今週も校務多忙ではありますが、イベントがあったわけではありませんでしたので、今回はこの1か月ほどの間に見た映画のことを書きます。
このところ、マスコミ試写会として、一般封切前に見ることのできた映画は、『ディーン 君がいた瞬間(とき)』、『MEMORIES 追憶の剣』、『ザ・ガンマン』 の3作品です。
『ディーン、君がいた瞬間(とき)』 は、若くして亡くなった伝説の映画俳優ジェームス・ディーンの伝記映画です。伝記映画とは言っても、その生涯(出生から亡くなるまで)を追いかけるというものではありません。この映画は、公式サイトには次のように紹介されています。
1955年、アメリカ。マグナム・フォトに所属する、野心溢れる若手写真家デニス・ストックはもっと世界を驚嘆させる写真を撮らなければと焦っていた。無名の新人俳優ジェームズ・ディーンとパーティで出会ったストックは、彼がスターになることを確信し、LIFE誌に掲載するための密着撮影を持ち掛ける。ディーンを追いかけ、LA、NY、そして彼の故郷のインディアナまで旅するストック。初めは心が通じ合わなかった二人だが、次第に互いの才能に刺激されていく。そして彼らの運命だけでなく時代まで変える写真が、思わぬ形で誕生するのだが──。
この映画の最大の特徴は、伝記映画でありながら、わずか数日間の出来事を中心に描いていることです。そして、写真家のデニス・ストックの視点からその数日間のジェームス・ディーンを描いていることです。デニスはまだ知名度の高くない俳優ディーンの可能性を信じて、その写真を撮り続けました。その残されたジェームス・ディーンの写真から、逆にその背景となったジェームス・ディーンの人生を読み解けるようになっているのがこの映画の特徴です。
私は20歳前後の頃にジェームス・ディーンの映画『エデンの東』や『理由なき反抗』を見ましたが、実を言えば、私は主人公像にも、俳優ジェームス・ディーンにも、それほどひきつけられませんでした。しかし、それから長い年月が過ぎて、この映画を見たことで、もう一度『エデンの東』や『理由なき反抗』を見直してみたいと思いました。そういう気持ちにさせるのがこの映画の力なのだと思います。
『MEMORIES 追憶の剣』 は、イ・ビョンホン主演の韓国映画。公式サイトには次のように紹介されています。
常に可能性の限界に挑んできた彼が今回演じるユベクは、巧みな剣術と才知で権力者にのし上がった男。ワンシーンで感情が激変してしまう複雑なキャラクターでもあり、ひと突きで人を殺せる最強の男はこれまで数多くのアクション映画に出演してきたイ・ビョンホンにとっても難しい役だった。さらに本作ではスタント無しで本格ソード・アクションに挑戦し、ダイナミック且つ美しいワイヤー・アクションを披露している。 相手役には『シークレット・サンシャイン』でカンヌ国際映画祭主演女優賞に輝き、2014年にはカンヌ国際映画祭コンペティション部門で韓国女優初の審査員に選ばれ「カンヌの女王」と呼ばれてきたチョン・ドヨン。韓国でトップクラスの女優である彼女にとっても、アクションは初めてで更に目が不自由な役という、新たなチャレンジとなった。ジムで体を徹底的に絞り、最強の女剣士ウォルソへと自らを磨き上げた。
この映画は高麗時代を舞台にした剣術アクションですが、単なるアクションではありません。主人公のドッキ(今はユベク)は仲間を裏切って権力を手に入れようとする人物であり、一般的なヒーロー(英雄)像にはあてはまりません。一方で、ダーティーヒーローと呼ばれる「悪」の主人公というわけでもありません。
正義の味方でもなく、非常に徹した悪人でもない、そこにこの主人公像の特色があります。たしかに、この主人公は、王位すら得ようとする強烈な権力欲の持ち主であるのと同時に、過去に愛した女性を忘れず求め続けるロマンチストでもあります。その対照性を描くために、個々には首をかしげる部分もありますが、それは韓国映画・韓国ドラマのお約束と割り切ればよいでしょう。
そして、そのような主人公の複雑さを演じるのに、最適だったのがイ・ビョンホンという俳優だったということでしょう。たしかに、非情さと繊細さ、アクションとラブストーリーという対照的な要素を演じられる俳優はそう多くはいません。その特異な主人公を、イ・ビョンホンが見事に演じていました。
『ザ・ガンマン』 は、ショーン・ペン主演(脚本、制作も)のアクション映画。「yahoo映画」サイトには次のように紹介されています。
解説
オスカー俳優ショーン・ペンが、『96時間』などのピエール・モレル監督と組んだアクション。ジャン=パトリック・マンシェットの「眠りなき狙撃者」を基に、過去を捨てた元特殊部隊の暗殺者が何者かに命を狙われたことを機に、再び過酷な戦いに身を投じていくさまを描く。アクションに備え肉体改造したショーンが演じる主人公の敵役を、『ノーカントリー』などのハビエル・バルデムが務めるほか、『マンデラ 自由への長い道』などのイドリス・エルバらが共演。
あらすじ
元特殊部隊のすご腕暗殺者ジム(ショーン・ペン)はアフリカ・コンゴ民主共和国で鉱山利権が絡む極秘の暗殺任務をやり遂げ、全てを捨て身を潜めるように生きていた。しかし数年後、突然何者かによってターゲットにされた彼は、暗殺作戦に関わった仲間たちが殺害されていることを知る。敵の正体を突き止めるため、再び銃を手にするジムだったが……。
かつてアフリカのコンゴで政府要人を暗殺した過去を持つ主人公ジムは、8年後に命を狙われることになります。そこからジムのサバイバルのための闘いが続くというストーリーで、その意味ではアクションの連続、見せ場の連続です。以前に見て、このブログにも書いた『ジョン・ウィック』に似ている設定でもあります。引退した暗殺者が、ある理由からもう一度戦う…その点では、この二つの映画は共通しています。
ただ、主演のショーン・ペンも55歳、すごい肉体美ではありますが、アクションを演じるには老けたなあ、という気もしました(私より年下ですから、自分に「老けたなあ」と言っているようなものですが、私はアクション俳優ではないので…)。しかも、屈強な元ガンマンでありながら、爆音の後遺症で脳にダメージがあり、ときどきめまいや吐き気に苦しんでいます。
その意味では、『ジョン・ウィック』のキアヌ・リーブスは人間とは思えないような超人的ヒーロー像。『ザ・ガンマン』のショーン・ペンはきわめて人間的なヒーロー像と、設定は似ていても、主人公像は対照的です。いや、ショーン・ペン演じるジムの方は、ヒーローというにはあまりにも人間的すぎます。言ってみれば、シワシワで、ヨレヨレなのに、ムキムキで、イケイケなのが、この『ザ・ガンマン』のショーン・ペンでした。