フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 韓国青年訪日研修団(2月18日~27日)の皆さんに、日本文化に関する講義をしました。
        
 この訪日は、「JENESYS 2.0」という日本政府の事業によるものです。外務省のウェブページにはこの事業について、次のように説明されています。

2013年1月18日、インドネシア訪問中の安倍総理は、2007年から実施したJENESYSの後継として、3万人規模で、アジア大洋州諸国及び地域との間で青少年交流事業「JENESYS2.0」を実施することを発表しました。本件事業は、日本経済の再生に向けて、我が国に対する潜在的な関心を増進させ、訪日外国人の増加を図るとともに、クールジャパンを含めた我が国の強みや魅力等の日本ブランド、日本的な「価値」への国際理解を増進させることを目指しています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page3_000069.html

 この研修団の受け入れは、実質的に公益財団法人・日韓文化交流基金が担当してくださっています。私の講義の他、観光もあり、地方体験もあり、ホームステイもあり、という有意義なプログラムが組まれています。来日翌日の午前という、プログラム最初の大切な時間を私に任せていただきましたので、私も精一杯、研修の役に立てるよう努めました。 
 私は、昨年7月にも同じ事業の関係で、中国からの研修団に講義をおこないました。そのとき来日したのは中国で選抜された大学生たちでしたが、今回は韓国各地で選抜された高校生74人と中学生7人でした。
 私は小説やテレビドラマの研究者ですので、今回は「テレビドラマに見る韓国人と日本人」という講義をしました。日本人から韓国人を見ると熱しやすくて恐い気がする、韓国人から日本人を見ると裏表があって冷たい感じがする…といった話を聞くことがあります。しかし、それにはそれぞれの理由がありますし、文化や国民性とも関係しています。私はフィクション研究者の立場から、今回はテレビドラマや映画を題材にして、そのような違いについて考えてみました。
          
 幸い、聞いてくれた韓国の高校生・中学生たちの反応もよく、実に熱心に受け止めてくれました。また、講義後の質問時間はもちろん、講義の途中の休憩時間や講義の後の昼食会の時間にも質問に来る生徒がいるなど、私の話から多くのことを考えてくれたことに大きな手ごたえを感じることができました。

 現在の日韓関係は必ずしも良好とは言えません。それについて軽々にどうするとは言えませんが、ともかくお互いを理解しようとする努力がすべての基本になることは間違いありません。このような研修団の送り出しと受け入れが、両国の将来の関係にプラスになることを心から願っています。
          



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     (約80人が集まった同窓会の立食パーティーの様子)

 中央大学文学部国文学専攻で、私が担当しているゼミの同窓会をおこないました。
          
 これまで何度もこのブログに書いたように、「ゼミ」という言葉にはさまざまな使い方がありますが、私の所属専攻では、学部3~4年生が一緒に学ぶ、2年連続の必修科目を意味します。

 私が中央大学に勤めて24年が終わろうとしていますが、はじめはそのような意味でのゼミ制度がなかったので(その頃は単年度ごとの履修)、ゼミ制度ができてからは今年度の4年生が15期生、3年生が16期生となります。毎年4年生のお別れ懇親会をこの時期におこなっていますが、4年に1回はそれを拡大し、同窓会も兼ねさせることにしています。
 ということで、今年は、2006年、2010年に続く3回目のゼミ同窓会の開催となりました。4年に1度で、ちょうどサッカー・ワールドカップの年に同窓会を開催すると決めています。
          
 今回も、50名を超える卒業生と30名近い在学生が集まってくれて、過去の2回以上に盛大な同窓会を開くことができました。その様子は写真を見ていただければわかると思いますが、2時間半ほどの立食パーティーがあっという間に過ぎてしまい、その後も名残惜しいのか、控室や教室で話しこんでいる学生たち、卒業生たちがたくさんいました。
       
 50名以上の卒業生が来てくれたので、その一人一人とはほんの少しずつしか話ができませんでした。せっかく来てくれたのにその点は申し訳なく思いますが、卒業生たちは私に会いに来るというよりは、同級生や近い学年の人たちと再会するのを楽しみに来てくれたと思います。また、この会をきっかけしにして、それまでまったく知らなかった同士が縁をつなぐこともあるようで、そういう意味もある会になれば、私も嬉しいです。
          
   
   (今年度の卒業生たち)

 次は2018年カタールでおこなわれるワールドカップの年の開催。また元気に卒業生たちと再会したいと思っています。
          

   
   (パーティー終了後も教室で……)


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1~3月期のテレビドラマも3分の1を過ぎました。毎クール恒例にしていた私のテレビドラマ批評・感想を書いておきましょう。全部書いてからアップしようと思っていたのですが、どうしても時間がとれません。今回残した分は後日また書き加えることにして、半分でも先にアップします。
 いつも通り、ドラマ名の後にここまでの視聴率を示しておきます。

『隠蔽捜査』 (フジ、月曜20時)  8.2
%→7.2%→7.5%
 杉本哲太と古田新太。『あまちゃん』に出演していた芸達者二人の主演による警察ドラマ。この二人が違ったタイプの警察官を演じます。それにしても、この二人は何を演じてもそれらしく見えますねぇ。杉本はこの作品では正義感が強く、まっすぐな警察官ですが、『あまちゃん』では完全なお笑い担当、先日放送の『相棒』では冷徹なテロリストを演じていました。配役・宣伝ともに地味なので、正直言って視聴率はとれませんが、玄人受けしそうな作品と言えるでしょう。

        
『失恋ショコラティエ』 (フジ、月曜21時)  14.4%→12.7%→13.3%
 以前は「月9」と言えば王道のラブストーリーでしたが、近年はさまざまな作品が放送されています。今回は久しぶりのラブストーリーかと思いきや、主人公はなんと「妄想王子」!イケメンなのに妄想癖があり、既に結婚してしまった人妻への片思いを続ける…といった設定。水城せとなの同名漫画が原作です。
 「いい年して妄想癖の主人公なんてキモい」といった感想もネット上に書かれていますが、私はけっこう面白く見ています。昔から、たとえば『めぞん一刻』などから、近年なら『モテキ』などまで、多くの作品に妄想癖の主人公は描かれているのですが、今回はイケメンで女性にモテモテなのに本人は片思いを続けるといった落差がみどころです。
          
『福家警部補の挨拶』 (フジ、火曜21時)  14.2%→11.5%→9.3%

 近年多い警察もの・犯罪もののうちの一作品。『相棒』の右京のような細部への徹底したこだわり、『ガリレオ』の湯川のような変人ぶり、『刑事コロンボ』『古畑任三郎』のような犯人先見せの趣向…といった、これまでの警察ドラマのいいところを合わせて盛り込んだ欲張りな作りになっています。ただ、いいとこ取りをすれば面白いとは限らないので、それらがうまく一作品として結集するかどうか。主人公の福家がコロンボや湯川学先生のような魅力を持てないと、ちょっとつらいかもしれません。
          
『チーム・バチスタ4』  (フジ、火曜22時)  12.9%→13.0%→12.6%→11.5%

 視聴率のとりにくい近年のテレビドラマ界において、パート4が作られるということ自体が、『医龍4』とともに今クールの快挙です。ホームランは打たなくてもシングルヒットは見込めるという、手堅さが持ち味です。私個人は謎解きの連続ものがやや苦手で、そのジャンルなら映画2時間くらいがちょうどよいと思いますが、先をどうしても見たくなるという、視聴者を引き付ける効果は高いと思われます。
          

『明日、ママがいない』 (日テレ、水曜22時)  14.0%→13.5%→15.0%

 児童養護施設の子どもたちを描いた作品で、養護施設やいわゆる「赤ちゃんポスト」を設置している病院からのクレームがついたことで騒がれている作品です。
 この件についてはいくつかのメディアから取材がありました(『週刊文春』『プレイボーイ』など)。私自身は、作品の表現に問題があると思うものの、放送を差し止めるといった措置はとるべきではない、最後まで見て判断したいという立場をとっています。
 詳しくは先日のブログを御覧ください。 → 「『明日、ママがいない』をめぐる騒動」
          
『僕がいた時間』 (フジ、水曜22時)  11.2%→9.4%→9.4%→8.5%
 難病に侵された青年(三浦春馬)を主人公とするドラマ。就職活動中の大学生がやっと就職したところに難病の診断を下されるという話。今は主人公が難病であることをまだ受け入れられず、恋人(多部未華子)にも家族にも告げられないでいるというあたりが描かれていまです。
 視聴率の面では苦労していますが、たいへん真面目な作りのドラマで、私は今クールの一押し作品だと思います。ごく普通の、どこにでもいるような青年と恋人を描く序盤と、そこから難病の宣告をされて、それを受け入れられずに苦しむ中盤の対比が、実に丁寧に描かれています。
 脚本は『僕の生きる道』(2003年)などを担当した橋部敦子。病気や死期を宣告されるところから始まるという点でも『僕の生きる道』と『僕のいた時間』は共通点があります。橋部敦子は昨年も『遅咲きのヒマワリ』という、すたれていく地方都市の青年たちの不安と希望を描いた佳作を発表しています。視聴率が低いということでこうした良い作品が評価されないとしたら、テレビドラマにとってたいへん残念なことです。視聴率以外のところからも作品を評価してほしいと思います。

          

『緊急取調室』 (テレビ朝日、木曜21時)  12.5%→13.4%→16.1%

 警察もの、犯罪ものは今クールもたくさんありますが、その中で私は、この作品が一押しです。そのことを『サンデー毎日』(2.2号、1月21日発売)の取材に答えたところ、その直後に視聴率がぐんと上がりました。ああ、もっと早くブログに書いておけばよかった。
 通常の警察もの、犯罪ものを見ていて私は一番不満に思うことは、犯人を捕まえて終わりの作品が多く、ときに犯人はあまりにもあっさりと自分の犯行を認めてしまうことです。犯罪を犯すのも安易なら、罪を認めるのも安易で、眼目は謎解きだけ…というドラマもあります。
 その点でこの作品が貴重なのは、「被疑者が真実を語るまでにこそ、ドラマがある」という、実は一番大切なことを重視していることです。初回の高島政伸、2回目の林家正蔵、3回目の安達祐美といった被疑者のキャスティングも絶妙で、主人公(天海祐希)との取調室での緊迫したやりとりに見ごたえがあります。

          
『S 最後の警官』
(TBS、日曜21時)  18.9%→15.2%→16.1%→12.9%

 今期も多い警察ものの1作ではありますが、他の作品とはかなり違っています。この作品は、向井理、綾野剛の主役二人をいかにかっこよく見せるか、その舞台が警察なのであり、謎解きや捜査の過程を楽しませる警察ものとは異なっています。また、テレビドラマは映画などに比べると製作費が少なく、ややチープに見えてしまうこともありますが(しかし私がテレビドラマの方が好きですが)、この作品はそういう安っぽさがありません。かなりおおがかりな映像を見せており、それもまた主役二人をかっこよく見せる役割を担っています。
 ただし、主役二人のファン以外もずっとついてきてくれるかどうか。私のような男性ファンまで見続るかどうかには、それ以外の面白さの要素が必要だという気がします。



          
今クール(3か月)期間のドラマではありませんが、NHK大河ドラマについても書いておきましょう。


『軍師官兵衛』  (NHK、日曜20時) 18.9%→16.9%→18.0%→16.5%→16.0%

 豊臣秀吉の軍師だった黒田官兵衛が主人公。戦国の時代に活躍した天才軍師を岡田准一が演じるということで、期待の高い大河ドラマです。
 そのわりに視聴率があがっていないという評判もあります。私が見るところ、よく言えば実にオーソドックスな大河ドラマ。主人公の生い立ちから少年時代・青年時代を描き、困難や挫折を経験して成長していく…という描き方がいかにも大河らしいと言えます。しかし、視聴者はぜいたくなもの。テレビドラマには7割の定形表現に3割の新しさを求めます。展開の中にベタな場面が多いこともあり、見ていてその3割の部分がやや物足りない印象はありました。これから成長した官兵衛の活躍を描くことで、あえて武将・ヒーローではない主人公を設定したことのオリジナリティを見せてほしいと期待しています。

『真夜中のパン屋さん』 
(NHK、再放送)

 既に再放送も終了していますが、ここで書いておきたい作品です。
 大沼紀子の原作をドラマ化した作品で、BSで放送された作品が昨年末に地上波で再放送されました。BS放送時にも「いい作品」という評判を多く聞きましたが、私は見逃していたので、地上波放送で見て、やはりいい作品でした。
 ドラマチックなことは何も起こらない作品ですが、それなのに、いやそれだからこそ、しみじみと味わえるドラマです。民放ドラマなら、視聴率を意識してもう少し視聴者にアピールする要素を盛り込むと思いますが、そうでないところがNHKドラマの良さでしょう。
 そういえば、このところのNHKドラマは佳作が続いています。特に火曜10時枠作品には『いつか陽のあたる場所で』『激流』『ガラスの家』『真夜中のパン屋さん』『紙の月』と、続けて佳作が放送されています。この枠放送のドラマはいずれも心理描写が丁寧ですから、私は毎回楽しみに見ています。

 朝ドラと大河以外もNHKドラマが頑張っていることを示すもので、民放とは違うテレビドラマをこれからも作っていってほしいと願っています。



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