フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 中央大学文学部と読売新聞が共催でおこなっている連続講演会、統一テーマは「恋愛・家族・未来」で、今回(9月24日開催)は私が講演する順番でした。私のタイトルは「村上春樹――喪失の時代/恋愛の孤独」です。概要は読売新聞の予告にとてもよくまとめられていましたし、これから詳しい記事も掲載されるそうですので、そちらを御覧ください。
 この講演会も今回が6回目。中間の区切りということで、私の講演の後にはシンポジウムや懇親会もおこなわれました。
 この講演会にはさまざまな意義があると感じています。まず、新聞というマスメディアと大学という研究教育機関が協力した場合に社会にどのような貢献ができるか、その新しい試みをおこなっていること。そして、受験生を増やすための高校生向け広報や、高齢者層をターゲットにした新しい顧客層の開拓といった、大学の利益のための活動に限定せず、大学生と多くの一般社会人の方々が一緒に学ぶ機会を提供できていること、などが挙げられると思います。その意味で、こうした試みが今後も形を変えて継続していくことが望まれます。
   
 余談ですが、個人的にも嬉しいことがたくさんありました。中央大学の文学部事務室や広報課の職員の方々、また読売新聞の記者の方々にさまざまな形で助けていただいたこと、また、今回の講演を(雨の中にもかかわらず)在校生・卒業生・また学外の多くの方が聞きに来てくださったこと、などです。私より前の5人の講演者の内容がすばらしかったので、正直ちょっとプレッシャーを感じていましたが、終わってみて、こういう機会を持てて本当によかったと思っています。

※(10月6日追加)その後、講演に行けなかった方から、HPで内容を読ませてほしいとの要望が寄せられましたので、こちらに概要(速報版の方)を掲載します。(→
「読売新聞」掲載記事



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 7~9月期のテレビドラマもそろそろ大詰めとなってきました。
 今期のドラマで前評判というか期待の高かったのは『スローダンス』(月9)で、実際にスタート当初は20%以上の視聴率をあげていました。しかし、回が進むにつれて視聴率が下がり、逆にじわじわと視聴率をあげて今期トップに上がってきたのが、ベストセラー本のドラマ化(ドラマの前に映画にもなった)『電車男』でした。(もちろん、いつも言うように、視聴率が作品の質に比例するわけではありません)
 この『電車男』のように、原作・映画・テレビドラマと作られていくのは『世界の中心で、愛をさけぶ』などにも見られる現象で、けっして珍しくないことです。ただ、この作品の原作は、ネット上の多数の人々のやりとりで全体が構成されるという特殊な作品でしたので、その分だけ原作とドラマの違いは大きくなっているように思いました。
 

 それはともかくとして、ドラマ『電車男』が視聴率を上げてきたのはよくわかる気がします。
 まずは、「アキバ系おたくの世界ってどんなものなんだろう?」という関心を引きつけていくこと。フィギアだのコミケだのに主人公がかける熱意が、面白おかしく、それでいてとてもあたたかい目で描かれます。そして、そういう世界を扱いながら、ストーリーそのものは「障害の大きい恋愛をはらはらさせながら見せる」というラブストーリーの王道をいっていること。これは多くの視聴者を引きつけるだろうなと思いました。ちなみに、この場合の障害の大きい恋愛とは、「絶対こんなきれいな女性に好かれないだろうと思われるようなダサイ男性の恋愛」という意味です。
 なお、『スローダンス』と『電車男』の両方に、味のあるわき役の温水洋一さんが同一人物(脱サラしたタコライス屋)の役で登場しています。



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