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フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 4~6月期のテレビドラマも、始まってそろそろ1か月。深夜枠とプライムタイム作品について一度ずつ書いているので、まだ感想を書いていなかった作品について、ここまで見てきた私の感想を書いていきましょう。


母になる  (日本テレビ系、水曜22時) 10.6%→10.7%→9.3%

 3歳の幼稚園児が誘拐され、9年後に13歳になった息子と再会する母親(沢尻エリカ)の物語(3+9=13?)。日本テレビ系水曜22時枠は「働く女性」ものが多かったのですが、今回は親子愛、家族愛を正面から問いかける、今までとは違うテーマの作品となりました。また、誘拐された子をわが子として9年間育てていた女性(小池栄子)、子育てに疑問を感じている女性(板谷由夏)も含め、3人の女性があわせて描かれているようになっており、母親とは何かを考えさせる真摯な作品になっています。沢尻エリカがあまりにも真面目でいい演技をするので、ついつい「ふれくされて〈別に〉なんて言い出さないのだろうか」と心配になってしまいますが、どうもそういう心配は不要のようです。
 以前、『はじめまして、愛しています。』を取り上げたときにも書いたように、「親子」「家族」のあり方が自明のものではなくなっている現在、そのことを問いかける作品が必要とされています。民放の連続ドラマとしてはもっと派手さや、わかりやすく目をひくような趣向を入れたいところかもしれませんが、今後もそういった奇をてらうことなく、これまでの真面目な作りを続けていってほしいと思います。


釣りバカ日誌2 (テレビ東京系、金曜20時) 6.8%

 おなじみの長寿映画シリーズのキャストを一新してテレビドラマ化。今回はその第2シリーズです。映画シリーズで西田敏行が演じていた主役・ハマちゃんを濱田岳が、三國連太郎が演じていたスーさんをその西田が演じます。濱田のハマちゃんは最初から役にピッタリはまっていますし、西田のスーさんは三國よりいいくらいです。もちろん、三國連太郎は実に味のあるいい俳優でしたが、どちらかと言えば重厚で渋い演技が持ち味。建設会社社長なのに釣りバカになってハマちゃんとコンビを組んでいくスーさんには、西田敏行の方が向いています。また、みち子を演じる広瀬アリスにとっても、この役は当たり役でしょう。妹の美少女・広瀬すずに比べるとやや「美少女オーラのない広瀬アリス」とも言われますが(そんなこと言われてないか?)、その分、田舎出身で料理上手、ちょっと怒りっぽいけど実は心やさしいみち子さんは、広瀬アリスが演じると実によく似合っていて可愛らしいです。
 見逃してもどうってことないけど、テレビがついているとつい見てしまって、そこそこ面白い。『釣りバカ日誌』はすっかりそんな存在になっているようです。
(蛇足ながら、初回放送で松平健が『暴れん坊将軍』の音楽をバックに、馬に乗って登場するシーンには笑いました。)


4号警備 (NHK、土曜20時) 7.6%→6.9%→7.0%

 警察刑事や探偵の活躍する1話完結ドラマが大流行の昨今ですが、この作品は民間警備会社の警備員の、地道で懸命の警備ぶりを描いています。ちなみに「4号警備」とは人の身辺を警護すること。「1号警備」は施設の盗難等の警備、「2号警備」は雑踏の事故防止等の警備、「3号警備」は車両による運搬中の事故等の警備、のことだそうです。
 作中では、窪田正孝と北村一輝がバディを組みます。バディを組む二人が対照的な性格というのは定型通りですが、30分という短い時間にテンポよく事件とその背景が描かれ、現代の気短かになっている視聴者には適しています。また、二人それぞれに過去をかかえていて、30分で個々の事件を解決する一方で、二人の過去と現在が少しずつ描かれていくのも興味深いところです。
 30分で解決するので、話に深みがないのは否定できません。しかし、これまで民放1時間(CMを除けば作品時間は約45分)、NHK45分というドラマ時間の定型を見直して、現代の短期な視聴者にあわせたこの30分枠の作品が、今後増加し定着していくのかもしれません。


リバース  (TBS系、金曜22時) 10.3%→6.3%

 10年前に5人の大学生が山の別荘に出かけた。しかし、1人が車の運転中に行方不明になり、半年後に死体で発見された。それから10年。残った4人の周囲に「人殺し」と書かれた紙が届けられたり、貼られたりする…。湊かなえ小説のTBSドラマ化は『夜行観覧車』 『Nのために』に続いて3作目。いつもながら、人間の心の中に潜む悪意を抉り出すような、独特のストーリーが展開します。
 何度も書いたことですが、現代の視聴者は気が短くなっています。パソコンやスマホでほしい情報が瞬時に得られる時代にあって、10週間同じドラマを見続ける忍耐力を持ち続けるのは難しくなっています。1話完結ミステリーならともかく、長編ミステリーを見続けることを視聴者に強いるためには、1回1回のストーリーによほどの魅力がなければいけません。このドラマ『リバース』は、謎解きは脇に置いておいたとしても、4人と彼らを取り巻く人間たちの物語として十分に見られますから、その点は単なるミステリーではありません。しかし、この作品を見る視聴者は、そのような人間ドラマに期待するよりは謎解きを中心に見るのでしょうから、そこに作品と視聴者のギャップが生じます。私自身は謎解きよりも人間ドラマの方が好みなので、この作品は面白く感じられますが、多くの視聴者が10週見続ける忍耐力を持っているかどうか。結末近くにまた戻ってくるかもしれませんが、中盤の視聴者離れが懸念されます。



ボク、運命の人です。  (日本テレビ系、土22時) 12.0%→9.6%

 もうすぐ30歳になる会社員・正木誠(亀梨和也)の前に「神」と名のる男(山下智久)
があらわれ、「あなたの運命の人が近くにいる」、「2人が結婚しないと未来の地球が救われない」と不思議なことを言いだす…。という設定。その運命の女性・湖月晴子(木村文乃)にアプローチするのに、晴子はまったく誠のことを取り合りません。キャストはそれぞれ魅力的ですが、私にはどうも既視感が強すぎて、それが邪魔してなりません。
 亀梨・山下コンビとなると、もちろん『野ブタをプロデュース』(2005年)を思い出してしまいますし、特異な存在があらわれて、未来から過去にさかのぼる展開は『プロポーズ大作戦』(2007年)を思い出します。しかも『プロポーズ大作戦』の主演は山下智久。ええい、どうせそこまでやるなら、いっそヒロインも『野ブタ』と同じ堀北真希にすればよかったのに。って、ホマキは結婚して引退しちゃったので、それは無理か!
 ともあれ、私の既視感を吹き飛ばすような新たな展開を、今後は期待したいと思います。



櫻子さんの足下には死体が埋まっている (フジテレビ系、日曜21時) 6.9%

 観月ありさ、祝!26年連続30作目の主演ドラマ。原作は同名のウェブ小説で、マンガにもなっています。
 今回観月が演じるのは、「三度の飯より骨が好き」という骨マニアの標本士。外見とはうらはらに口が悪いが、周囲に起こる難事件を見事な推理で解決していきます。
 変人が難事件を解決していく1話完結ミステリーは、もはや現在のドラマの定番。その意味では何ら新しさがありません。この作品はそういう見方よりも、今回の観月の変人キャラを楽しむのがいいんじゃないでしょうか。あるときはドジなナース、あるときは鬼嫁、あるときは正義の主婦。毎回極端な性格設定を見事にこなす、観月ありさの「コスプレ」ならぬ「キャラプレ」(キャラクター・プレイ)を楽しむこととしましょう。



フランケンシュタインの恋 (日本テレビ系、日曜22時) 11.2%

 綾野剛がフランケンシュタインを演じる、ロマンティックミステリー。120年の時を経てよみがえったフランケンシュタインが人間の女性に恋をする物語です。
 人間と人間ではない存在とのラブ・ストーリーは、もはや近年の一つのジャンルになっていると言ってよいでしょう。その間存在がヴァンパイアだったり、幽霊だったり、サイボーグだったりと、ヴァリエーションはさまざまありますが、映画でもドラマでも多くの作品が既に作られています。人間同士の悲恋物語は既にあらゆる型が出尽くしたのかもしれません。これらの作品に共通する設定は、人間ではないことによって新たな恋愛の障壁、ときには不可能性すら描き出していることです。
 正統派二枚目役を演じる俳優はいくらでもいます。綾野剛をそういう役に起用するのは意味がありません。、『最高の離婚』のように、女性にはモテモテなのにダメダメ男とか、アクの強い役の方が彼には似合います。そういえば『仮面ライダー』で俳優デビューをはたしたように、綾野剛は人間じゃない役の方が似合うのかも。そういえば、イケメンながら、よく見ると爬虫類っぽい顔しているような気もしますし。その強み(?)を活かして、これから間と人間のせつない恋を存分に描き出していってほしいものです。


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 4~6月期のテレビドラマもそろそろ出そろいました。私の感想を書く、恒例のテレビドラマ批評の時期です。深夜枠ドラマについては既に書いたので、今回はプライムタイムのドラマの中から感想を書きましょう。一度では書ききれないので、今回は一部になることをご了解ください。

貴族探偵 (フジテレビ系、月曜9時) 11.8%

 麻耶雄嵩(まや・ゆたか)の同名小説のテレビドラマ化作品。警察や探偵が活躍する1話完結ミステリーが全盛の昨今、主人公が変人というのも既にお約束の設定です。またまた変わった主人公があらわれましたが、ただ変わっているだけではなく、主人公は「推理しない」という推理ドラマ。なんじゃそりゃ?と思って見たところ、貴族の主人公は、「下々の者」に推理を任せるんだとか。生瀬勝久や松重豊ら芸達者な脇役ががっちり周りを固めて、態勢は万全という布陣のようです。
 ただ、疑問なのは、主人公の貴族探偵のキャスティングで、この役は相葉雅紀である必要があったのでしょうか。相葉クンと言えば、嵐の中ではどちらかといえば庶民的というか、親しみやすいキャラクターで高感度の高い人です。嵐の中で、もっとも貴族に見えない人。その彼が高貴な人物を演じているのが面白いと言えば面白いものの、似合っていないことは明らか。もしかすると、探偵なのに推理しない、主役なのに出番が少ない…というこの斬新な設定ゆえに、相葉クンを起用したのか?そんな妙な興味を持ってしまいました。この主役のキャスティングが視聴者にどう評価されるのか。局がたいへんな番組宣伝をしたので、初回はある程度の高視聴率が期待できますが、継続するかどうかはその点にかかっていると思われます。


CRISIS 公安機動捜査隊特捜班 (TBS系水24時) 13.9%→11.2%

 テレビドラマ『SP』や『BORDER』の脚本も担当した小説家・金城一紀が今回も脚本を手がけ、主役に小栗旬と西島秀俊、脇に田中哲司、野間口徹、長塚京三ら、ちゃらいイケメンとは一線を画する渋い俳優陣を起用。そして、本格的なアクションシーンの連続と、勧善懲悪の枠におさまらないストーリーの展開。これは明らかに、大人が見るにふさわしい内実を備えたテレビドラマ作品になっています。
 ただし、本格的な大人向けの作品が、実に単純な娯楽作品に対して、視聴率的には負けてしまうこともしばしばあるのがテレビドラマという世界。たとえば、同じアルファベット題名作品、同じ西島秀俊の主演で『MOZU』という作品がありましたが、テレビ視聴率だけで見れば視聴者に支持されたとは言えませんでした。この『CRISIS』の場合、特に勧善懲悪ではなく、犯人が逮捕されるとは限らないところが、リアルといえばリアルですが、視聴者の爽快感にはつながりません。その点で視聴率は内容ほどにはついてこないかもしれませんが、そ
れはもう視聴率という評価基準の限界と言うほかないでしょう。


あなたのことはそれほど  (TBS系、火
曜22時) 11.1%

 それほど好きなタイプではなかったけど、いい人と穏やかな気持ちで結婚した女性・渡辺美都(波瑠)。しかし、そんなときに、中学時代に好きだった同級生に再会してしまう…という設定。
 原作はいくえみ綾(りょう)の同名マンガ作品。いくえみ綾は、微妙で繊細の女性の気持ちを描くことに定評のあるマンガ作家。若い固定的なファンがいて、私の指導学生が卒業論文に取り上げたこともあり、そのときに集中的にこの人の作品を読みました。ただ、マンガとテレビドラマはジャンルが違います。テレビドラマはお金をとらない分、マンガよりも幅広い多くの受容者を必要とします。近年はマンガ作品のテレビドラマ化が頻繁におこなわれていますが、マンガの世界を忠実に再現しようとするだけでは成功しません。
 本作では、東出昌大の役柄がネット上で話題になっています。かっこいい役の多い東出が、今回は表面的には「いい人」なのに、どこか狂気に変貌しそうな人物を演じています。「冬彦さんの再来か」(注:冬彦とは、『ずっとあなたが好きだった』に登場するマザコン夫で、佐野史郎が演じた)という書き込みもあり、東出の怪演がマンガにはないテレビドラマの見どころ、ツッコミどころになりそうです。そこに注目して、2回目以降を見ていきたいと思います。


緊急取調室2(テレビ朝日系、木21時) 17.9%

 警察内の取り調べ室内でおこなわれる、被疑者と警察官の攻防に焦点化して1話完結作品。  2014年に放送された作品の続編第2シリーズで、設定も配役もほぼ第1シリーズのままです。
 主演の天海祐希に加えて、周囲をかためるのは大杉蓮、小日向文世、でんでんといったおじさん(おじいさん?)たち。ここまで主要キャストの平均年齢が高いドラマも珍しいのですが、それだけに若い俳優たちにはない「いい味」をみんな出しています。
 ただし、取り調べ室内の被疑者と警察官の攻防に焦点化しているということは、決定的な証拠をつかんで逮捕して終わりというドラマとは違って、いかに被疑者に自白させるかがカギとなるということです。言い換えれば、決定的な証拠をつきつけていないにもかかわらず、被疑者に自白させる過程が作品の肝(キモ)ですから、よほど綿密に練られた脚本でないと、視聴者は納得しないでしょう。つまり、「それくらいじゃ、被疑者は自白しないよ」と視聴者に思われたら作品の負け。第1シリーズも視聴率的に好評でしたが、自白に至る必然性の点で、何回か物足りないことが私にはありました。せっかく第2シリーズは高視聴率で発進したのですから、その点のクオリティーを今後も継続してほしいと要望しておきたいと思います。



人は見た目が100パーセント (フジテレビ系、木曜22時) 9.5%→6.4%

 こちらの原作は大久保ヒロミの同名マンガ作品。女子力ゼロのリケ女3人が中心人物。「女子力ゼロのリケ女」というと、ヒットした『デート』(2015年、主演:杏・長谷川博己)を思わせます。
 化粧のしかたやスカーフの書き方など、女性のファッションに時間を多く割き、コント仕立ての小ネタを随所に入れるなど、「ドラマ」の定型を破っている場面の多い作品。なかなかの面白い仕掛けのドラマだと思います。とはいえ、ネット上では主役3人のキャスティングにコメントが集中しているようです。
 その3人とは桐谷美玲、水川あさみ、ブルゾンちえみ、の3人。ネット上では、ブルゾンちえみが高評価の一方で、桐谷美玲が一生懸命さえないリケ女を演じていても、綺麗すぎて感情移入できないと書く人が多いようです。私の印象では、桐谷美玲はそこそこ頑張っていくように見えますが、水川あさみの「やつし方」はかなり物足りません。また、桐谷美玲についても、頑張ってさえなくしてはいるものの、『デート』の杏に比べたらまだまだ。綺麗な女優さんが「そこまでやるか」というくらい「ださく」「さえなく」して、それでやっと視聴者は評価してくれます。桐谷美玲が、『デート』の杏のアヒル口やネズミのメイクくらい大胆に演じたら、視聴者に支持されるんですけどね。



小さな巨人 (TBS系、日曜21時) 13.9%

 警視庁と地域の警察署を舞台にして、エリートコースから外された警察官(長谷川博己)のそこからの不屈の闘いを描きます。「警察版・半沢直樹」などとも言われているようで、確かに共通点が多くあります。プロデューサー福澤克雄らスタッフの多くが同じですし、かたき役に香川照之を起用していることや、組織の中で理不尽な扱いを受けながらそこから逆襲していくストーリー展開も共通しています。TBSの看板でもある日曜劇場(日曜日21時)という放送枠も同じですし、『半沢直樹』依頼のヒットを狙うTBSの宣伝の力の入れようもかなりのものです。
 とはいえ、人気作と共通点が多いからと言って、同じようにヒットするとは限らないのがテレビドラマの難しいところ。何より、『半沢直樹』のときは、視聴者が半沢直樹のようなヒーロー像を待ち望んでいたという状況がありました。このことは別の機会にも書きました。
 ⇒ 「『半沢直樹』は『GTO』の再来か」
  東日本大震災から2年経ち、少し単純すぎてもいいから、困難な状況を乗り越える不屈の人物像に明るい未来を託してみたい、そんな気分が当時はあふれていたのだと思います。その願望が今のこの2017年の日本社会でも変わらないのかどうか。この『小さな巨人』という作品の今後から、そのことがわかってくるように思います。


あいかわらずの校務多忙につき、録画番組を見る時間がないこと、ブログを書く時間が十分にとれないことがあり、今回は書きききれなかった作品もあります。それはまた次の機会に書きたいと思います。


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 1~3月期のテレビドラマも放送から1か月半が過ぎました。私の感想を書く、恒例のテレビドラマ批評の3回目です。今回は、まだ書いていなかった作品と深夜枠ドラマについて書きましょう。


きみはペット (フジテレビ系 月曜深夜) 

 既に2月から放送されていた作品で、テレビドラマ放送は既に終盤。原作は、言わずと知れた小川彌生のマンガ作品。過去には日本でも韓国でもテレビドラマ化されています。日本では、小雪と松本潤のコンビでドラマ化されているので、そちらのイメージが強い人が多いかもしれません。可愛らしさでは松本潤よりも志尊淳が勝りますが、実はダンス(原作はバレエ)の世界では一流の踊り手という設定のカリスマ性は松本のイメージに合うのかもしれません。ちなみに韓国版ではあのチャン・グンソクが演じていました。今回のテレビドラマ作品の出来もなかなかですし、志尊淳の起用もあたっていると思いますが、既によく知られた内容ですし、深夜枠でもあるので、もう少し内容に冒険がほしいところです。


兄に愛されすぎて困ってます
 (日本テレビ系、水深夜) 

 夜神里奈の同名マンガのテレビドラマ化。6月末には映画化作品の公開が予定されており、映画化に先がけての先行テレビドラマ化ですから、映画の宣伝も兼ねているのでしょう。しかも、主演の土屋太鳳らキャストは、映画、テレビドラマともに同じ。ですから、テレビドラマの内容は、映画版で描かれていない裏エピソードとなるようです。
 本当は血のつながらない兄に溺愛される女子高生、突然おとずれたモテ期…と、内容はこれまでにも繰り返されてきたよくある設定。その分、何かの新しさや刺激がほしいところですが、それが実年齢22歳になった土屋太鳳のセーラー服でしょうか。22歳で高校生役をするのはけっしておかしくありません。しかし、知名度、演技力など、何をとっても他のキャストより群を抜いている土屋太鳳が、周囲に比べて一人だけ大人に見えてしまうのは私だけでしょうか。

100万円の女たち  (テレビ東京系、木曜深夜) 

 青野春秋の原作マンガのテレビドラマ化作品で、ラドウインプスの野田洋次郎が主演することで話題の深夜ドラマ。設定はとにかくミステリアス。売れない小説家の主人公のもとに、5人の女性たちがやってきて同居することに。しかも、5人がそれぞれ100万円を毎月主人公に支払うとのこと。いったいこれからどうなるのか、興味がつもります。
 ただ、初回は謎の設定を提示しただけですので、これだけでは何とも言えません。今後にどんな展開となるのか期待は持てるので、録画し続けるとは思いますが、あまり謎解きを引っ張られすぎるとついていけなくなるので、毎回それなりに楽しませてくれるかがカギになりそうです。


恋がヘタでも生きてます  (日本テレビ系、木曜23時)

 原作は藤原晶の同名マンガ作品。恋愛ドラマが視聴者に支持されない時代ということがしばしば言われていて、私もマスコミからそういう質問を受けることがよくあります。それに対して、「以前のような恋愛ドラマは受けないものの、現代には現代なりの恋愛ドラマはある」と答えることにしています。そのひとつの形が「恋愛苦手な人の恋愛」というテーマであり、これまでも『デート』『世界一難しい恋』などの作品が生まれてきました。
 その方向に沿った作品ということは言えますが、もとはマンガ作品ということもあり、王子様役の男性像が典型的すぎるのが、私には少し物足りないところです。ただ、強気のキャリアウーマンを演じる高梨臨と、ゆるふわな雰囲気を醸し出す土村芳の対照的な取り合わせは見どころですし、朝ドラでどちらも主役の脇を固めた二人が、今度は深夜枠で中心をどのように演じるかも興味深いところです。


孤独のグルメ6 (テレビ東京系、金曜深夜) 

 既にシーズン6と、もう説明の必要のない深夜ドラマ。「夜食テロ」と言われる深夜のグルメ番組ブームの先がけとも言える定番ドラマです。松重豊がひたすら一人で食べまくるドラマで、私もタイトルをパクらせていただいて、「孤独のグルメ」というタイトルのブログを何度も書いています。
 シーズン6のこれまで放送された2回見たところ、基本的にはこれまでと変わりませんし、変わらないところがいいところでもあります。初回は大阪に出張し、2種類の店を紹介して特別版ふうでしたが、2回目からは通常通りに戻りました。シーズン1など初期の頃は主演の松重豊以外はほとんど無名の俳優さんばかり出演していたのに、回を追うごとに出演者が豪華になってきました。近頃は、少し映るだけのチョイ役に有名俳優を起用するなど、すっかり俳優陣をぜいたくに使う番組になりました。俳優陣は豪華になっても食べる料理はあいかわらず庶民的。フレンチレストランで気どって食べる井の頭五郎を見たいとは思わないので、この構図は今後も変わらずにいってほしいところです。 


マッサージ探偵ジョー  (テレビ東京系、土曜深夜)

 深夜ドラマは、肩のこらない気楽に楽しめる普通っぽい作品と、実験的冒険的ないわゆる「とがった」作品とに大きく分かれます。この作品は明らかに前者の典型。しかも、作品冒頭に、これまで数ある「変わった探偵もの」のひとつだと、自分から宣言しているところも、変にとりつくろっていなくて潔いです。

 主人公の中丸雄一は対人恐怖があって、普段は人と喋るのが苦手。それなのに、マッサージしただけですべてわかってしまうという超人的能力を発揮します。その人物設定も面白いのですが、さわっただけでわかってしまうので、謎解きがあまりにも簡単すぎます。30分番組という放送時間が短い中のドラマなのでしかたありませんが、超人的な主人公ゆえに簡単に謎が解けてしまいすぎるというジレンマが生じるのが、少し物足りないところです。


書ききれなかった作品もありますが、それはまたに機会に。今回はこのくらいにしておきます。


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 4~6月期のテレビドラマはまだ数作品しか始まっていませんが、その前にいくつか気になっている作品について感想を書いておきましょう。というのも、新しい試みを持った作品が出ているからです。
 テレビの役割が相対的に小さくなっていく中で、テレビドラマの視聴率や存在感が低下しているという指摘は多々あります。また、人気マンガのドラマ化など、同じようなドラマ企画ばかりで飽きてしまうと、いう指摘もあります。それらの指摘自体は否定できませんが、そんな中でもテレビドラマの中で面白いチャレンジをしている作品については、注目しておきたいと思います。

 まずは 『バイプレーヤーズ』 (テレビ東京系、金曜深夜)。前回もこのブログで書いたように、6人のわき役(と言ってもかなり著名な俳優たちですが)を実名で登場させるドラマ。その他の登場人物を含めてほぼ全員が実名で登場しているのに、内容は完全なフィクションというところが斬新です。フィクションですが、この人ならこういうことをするかも…と思わせる作りいなっている工夫が見事です。
 第6話では眞島秀和や野間口徹といったより若い世代のバイプレーヤーたちが登場しました。その世代のバイプレーヤーたちで続編を作ったら…という気がします。あるいは笹野高志、平泉成
らの高齢バイプレーヤーたち、さらには木南春夏や平岩紙にらよる女性バイプレーヤー版なども面白いのでは…。そんな連想が次々にはたらいてきます。

 深夜枠と言えば、『バイプレーヤーズ』の後に放送されていた 『山田孝之のカンヌ映画祭』 (テレビ東京系、 金曜深夜)も斬新でした。山田孝之が本気でカンヌ映画祭を目指して映画製作のプロデューサーを務めるドキュメント…と見せておいて、ドキュメントなのかフィクションなのか判然としない造り。最後の方で種明かしとなりましたが、そこまでよくわからない世界に連れていかれる不思議な感覚を味わいました。
 近年、テレビ東京系列の深夜ドラマには挑戦的な作品が多く、視聴率でははかれない興味深さがあります。

 次に興味深かったのが 『スリル』 (NHK)。小松菜奈主演の「赤の章」と山本耕史主演の「黒の章」に分かれて、それぞれ4回の1話完結ミステリー。制作者のコメントとして、次のようにありました。
   こんなにハジケた小松菜奈さんを見たことがない!
   こんなカッコ悪い山本耕史さんを見たことがない!
 たしかにその通りでした。「キュートで楽しいミステリー」という言葉にも嘘はありませんでした。あまりミステリー好きではない私ですが、同じ設定から異なる主人公を2人たてるという面白い試みを、おおいに楽しむことができました。

 さらに、今週から始まったばかりの 『やすらぎの郷』 (テレビ朝日系、月曜~金曜12時30分)が目につきました。
 毎日(月曜から金曜まで)放送するいわゆる帯ドラマは、今ではNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)だけになってきましたが、過去には民放の昼の帯ドラマが放送されていました。しかし、テレビ環境の変化もあって、昼の民放帯ドラマは姿を消しました。そこへあえて民放帯ドラマを復活させたところに、この作品の挑戦的な姿勢があります。しかも、脚本は倉本聰。演じるのは石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、藤竜也、ミッキー・カーチス、八千草薫、山本圭といったベテラン俳優たち。そして、舞台は高級な老人ホーム。
 かつての昼ドラは、その時間に家庭にいる主婦向けを強く意識していましたが、今回は設定も内容もすべて高齢者を対象とした作品になっているところが重要です。これだけ日本が高齢化社会へ移行しているのにもかかわらず、テレビドラマはあいかわらず若い女性層をもっとも重視した作りになっています。この『やすらぎの郷』が成功するなら、テレビドラマの新しい可能性が見えてくるように思います。

 テレビの役割は相対的に低下し、テレビドラマの視聴率が下がっていることは最初に書いた通りです。しかし、やれることはまだまだあるのではないか。こうした新しい試みを見ていると、テレビドラマの可能性をもう少し注視していきたいと思えてきます。


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 今年度の入学式がおこなわれました。
 3月25日(土)に卒業式、4月2日(日)に入学式と、間が1週間しかなく、しかもその期間に会議や校務がいろいろありました。おかげで、なるべく週1回(できるだけ土日)の更新を心がけているこのブログなのに、土日に更新ができませんでした。

 さて、入学式。中央大学では学生数が多いため、全体の入学式は午前11時からと午後2時からの2回に分けておこなわれます。それに続いて、各学部・学科・専攻ごとのガイダンスがあり、さらにその合間には大学院のガイダンスもあります。私たち教員にとっては、卒業式や入学式に感慨にふけっている余裕などまったくなく、とにかくスケジュールをこなしていくのに精一杯です。



 最初の写真は(今年度のものではありませんが)全体の入学式。もっとも規模の大きい式です。次は大学院スペースに飾られた、新入生歓迎のお花。そして、一番下は大学院文学研究科のガイダンスのようすです。
 学部・大学院、そして学科や専攻を問わず、この日入学した皆さんが、この場所で(楽しいこともつらいことも含めて)豊かな時間を過ごせますように。そのことを心から願っています。




※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。
 (残念ながら今回は1週間以上、空いてしまいました。)



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