フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 全然期待していなかったドラマなのですが、毎回見る度に涙・涙のドラマです。この土曜日9時の時間はそれまで『ごくせん』の枠で、戯画化されたお笑い系ドラマの時間だったのですが、今クールは一転して感動ものです。 「親に捨てられた子どもが南の島で人々の愛情に触れて変わっていく」って書くと、あまりに安っぽい設定なのですが、そして、実際に安っぽいお涙頂戴ドラマでもあるのですが、それをわかっていても毎回泣いてしまうところがすごいドラマと思います。
 
 それから、音楽の効果というものもドラマ(映画や演劇も含めて)ではとても大きいですね。このドラマの主題歌はコブクロ『ここにしか咲かない花』で、この曲がかかると反射的に泣けてくるような気がするくらいです。
 ちなみにこのドラマには原作本(森口豁『子乞い』凱風社)があるので、今度取り寄せて読んでみるつもりです。
 
 



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 昨年10~12月期のドラマ『マザー&ラヴァー』を一部見直してみました。これは、私が最も好きな脚本家の岡田惠和さんが書いた、「マザコン青年」を主人公とするテレビドラマです。岡田さんの脚本の最大の特徴は、「登場人物がみんないい人」であるということ。しかし、これは実はたいへんなことです。
 文学研究を専門にしている立場からこれまでの生み出されてきた多くの物語を考えてみると、結局は「いい人」と「悪い人」が出てくるというのが最も簡単にドラマ(事件・出来事)を作りやすいということに気づきます。時代劇もヒーローものもみなそうです。それに対して、「いい人」だけで物語をつくるのはかなり難しい。それをやってしまうのが岡田さんの脚本の上手なところです(ちなみに私が岡田さんの脚本で一番好きなのは『天気予報の恋人』です)。
 
 この『マザー&ラヴァー』の主人公・真吾君(坂口憲二)も「お母さん大好き」というところがちょっと変わっているけど、とにかくいい人。その恋人の瞳さん(篠原涼子)もお母さん(松坂慶子)も友達たちも、みんなみんないい人。それでいて毎回笑えるドラマになっているのがこの脚本のすごいところです。
 ちなみに、真吾君はマザコンとは言われているけれど、母親依存型の青年ではありません。お母さんが寂しがっていれば花を買って駆けつけるし、お母さんが1人で同窓会に行くのをためらっていればタキシードを着てお母さんをエスコートしてあげる。つまり、女性の求めるものを与えてあげられる男性です。だからこれは「お母さん大好き青年」ではあっても、「母親依存から抜け出せない青年」ではないんですね。こういう男性は必ず恋人になる女性のことも大切にするでしょう。もっともこういう男性はめったにいないと思いますけど、それがまたドラマの楽しみでもありますから。
 



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