2022年度に担当した卒業論文について書きます。中央大学文学部の国文学専攻では、3年生、4年生の2年続きゼミと卒業論文がセットになっているので、私が担当するゼミの学生たちの卒業論文題目が下記の通りです。
【文学作品】
笹原彩音 『銀河鉄道の夜』論 ―幻想第四次の住人はどこから来たのか―
廣瀬修大 吉本ばなな『TUGUMI』論
杉原紫 殊能将之「ハサミ男」論
川北香夏 梨木香歩『裏庭』論
越智和 「容疑者Xの献身」における献身
岸塚大地 米澤穂信『ボトルネック』論
河又礼 角田光代『八日目の蝉』論
色野託史 木下半太『悪夢のエレベーター』論
堀井愛恵 あさのあつこ『No.6』論
堀江航生 西尾維新『〈物語〉シリーズ』論
大河内雪乃 「蜜蜂と遠雷」論
佐々木統哉 三秋縋『恋する寄生虫』論
大池夏生 『ステイホームの密室殺人』論 ―〈密室〉から考えるコロナ禍―須賀葵 加奈子『夜が明ける』論
【漫画・アニメ】
小此木良太 高橋留美子『めぞん一刻』論
田中愛梨 テレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』論
花田麻愛 映画『千と千尋の神隠し』論
西内来留実 映画『パプリカ』論
宇佐美遥 『鋼の錬金術師』論
美浦礼太郎 諫山創『進撃の巨人』論
根井貴史 「進撃の巨人」論
【テレビドラマ】
西理々香 テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』論
川北莉子 テレビドラマ『最愛』論
【舞台】
半田真里奈 成井豊『ハックルベリーにさよならを』論
坂本颯平 舞台『夜は短し歩けよ乙女』論
【その他】
大山敬 松本人志『遺書』論
毎年のことではありますが、今年度の宇佐美ゼミの卒業論文のテーマは多彩でした。四年生二六人のテーマは、大きく分ければ文学作品と現代文化(映画、ドラマ、漫画、アニメーションなど)となりますが、今年は例年以上に多様なジャンルの論文テーマが選ばれていました。例年は、漫画、アニメーション、映画、テレビドラマなど、文学作品以外のテーマを選ぶ場合、研究の積み重ねがないためか、なかなかレベルの高い論文にするのは難しいという印象がありました。しかし、今年の場合は、必ずしも文学作品研究の方が高いレベルになっているともいえません。これは、文学作品以外の研究が定着してきたためなのかどうか、その点は今後も継続して見ていきたいと思っています。
卒業論文は、多くの学生にとって一生に一度きりの論文制作ですから、学生が本当に論じたい対象で書かせてあげたいと私は思っています。ただし、考察対象となる小説やマンガやテレビドラマ作品がただ「好きだから」というだけでは、論文としての考察をすることはできません。当然のことながら、作品を客観的に対象化することや相対化することが必要になります。小説などの文学作品の場合は中学・高校の国語の授業でもある程度読んできていて、大学でも多くの授業がありますから、多くの作品の中の対象作品の位置づけを一応は考えることができる面があるようです。それに比べてマンガ・アニメやテレビドラマなどの作品を考察対象として選ぶ場合、ただ単に「この作品は面白い」という狭い感想に終わってしまいやすい傾向があります。こうしたポップカルチャー作品を研究対象に選びたいという場合には、できるだけ広い視点を自分で意識的に持つ必要があり、今後もそのような点に注意して、論文指導をおこなっていきたいと考えています。
※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜)の更新を心がけています。