のことは、いまひとつ好きになれません。私は、宇宙にも関心があるのですが(これについてはいずれあらためて書きたいと思います)、『コズミックフロント』は、関係者の証言部分がやたらに長くて退屈です。私は最先端の知識を凝縮して知りたいのであって、関係者が「そのとき私は息を呑みました」とか「やった、歴史的瞬間だと思いました」とか、そういう証言ばかりに時間をとられていて、まるで『プロジェクトX』の宇宙版を見せられているようです。(『プロジェクトX』は嫌いじゃありません。しかし、懐古趣味という一面はあります。懐古的な科学番組というのは私の好みに合わない、という意味からのたとえです。)
 そういう不満な場合もありますが、ドキュメンタリー作品についてはNHKの独壇場といえると思っています。NHKにはNHKでないとできない番組を制作してほしいし、そうでなければ単なる民業の圧迫になるだけだ、というのが私の持論です。その意味では、ドラマ作品とともにドキュメンタリー作品の分野では、NHKの存在はきわめて大きいと私は考えています。

※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜日)の更新を心がけています。




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 以前にもここに書いたことのある『お願い!ランキングそだてれび』(テレビ朝日)の「文才芸人」コーナーに毎回出演させてもらっています。次回放送は明日9月13日(火)24時45分~です。(日付は水曜日になります)
 文才のある芸人さんが400字程度の文章を書いて競い、その勝敗の判定や文章へのコメントをするのが私の役割です。今回は総集編で、これまで文章を書いた22人の芸人さんの38本の文章の中から、私がベスト5を選ぶという企画です。芸人さんの中には小説やエッセイ本を出版している人もいて、どれもレベルが高く、選ぶのがたいへんでした。ベスト5となると、もはや芸人さんの余技とは言い難い出来映えです。深夜ですが、よろしければご覧ください。


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 今週、3年ぶりの対面ゼミ合宿に行ってきました。
 「3年ぶりの」は「対面」実施が3年ぶりという意味であって、「合宿」そのものは一昨年も昨年もおこないました。ただ、昨年までの2年間はオンラインゼミ合宿でしたので、対面で実施したのが3年ぶりだったということです。
 中央大学文学部宇佐美ゼミでは、この合宿行事をとても重視しています。所属する文学部国文学専攻では3年生と4年生の2年続きの合同ゼミが必修科目になっています。宇佐美ゼミは各学年20名以上の履修者がいることが多く、合計すると40~50名の大所帯となります。通常の授業時間だけでは研究発表や卒業論文に関する発表の時間がとれず、合宿で卒業論文中間発表をするというのが、合宿重視の第一の理由です。
 しかし、理由はそれだけではありません。宇佐美ゼミを卒業する学生の多くが「一番楽しかったのはゼミ合宿」「ゼミ合宿でみんなとの人間関係が深まった」という感想を述べていきます。そのような研究を通じたゼミ生同士の関係を深めることも、宇佐美ゼミで合宿を重視しているもう一つの理由です。



 実際に対面ゼミ合宿を実施してみて、研究面・親睦面の両方で大きな意義があったと実感できました。とりわけ、宇佐美ゼミ恒例のバレーボール大会の盛り上がり方はたいへんなものでした。はしゃぎまくっている、とでも呼びたいような学生たちの盛り上がり方を見ていると、この学生たちは「大学生らしい学生生活の時間を十分に持ててこなかったのはないか」という気持ちも湧いてきました。それは私の思い込みにすぎないのかもしれませんが、嬉しそうな学生たちのようすに接することができて、労力をかけて合宿を実施した教員としての私も報われたような気持ちになりました。



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 書くのを忘れていましたが、その後も『お願い!ランキングそだてれび』に出演させてもらっています。文才のある芸人さんの書いた文章に対して、文学研究者の立場からコメントするのが私の役割です。当面の出演予定は下記の通りです。9月13日分からは、芸人さんたちにこれまで書いてもらった文章の中から、ベスト作品を選ぶ企画に移ります。

 『お願い!ランキングそだてれび』
  9月6日(火)24:45~
  9月13
日(火)24:45~

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 さて今日のテーマについて書きます。
 今から4年以上前に放送された作品ですが、『明日の君がもっと好き』というテレビドラマがありました。今日はこの作品のことを書きます。特別に高い視聴率や高い評価を得た作品とはいえませんが、私には強い印象が残っています。

 この作品は、一種の群像劇ともいえる構成をとっています。そして、描かれる誰もが、なんらかの困難を抱えて生きています。主な登場人物は下記の通りです。

松尾 亮(市原隼人)
 造園職人。妹のように育った香との結婚を勧められるが、茜に惹かれていく。
里川 茜(伊藤歩)
 社長秘書。妹に婚約者を奪われた後は不倫の恋愛を繰り返す。
丹野 香(森川葵)
 自分が同性愛者なのかわからず、性的アイデンティティに悩む。
城崎 遥飛 (白洲迅)
 エリート社員だが、幼児のときの母親の虐待から女性を愛せない。
黒田 梓(志田未来)
 茜の妹。姉の婚約者と結婚したが、香に関心を持ち始める。

 この作品がなぜそれほど印象に残っているかといえば、その提示している課題が鮮烈であるのと同時に、それが描ききれていないという惜しまれる部分もあったからです。上記のように、登場人物はみな困難を抱えて、悩みながら生きている人たちです。その人たちが苦しんで自分の生き方を見出そうともがいているようすを描き出しているところに、私は強い感銘を受けました。
 その一方で、この作品の放送回数はわずか7回。これだけの複雑な問題が設定され、重要人物の人数が多いのにもかかわらず、残念ながら消化不良のまま終わってる印象はありました。一言でいえば、大きなテーマに取り組んだものの、描こうとしたことが大きすぎて、十分に描ききれてていなかった、そういう作品だったように思います。そういう欠点も含めて、私には印象深い作品だったのです。
 脚本は、ベテラン脚本家の井澤満。この脚本家は、うすっぺらな娯楽作品は書かない方なので、この作品もその傾向が顕著に出ていました。その井澤の、おそらく最後のテレビドラマ作品がこの『明日の君がもっと好き』だったと思います。DVDも発売されておらず、今見るのが困難な作品なだけに、こういう重要な作品があったことを、ここに書きとどめておきたいと思いました。

※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜日)の更新を心がけています。






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