フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 





 先日書いたように、4年間の文学部長・理事の任期を終えました。それから、そろそろ1か月になろうとしています。4年間に後回しにしていたこと、おろそかにしていたことをリカバーするのに精一杯で、まだのんびりするところまでは進んでいませんが、少しずつ普通の生活を取り戻そうとしています。
 そのために欠かせないのが部屋その他のかたづけなのですが、私はこれが苦手です。そもそも物を捨てられないのです。捨てた途端に「あ、あれがあれば使えたのに…」といったことになるのが悔しくて、「もしかしたら使うかもしれない」と何でも残してしまうのです。しかし、広い学部長室をひきあげて元の個人研究室に戻る以上、それではたちいかず、やむなく大量の本や資料を捨てました(正確にいえば、すべて捨てたのではなく、所有を移したり返還したりしたものもかなりあります)。断捨離できない男である私としては、断捨離まではいかずとも、かなりの持ち物を減らした、というわけです。人間、どうしようもなければ最低限のことはするものだと思いました。







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 先週も『カムカムエヴリバディ』のことを書きましたが、今週も続けて感想を書きます。
 出だしは「いつもの朝ドラ」という印象の『カムカムエヴリバディ』でしたが、展開が早く、なおかつ朝から「泣かせる」要素が満載されています。小さな菓子屋の娘・橘安子(上白石萌音)と大きな繊維会社の長男・雉間稔(松村北斗)の互いを想い合う恋心、安子に恋していながらも兄のために兄と安子の結婚を父親に懇願する稔の弟・勇(村上虹郎)、会社のために銀行頭取の娘と稔の結婚を画策しながらも安子の人柄に惹かれて稔との結婚を許す稔の父親・千吉(段田安則)などなど…。それぞれの気持ちが痛いほど感じられて、朝から泣かされる毎日です。
 そうなのですが、ここで少し余談を。毎朝このドラマに泣かされてはいるのですが、そんな中で少しだけ妄想が浮かんでしまいました。
 一つ目は、雉間千吉が菓子屋「たちばな」を訪ねた場面。「おはぎを食べとうなって」と言う千吉に対して、材料が手に入らずおはぎを作っていないため、安子は祖父の供養に作った貴重なお汁粉を千吉に振る舞います。何か気落ちしているようすを千吉から感じ取った安子は、恋する相手の父親とは知らずに、見ず知らずの千吉にほんの僅かしか作れなかった大切なお汁粉を振る舞ったのです。その気持ちのあたたかさを感じた千吉は、稔と銀行頭取の娘の結婚を思い直し、稔と安子を結婚させることにします。この展開が、今週のキモ(肝心なところ)でした。
 そうではあるのですが、ここで妄想と邪推。おはぎを買いに来た男性が稔の父親だと安子が知っていたとしたら……。だとしたら、お汁粉を振る舞った安子の行為は千吉に気に入られるための打算的な行動だったことになります。今頃安子は、「しめしめ、うまくやったわ」とほくそ笑んでいるとか……。そんな醜い妄想をしてしまうなんて。そんなはずはない!ああ、俺はなんと心が汚れているんだ!
 二つ目は、稔の弟・勇が、稔と安子の結婚を父親に懇談する場面。勇も安子に恋しているのですが、勇は稔と安子が想い合っていることを知って、自分は安子を諦め、二人の結婚のために尽力します。会社のための政略結婚を進める父親の千吉に対して、「家のための結婚はわしがするから!」と言って、兄と安子を結婚させてほしいと父親に懇談します。ここもまた今週の泣けるポイントでした。自分の恋を泣く泣く諦めて、自分が犠牲になることで兄と安子の恋を成就させてあげたいという弟の気持ちに泣かされます。
 そうではあるのですが、ここでも妄想と邪推。兄と安子の結婚を懇願する勇の行為が、自分が会社の跡継ぎになりたいための申し出だったとしたら……。だとしたら、「家のための結婚はわしがするから!」と叫んだ勇の行為は、自分が社長になりたいための打算的な行動だったことになります。そんな醜い妄想をしてしまうなんて。そんなはずはない!ああ、俺は何と心が汚れているんだ!
 せっかくいい話だったのですが、今週は「妄想」2連発で終わりにします。

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 NHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『カムカムエヴリバディ』が2週目を終えました。1週目を終えたところで「今のところ〈通常の朝ドラに戻った〉という感想が多い」ということを書きました。ところが、もう1週間見たところ、かなり印象が変わりました。
 思えば、1週目の最後の方で既に予感はありました。通常の朝ドラよりは展開が早く、1週目の最後の方で、主人公・安子(上白石萌音)のせつない恋心が描かれ始めていました。「淡い恋心」という要素は、それ自体は朝ドラで珍しくはないものの、2週目で急展開です。想いを寄せる相手がいながら親から縁談を勧められたため(それも苦しい家業を救うための縁談でもあり)、困った安子は、想いを寄せる大学生に会うため、家を飛び出して岡山から大阪へ訪ねていきます。詳しくは書きませんが、ここからは「胸キュン」ストーリーの連続です。通常の朝ドラでも恋愛要素はありますが、朝ドラがここまでの直球「胸キュン」で来るとは思いませんでした。
 さらに朝ドラといえば「ヒロイン」に注目が集まりますが、今週の注目はヒロイン安子が想いを寄せる大学生・稔でしょう。失礼ながら、私は稔を演じる松村北斗というジャニーズ事務所所属のタレントのことを、今まで知りませんでした。ドラマの配役の多様性を考えると、私はジャニーズ事務所のタレントが多くのテレビドラマを重要な役を独占(寡占)してくることにはあまり賛成ではありません。
 とはいえ、この松村北斗の全国区・お茶の間へのブレイクは、おおいに理解できます。なにより昭和初期の学生服がなんと似合うこと! 前作『おかえりモネ』の「亮ちん」を演じた永瀬廉もジャニーズ事務所所属で、今作の稔もそうなのですが、どちらも役にぴったりの配役でした。少なくとも作品の中で見る限り、ジャニーズのチャラさ(失礼!)はまったく感じられません。永瀬廉は気仙沼の若い漁師に見えますし、松村北斗は昭和の大学生そのものに見えます。そこはジャニーズ事務所だからの無理な配役ではありません。さすがNHK朝ドラは、本当に役にふさわしいタレントを起用していると感じました。
 ということで、1週間でこの『カムカムエヴリバディ』への印象ががらりと変わりました。半年で親子3代の100年間を描くということから展開も早く、これは1回も見逃せないという気合いを入れて、今週も視聴したいと思います。

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 NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』が終了し、『カムカムエヴリバディ』が始まりました。
 『おかえりモネ』については、既に多くのことがマスコミでもSNS上でも語られています。概していえば、「低視聴率ながら作品としての評価は高い」…というコメントが多いということでしょうか。私もこの作品を評価しています。
 どこを評価するかといえば、近年の視聴者の傾向に迎合せず、むしろその逆をあえておこなっているところです。『おかえりモネ』の作風を一言でいえば、それは「言葉が重い」ということだと私は思います。近年の視聴者はスマホなどで短い動画を見ることが多くなり、1時間のドラマはもちろん、15分の朝ドラでも気持ちが持たなくなっている傾向があります。そのため、多くのドラマがテンポを速くし、短い場面ごとに見せ場や笑いの種を仕込んでおくことが多くなっています。
 それに対して『おかえりモネ』では、そうした早いテンポをまったく狙っていません。それどころか、作中人物の多くが心の傷をかかえ、その傷からの立ち直りを長い長い時間をかけて描いていきます。そんな中で作中人物たちが心の中から絞り出すようにして発する言葉には、受け取る視聴者が絶句するくらいの重さがあります。百音が亮に言う「それで救われるの?」や、未知が百音に言う「お姉ちゃんは正しいけど冷たい」など、見ているこちらがぞっとするような重い言葉がこの作品にはしばしば出てきました。こうした言葉の重さを持ったドラマは、近年ほとんど見られなくなっていました。その点に、『おかえりモネ』という作品の最大の特徴があったと私は考えています。

 一方で今週から始まった『カムカムエヴリバディ』は、今のところ「通常の朝ドラに戻った」という感想が多いようです。みんなから愛される性格のよい女の子が主人公として登場し、その主人公の幼少期から描かれ、その主人公が一生懸命になれるものに出会っていく…。そういう従来の朝ドラパターンが最初の1週間で描かれていました。
 とはいえ、3代の主人公を100年かけて描くという新しい試みのある『カムカムエヴリバディ』は、これから従来の朝ドラから抜け出していくのかもしれません。それを楽しみに、またこの作品を続けて見ていきたいと思っています。

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