こんなに上手くいかないのは、どこかに根源的でシリアスな問題があるのでなないだろうかと思って、俺はその壜のようなものと、蓋のようなものの噛み合わせをもう一度ギシギシといじってみた。その、絡み合いは、まったくスムーズかといわれればそうでもなく、1~2周まわしたところで、なにかがひっかかる。そこから無理やりまわそうとすると、完全につまってしまい、動かなくなる。いや、こんなふうに説明すると、まるで桃屋の瓶詰めの搾菜の開け閉めに苦労しているようだが、ここにあるのは、あくまでも、壜のようなものであり、蓋のようなものであるというだけで、実際のところは、なんなのかよくわからない。見た目は無難に言えばステンレスの水筒のようであり、不穏にいえば映画でみるようなプルトニウムとか生物兵器の詰め物のようである。ヒロシさんから渡されたこの装置は、彼によると、「鍵を握っている」らしいのだが、そんな空想のような効能は百歩譲ったとしても、そもそもその「鍵」は、瓶のようなものと蓋のようなもののかみ合わせにより発揮されるのか、それとも中に入っている粘り気のある液体に拠るものなのか、これまたよくわからない。よくわからないものを渡され、それが物事を支配するのだ、といわれるほど迷惑なことはない。
「ヒロシさん、いったいこれは…」
「最初はな、うまくかみ合わないかもしんないよ。でもな、毎日毎日ギシギシやってみな。そうすりゃ……」
「いやいや、それはわかるんですが、そもそも論として、いったいこれはなんなんすか?」
「かみ合わせ機械、だっていっただろう。鍵握ってんだよ。おまえ頭悪い?毎日毎日、時間を見つけて無心でかみ合わせりゃ、ちょっとずつな、上手くいくようになるんだよ」
「その上手くいくとか、いかないってのがよくわからなくて。いったい、なんのことを言ってるんですか?」
「それがわかるってことが、かみ合わせるってこったよ」
そんな俺たちのいっさいかみ合わない会話に割り込んできたのはミシマだった。
「そうですよ。アーさんは、ちょっと考えすぎ。深読みしすぎ。本当の意味なんて、あれこれ考えたって、わからないって。そもそも、ご名答が存在しているかどうか、なんてのもわかったもんじゃない。言われたとおり、そのまま信じておけばいいんですよ。ほら、このあいだって、トミモトさんの好みとか考えて考えて考えて抜いて、でも結局は、その読みが裏目にでて、ものすごい不味い雰囲気になったじゃないですか。」
ミシマをぶん殴りたいと思いつつも、俺は「まあな…そうだなあ…」と穏便にことを済ませようとした。「おまえの言うこともわかるけどな…」と口を開きかけたその前に、いきなりやつがぶっ倒れる。首のあたりをぐりんと傾けながら仰向けに、尻からではなく背中から引っくり返った。血汁すら飛び散った。
ヒロシさんが、手に持っていた、くだん瓶のような蓋のような装置の底でミシマの顔面の中心の部分にすさまじい打撃を加えたのだった。
その瞬間、俺は、ああそういうことか、と理解した。
「ヒロシさん、いったいこれは…」
「最初はな、うまくかみ合わないかもしんないよ。でもな、毎日毎日ギシギシやってみな。そうすりゃ……」
「いやいや、それはわかるんですが、そもそも論として、いったいこれはなんなんすか?」
「かみ合わせ機械、だっていっただろう。鍵握ってんだよ。おまえ頭悪い?毎日毎日、時間を見つけて無心でかみ合わせりゃ、ちょっとずつな、上手くいくようになるんだよ」
「その上手くいくとか、いかないってのがよくわからなくて。いったい、なんのことを言ってるんですか?」
「それがわかるってことが、かみ合わせるってこったよ」
そんな俺たちのいっさいかみ合わない会話に割り込んできたのはミシマだった。
「そうですよ。アーさんは、ちょっと考えすぎ。深読みしすぎ。本当の意味なんて、あれこれ考えたって、わからないって。そもそも、ご名答が存在しているかどうか、なんてのもわかったもんじゃない。言われたとおり、そのまま信じておけばいいんですよ。ほら、このあいだって、トミモトさんの好みとか考えて考えて考えて抜いて、でも結局は、その読みが裏目にでて、ものすごい不味い雰囲気になったじゃないですか。」
ミシマをぶん殴りたいと思いつつも、俺は「まあな…そうだなあ…」と穏便にことを済ませようとした。「おまえの言うこともわかるけどな…」と口を開きかけたその前に、いきなりやつがぶっ倒れる。首のあたりをぐりんと傾けながら仰向けに、尻からではなく背中から引っくり返った。血汁すら飛び散った。
ヒロシさんが、手に持っていた、くだん瓶のような蓋のような装置の底でミシマの顔面の中心の部分にすさまじい打撃を加えたのだった。
その瞬間、俺は、ああそういうことか、と理解した。
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