フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 




 ファミリーレストランの草分け的な存在だった「すかいらーく」が、近いうちになくなるのだそうです。
          
 と言っても、御存知のように「すかいらーく」はガスト・ジョナサン・バーミヤン・夢庵・藍屋などと同じグループ企業です。したがって、「すかいらーく」がなくなると言っても、店は他の名前の店に(多くの店はガストに)転換するようです。
 今ではファミレスはすっかりどこにでもある存在になっていますが、私が学生時代にファミレスは、まだ比較的目新しいものでした。
 「すかいらーく」に行くとドアに「since1970」と書かれているように、1970年に1号店ができたようです。ちなみにその1号店は国立店(住所は府中市)だったそうです。私は1976年に大学生になったので、その頃にはもうすでに「すかいらーく」はあったのですが、地方から出てきた私にとっては、「都会の新しい店」という印象がありました。
 ところで、1号店は国立店だったらしいですが、その頃、国鉄(今のJR)中央線国分寺駅の北側には「すかいらーく本店」というものがありました。今考えると「本店」ってなんだろうという気がしますが、実際にあったので、私はずっと国分寺店が1号店なのかと思っていました。また、大学に近い国道沿いにも「すかいらーく」が数軒あり、そこにも何度か行ったことがあります。
 また、私が大学生の頃に、デニーズやロイヤルホストも増えていきました。その後、「すかいらーく」はジョナサン(1980年)、藍屋(1983年)、バーミヤン(1986年)などを系列店としてオープンしていき、今ではファミレスは街じゅうあちこちに見られるものになりました。
          
 その分だけ有難味がなくなり、今ではファミレスは、大学生にすら見くびられているところがあるように感じます。つきあいはじめのデートにファミレスに誘ったら、「私って安く見られてるわけ?」と不満に思われるかもしれません。
 しかし、私の大学生時代にファミレスは、十分デートする場所として貴重でした。私が田舎から出てきた大学生だったこともありますし、私が通っていたのが東京郊外にある地味系の大学だったこともありますが、当時のファミレスはまだまだ目新しい、そこそこ行くのが楽しみな場所でもあったのです。
 それにファミレスというのは、けっこう有り難い存在です。私は外国を一人で旅行することもよくあるのですが、一人で気軽に食事できる場所を見つけるのはけっこうたいへんです。二人以上で食事する場所ならいくらでもあるのですが、一人で気楽に食べられる場所として、「この国にもファミレスがあったらなあ」と思ったことも何度もありました(まあ、それに近いものならある国もありますが。イギリスのガーファンクルズあたりがファミレスに近いかもしれません。)。
          
 近いうちに「すかいらーく」がなくなると聞いて、もう一度行ってみたくなり、品川区にある戸越店に行ってみました。実は大田区の田園調布店が家からもっとも近いのですが、そこの前を通ったら、もう既に「ガスト」に変わってしまっていました。それで、わざわざ戸越銀座駅で降りて、ランチを食べてきたのでした(写真は日替わりランチ)
 私が初めてファミレスに行ってから、既にもう30年以上が経っています。私が贅沢になったのか、それとも世の中全体が贅沢になったのかはわかりませんが、今となっては学生時代のように、ファミレスのランチをそれほど楽しみにして行くというわけにはいきません。それでも、気軽に食べられるファミレスという場所は、学生時代の記憶とからみあっているせいもあるのか、あいかわらず私にとって、けっこう親しみやすい場所なのでした。
          



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 08年度の授業がすべて終わりました。まだ補講や試験期間もあり、それから成績を出す仕事も残っていますが、通常の授業自体は終了しました。
 そこで、毎年恒例のゼミのお別れ懇親会がおこなわれました。中央大学国文学専攻では、学生は3年次と4年次に同じゼミで勉強します。このゼミ制度は必修なので、国文学専攻の学制は必ず全員がどこかのゼミに所属します。
 ということで、2年間同じメンバーで勉強しますし、また合宿や飲み会などもあるので、通常の授業科目よりもサークルのような雰囲気ができてきます。それで、毎年卒業する4年生と送る3年生のお別れという意味で、この時期にお別れ懇親会を催しています。
          
 ちなみに、私は中央大学に勤めて19年目。ですから19回目の卒業生ですが、ゼミ制度ができてからはちょうど10回目の卒業生です。もうゼミ制度ができてからの卒業生の方が長くなりました。
 懇親会の場所は、すっかりおなじみとなった高幡不動の大浜寿司さん。みんなで飲んで喋って、それから3年生からの記念品の贈呈をして、「ああ、今年もまた1学年卒業するんだなあ」という気持ちになりました。
 まだ卒業式が残っていますが、卒業生の皆さんの今後の幸運を祈りたいと思います。
          




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 先日、法事(伯母の13回忌)がありました。
 私の家はもともと福井県の出。勝山市の近くに村全体が宇佐美姓という地域があり、そこから私の曾祖父が東京に出てきたようです。その宇佐美家の墓所が麻布のお寺にあります。
 今回法事のあった伯母は他家に嫁いでいるので同じ墓ではありませんが、近くの関連の寺に墓があり、その意味では親戚の多くが麻布に墓を持っていることになります。(ちなみに私も死んだら麻布の寺の墓に入ります)
 午前10時頃に寺に着いて宇佐美家と伯母の家の墓参りをし、11時頃から御住職に13回忌の法要をおこなっていただきました。また、仏教の教えについても、少しお話をしていただきました。
 その後親戚十数人で近くの日本料理店に移動し、一緒に昼食をとりました。今回行ったのは、地下鉄麻布十番駅に近い
「たき下」 。魚料理をメインにした和食のお店です。法事の後ではありますが、最初の料理(アン肝)から、つみれ汁、刺身盛り合わせ、穴子(白焼き)寿司、焼き物、煮物、雑炊、デザート(紅茶味のムースとフルーツ)までかなりボリュームがあり、満足感のあるコース料理をいただきました。
          
 魚料理をメインにしているだけあって、中でも美味しかったのは焼き魚と煮魚料理。焼き物はクロムツとカレイで、煮物は寒ブリと大根。焼き魚は少し脂ののったクロムツと、あっさりしたカレイの二種類が一緒に味わえるのが嬉しいところでした。また、煮物は寒ブリのダシと味が大根によくしみこんでおり(写真)、体が温まりました。
 数年ぶりに親戚の人たちと会ってお話をし、故人をしのんだ半日でした。
          



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 このブログは、もともと小説・映画・テレビドラマなどのフィクション世界を扱っているものですが(実際はその他の話題が多いですが)、そういうものを見ているとやたらに「告白」が出てくるのに気付きます。だから世間でも「告白」がやたらとされているとは言いきれませんが、少なくとも「告白」を重視する風潮が世の中にあるとは言えるでしょう。しかし、私はどうもそれに違和感を感じます。
          
 特に気になるのは、「告白」できないでいる人に対して、周囲の友人たちがやたらに「告白」を勧めること。「今告白しなかったら、後できっと後悔するよ!」とか言って、「告白」を勧める、あるいは強要すること。どうしてそんなことをするのでしょうか。
 前からこのことについて書こうと思っていたので、今回は私の公式ホームページの方にまとめて書くことにしました。そちらも御覧いただければ幸いです。
 → 「告白ってそんなに良いこと?」





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 少し前のことでしたが、横浜中華街に食事に行ってきました。
 私はボリュームの少ない料理をいろいろ食べたいので、中華街では飲茶の店の方が好きです。2000円か3000円で食べ放題も店も多く、そういうところにもときどき行きます。
          
 ただ、今回は私の両親(81歳と78歳)たちも一緒だったで、個室を予約して点心コースを食べてきました。今回行ったのは 「萬珍樓 點心舗」 。個室は椅子席で、以前は座敷のある店によく行ったのですが、最近は私も両親も椅子席の方が楽で、なるべくそうしています。中華街のメイン通りから少し入ったところにある店で、ゆっくり料理を楽しんでくることができました。
 料理もおいしかったのですが、写真に載せたのはデザートの杏仁豆腐。杏仁豆腐というと、フルーツと一緒にシロップの中に入っているのをイメージしていましたが、今回はブラマンジェのように見える洋風の作り。山桃の甘酸っぱいソースともうまく合っていました。
 寒い日でしたが、おいしいものを食べて満足した一日でした。
          


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 韓国映画 『ダンサーの純情』 (2005年)を見ました。ひさびさに見た、ひねりの全くない直球勝負のラブ・ストーリーです。
 設定は次のような感じです。
 ダンサーとしてもインストラクターとしても一流のヨンセ(パク・コニョン)だが、パートナーをヒョンス(ダンス協会会長の息子、金持ち)に奪われたことがあり、ダンスに情熱を失っていた。しかし、借金のために韓国に出稼ぎに来た中国朝鮮族の女性・チェリン(ムン・グニョン)をパートナーにあてがわれ、偽装結婚をさせられる。ダンスの名手だと聞かされていたチェリンは、実はダンスの上手な姉チェミンの身代わりで、ダンスに関しては素人だった。すぐにお払い箱になったチェリンは売春クラブに売られそうになり、ヨンセはチェリンを救い出して、いやいやながらもダンスの練習を始める……という設定です。
 後の展開は想像がつくと思いますが、ここからは【ネタバレ】もありますので、御注意ください。

 最初に書きましたが、絵に描いたような「ベタ」なラブ・ストーリーで、たとえて言えば、プレーボールの第1球目からゲームセットまですべて直球勝負の投手という感じ。変化球はいっさいありません。しかし、ここまで「ベタ」なラブ・ストーリーで貫徹させられると、もう不快ではありません。むしろ、いっそ拍手喝采したいくらいの気分でした。
 また、チェリンを演じるムン・グニョンは、ユン・ソクホ監督の四季シリーズ第1作『秋の童話』 (2000年)でウンソ(ソン・ヘギョ)の子ども時代を演じていた子役の少女(日本で言うと熊谷真美の若い頃にちょっと似てるし、『白線流し』の頃の酒井美紀の雰囲気もあります。ちなみにパク・コニョンは椎名桔平に似てます)。『秋の童話』の時も、育った家庭から引き離される運命を受け入れる演技でおおいに視聴者を泣かせましたが、今回は大人の女優としての可能性を開花させたと感じさせました。子役が大人の俳優に変化するのは難しいのですが、ムン・グニョンは笑わせる演技と泣かせる演技の両方を見せて、見事に脱皮したと思います。

 ただ、研究者的な視点で見ると気になることは山ほどあります。特に気になるのは、韓国人男性と中国からの出稼ぎ女性という設定。そこには、恵まれた自国の男性が恵まれない他国の女性にやさしくしてあげるという一種のナショナリズムが関係している気がします。簡単に言えば優越感をくすぐられて気持ちいい、という感覚が潜んでいるかもしれません。
 しかし、これは韓国だからというわけではなく、どこの国の映画・ドラマにもあることです。物語の設定として、基本的に「自国の男性と他国の女性」という構図が好まれる。この逆の場合は、自国の資産(女性)を他国に奪われるように感じるというジェンダーの問題が隠れているからです。
 たとえば、森鴎外『舞姫』は高校の国語教科書にも掲載されている定番教材ですが、あの設定が逆だったらどうだったでしょう。実際には、ドイツ人の貧しい踊り子と恋愛した(そして妊娠させた)日本人エリート男性の話です。それが、外国人のエリート男性と恋愛した(そして妊娠させられた)日本人の貧しい女性の話だったら、教科書に掲載されていたかどうか。おそらく掲載されていなかったでしょう。研究者目線になると、そういうナショナリズムの問題やジェンダーの問題が気になってきます。
          
 しかし、そういうかたいことを抜きにして見ると、この映画は「ベタ」なラブ・ストーリーとしてけっこうよく出来ています。
 まずヒョンスという悪役が絵に描いたような悪い奴で、主人公たちを苦しめてくれます。また、笑わせてくれるのが、入国管理局の2人。ヨンセとチェリンが偽装結婚ではないかと疑い、2人を追跡調査して告発しようとしますが、次第に2人に同情的になっていきます。観客はその2人に導かれて、次第にヨンセとチェリンに感情移入していくように作られています。
 そんな中で、ダンスの素人だったチェリンがみるみると上達していく様子には目をみはりますし、それによってヨンセが次第にダンスに前向きになっていくのをついつい好ましく見てしまいます。
 そして、美しいシーンのための演出に使われているのは「螢」と「指輪」。特に「螢」は重要です。本当は綺麗な水の流れのあるところにしか住めないはずなので、ちょっとあり得ないのですが、「ベタ」なラブ・ストーリーなのですから、そんなことに文句を言ってはいけません! 最後まで見ると、この「螢」が美しいラストシーンを演出してくれることになっています。この「ベタ」さ加減にのめりこむことができれば、このラストシーンで涙ぼろぼろとなることでしょう。
           
 直球1本の「ベタ」なラブ・ストーリーを見たい人にはお薦めです。



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 先日出版した編著『村上春樹と一九八〇年代』に関して、さまざまな反響を寄せていただいています。個人的にいただいたメールや手紙は公開できないので、ウェブサイト上に書いていただいているものを紹介します。

 石田仁志さん(東洋大学)のウェブサイト
   
http://ishida-labo.seesaa.net/article/109274340.html
 木村功さん(岡山大学)のウェブサイト
   
http://areasoseki.at.webry.info/200811/article_3.html
 日比義高さん(京都教育大学)のウェブサイト
   
http://d.hatena.ne.jp/hibi2007/20081126/1227717165
 西田谷洋さん(愛知教育大学)のウェブサイト
   
http://poetic-effects.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-a9c0.html

それから、本の執筆者自身からも紹介されています。
 野中潤さん(聖光学園中学・高校、執筆者)のウェブサイト
   http://blogs.yahoo.co.jp/nonakajun/55824804.html
 矢野利裕さん(東京学芸大学院生、執筆者)のウェブサイト
   http://blog.livedoor.jp/toshihirock_n_roll/archives/51179536.html

          
 忘れてはいけないのですが、FMラジオ局J-WAVE「ニュースルーム」の
ブログでも取り上げていただいています。
昨年10月にラジオ番組「PLATOn」の村上春樹特集の際にゲストとして
私が出演させていただきました(そのときの写真はこちら↓)
   http://www.j-wave.co.jp/blog/platon/2008/06/post_140.html
 その縁から、J-WAVEでニュースを担当するアナウンサーの
戸丸彰子さんが写真入りで取り上げてくださったので、ぜひ御覧ください。

 J-WAVE「ニュースルーム」ブログ(戸丸彰子さんのページ)
   http://www.j-wave.co.jp/blog/mp_news/2008/12/post_3671.html#more

また、各ネット書店でも扱われています。

 ビーケーワン書店
   http://www.bk1.jp/product/03063136
 アマゾン
   http://www.amazon.co.jp/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9%E3%81%A81980%E5%B9%B4%E4%BB%A3/dp/4273035081
 セブンアンドワイ
   http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32159966
          

 そしてもちろん私・宇佐美毅のウェブサイトでも紹介しています。
   http://blog.goo.ne.jp/usamitakeshi/e/cc97e2d0c8f97d1544275cd869236aa7

          

 若い研究者も含め、19人で村上春樹の初期作品を徹底分析した本です。
論文と詳しい研究史が掲載されていますので、『村上春樹と一九八〇年代』を
できるだけ多くの方に読んでいただけたら幸いです。



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