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考えるための道具箱

Thinking tool box

◎PERFORM FULL ALBUM SEQUENCES

2009-11-11 23:40:07 | ◎聴
『BRUCE SPRINGSTEEN AND THE E STREET BAND TO PERFORM FULL ALBUM SEQUENCES AT MADISON SQUARE GARDEN IN NEW YORK CITY』。つまり、通常のセットリストの中盤ぐらいに、1枚のアルバムに収められている曲をアルバムの曲順どおりに連続して一気に演奏するというコーナーをぶっこむというもの。ツアーに紛れ込ませてやっているようで、言うまでもなく、ファンにとってはたまらないリストになっている。もはやMSGにとどまらずがんがんやっています。

例えばこんな感じ。まさに「in its entirety」。しかも当然ながら「for the first time」。

September 30, 2009
East Rutherford, New Jersey
Giants Stadium

Wrecking Ball ※
Seeds
Johnny 99
Atlantic City
Outlaw Pete
Hungry Heart
Working On A Dream

【Born To Run】
★Thunder Road
★Tenth Avenue Freeze-Out
★Night
★Backstreets
★Born To Run
★She's The One
★Meeting Across The River (trumpet solo: Curt Ramm)
★Jungleland

Waiting On A Sunny Day
The Promised Land
Into The Fire
Lonesome Day
The Rising
Badlands
No Surrender

Raise Your Hand
E Street Shuffle
Growing Up
American Land (with Willie Nile)
Dancin' In The Dark (with Willie Nile)
Hard Times (with Willie Nile)
Rosalita

※米国のitunesでのみ買える新曲。買わせてくださいよ。

いちおう記録としてそのほかのアルバムも列挙。
---------------------------
Wrecking Ball
Tenth Avenue Freeze-Out
No Surrender
Outlaw Pete
Hungry Heart
Working On A Dream

【Darkness On The Edge Of Town】
★Badlands
★Adam Raised A Cain
★Something In The Night
★Candy's Room
★Racing In The Street
★The Promised Land
★Factory
★Streets Of Fire
★Prove It All Night
★Darkness On The Edge Of Town

Waiting On A Sunny Day
I'm Going Down
Be True
Jailhouse Rock
Thunder Road
Long Walk Home
The Rising
Born To Run

Cadillac Ranch
Bobby Jean
American Land
Dancin' In The Dark
Rosalita

---------------------------
Wrecking Ball
Out In The Street
Outlaw Pete
Hungry Heart
Working On A Dream

【Born In The USA】
★Born In The USA
★Cover Me
★Darlington County
★Working On The Highway
★Downbound Train
★I'm On Fire
★No Surrender
★Bobby Jean
★I'm Goin' Down
★Glory Days
★Dancing In The Dark
★My Hometown

The Promised Land
Last to Die
Long Walk Home
The Rising
Born To Run
Jersey Girl

Kitty's Back
Detroit Medley
American Land
Waiting On A Sunny Day
Thunder Road

---------------------------
Thundercrack
Seeds
Prove It All Night
Hungry Heart
Working On A Dream

【The Wild, The Innocent and the E Street Shuffle】
★The E Street Shuffle
★4th of July, Asbury Park (Sandy)
★Kitty's Back
★Wild Billy's Circus Story
★Incident on 57th Street
★Rosalita
★New York City Serenade

Waiting On A Sunny Day
Raise Your Hand
Does This Bus Stop at 82nd Street
Glory Days
Human Touch
Lonesome Day
The Rising
Born To Run

Wrecking Ball
Bobby Jean
American Land
Dancing In The Dark
(Your Love Keeps Lifting Me) Higher and Higher (with Elvis Costello)

---------------------------
2枚組みの『The river』だってやっちゃう。すげえ。

Wrecking Ball

【The River】
★The Ties That Bind
★Sherry Darling
★Jackson Cage
★Two Hearts
★Independence Day
★Hungry Heart
★Out In The Street
★Crush On You
★You Can Look (But You Better Not Touch)
★I Wanna Marry You
★The River
★Point Blank
★Cadillac Ranch
★I'm A Rocker
★Fade Away
★Stolen Car
★Ramrod
★The Price You Pay
★Drive All Night
★Wreck On The Highway

Waiting On A Sunny Day
Atlantic City
Badlands
Born To Run
Seven Nights To Rock
Sweet Soul Music
No Surrender
American Land
Dancing In The Dark
Can't Help Falling in Love (the Elvis song)
(Your Love Keeps Lifting Me) Higher and Higher

---------------------------------------------
ぶっこむことによって、そのほかの曲も変えなければならないわけだから、これはそうとう大変、というか大変エキサイティングなライブになる。どれを見たいかというとやっぱり『The river』、とりわけLPで言うところのD面か、と思うが、あくまでもしいていえば、というレベル。Jackie Wilsonの曲や、数年来演奏していないような曲、初めてのパフォーマンスなども散りばめられているので、どれにあたってもラッキーなんだろう。
きっと日本では観ることはもう絶対に無理だろうと思うので、せめて全パタンのCDかDVDをセットにして商売してください!しかし、まあなんつーかBOSSは凄いっす。

◎『魂のゆくえ/くるり』。

2009-06-20 00:48:36 | ◎聴
「魂のゆくえ」だけでもじゅうぶん元はとれる。買う価値はある。「デルタ」と「背骨」までいれれば完璧だ。この数年間のちょっとした物足りなさが一挙に払拭された。くるりは、ビジネス抜きで音楽のことを真剣に考えていると思った。かくなるうえは梅小路を狙うか。

これで終わったら、まるでtwitterなので、写真を。片隅にみえるカズオ・イシグロの『夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』は、いうまでもなく、『1Q84』とは別の次元で、よい小説である。静寂を文章で表現する天才だ。


◎Mr.Children Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~

2009-05-09 15:01:38 | ◎聴
にわかミスチルファンだけれど、こういったものへの、のめりこみが尋常じゃないので、ごく一般的なミスチルファンぐらいには追いついたと思う。最近はipodの再生回数が、ニール・ヤングとカーリー・ジラフ同様ものすごいことになっている。で、娘のこれも尋常じゃない行動力により手に入れることのできた複数のチケットのうち一枚を分けてもらって城ホールに行ってきた(4月26日)。立見がほとんど苦にならないほど、エンターテイメント性にとんだ良いライブだった。『SUPERMARKET FANTASY』の楽曲を考えると、本来的にはホーンが入ればもっと豊かにはなるんだろうなあと思ったけれど、娘の情報によると今年度のツアーは軽微な年回りにあたるらしいので仕方ない。大仰なスタジアム(長居)とミスチルにしてはコンパクトなホールの2つを経験したことになるけれど、さすがに日本一のPOPバンドだけあって、いずれも楽しませる方法はパーフェクト。



行く前は、セットリストを見ながら、オープニングからの3曲を聴いたら、もうそれで帰ってもいいやみたいな冗談を言ったりしていたもんだけれど、実際はむしろそれ以外の、あまり期待していなかった曲が良かった。「つよがり」や「フェイク」は悪くないのはわかっていたけれど、しかしタメや微妙なリアレンジで、「いつもどおり」とは一線を画した。なにより、アルバムでは、個人的にはいまいちコーナーに押し込められていた「東京」「口がすべって」「花の匂い」なんかを見る目(聴く耳)が変わった。


01.終末のコンフィデンスソング
02.everybody goes~秩序のない現代にドロップキック~
03.光の射す方へ
04.水上バス
05.つよがり
06.ロックンロール
07.東京
08.口がすべって
09.ファスナー
10.フェイク
11.掌
12.声
13.車の中でかくれてキスをしよう
14.HANABI
15.youthful days
16.エソラ
17.イノセントワールド
18.風と星とメビウスの輪
19.GIFT

■Encore
20.少年
21.花の匂い
22.優しい歌


いまのところどのホールにおいてもリストは変わらない。すべてのオーディエンスに機会均等にといった博愛のほうが先立っているのだろうか。たとえば、スプリングスティーン、そこまでいかずとも浜田省吾程度には、毎回少しずつリストを変えたほうが楽しいと思うんだけど、どうなんだろう。

◎Fork In The Road

2009-04-23 20:10:33 | ◎聴
「オアシスがローリング・ストーンズのようになったっと言われることもあるが、ストーンズは新しい音楽をつくっていない。俺たちはニール・ヤングのように何年か一度質のいいアルバムをつくっていく」



リアム・ギャラガーの発言。番組名は知らないけれどMTVのようなプログラムの、どうやら日本でのインタビューで、たしかそんなような話だった。ちょうど最近のニール・ヤングを聴いてみようかなあ、と思っていたので、ますます意欲が高まった。賛否がわかれるようだけれど、そもそも判断の基準値がゼロなので、どれも受け入れることができそうな気もする。

で、早速TSUTAYAに出かけたが、その前に、BLACK ROOMってほんまにプッシュされてんのかなあとチェックに入ったHMVで、ニール・ヤングの新譜『Fork In The Road』に気づく。まあ、そんな程度のレイター・ファン。

おおむね「Rockin' In The Free World」のような音を期待していたので、その点では、嫌いではない。むしろ、シンプルさ、思いついたので一気に録音しました的な感じに心を動かされる。たとえば、「Just Singing A Song」「Johnny Magic」といった曲は「らしくっていい」ともいえるし、ズレに裏切りがあるという見方もできそうだ。いっぽうで、あいかわらず詞がよくわからないのでイラつく。なんでも、全編、自分が改造して造ったエコ・カーについての愛着を語るコンセプトアルバムらしく、つまりは、ある種の電波である。

今回のアルバムが質がいいものなのかどうかはよくわからないけれど、何年かに一度質のいいアルバムをつくるためには、それ以外のどうしようもない作品が誕生する可能性なんていっさい省みず、「おれは創りたい。だから創る」といったような熱狂と偏執が必要なんだということがよくわかる。こういった熱狂と偏執は、ビジネスの世界にも必要だ。

◎斉藤和義 歌うたい15<16@Zeep Osaka 081221

2009-01-08 00:12:07 | ◎聴
奥さんに連れてってもらう。「年末に、ガツンと一発」みたいなタイトルで書いていたけれど、書きかけのまま忘れてた。
セットリストにつけた◎はあくまで便宜的なもの。前座からアンコールまで、曲が終わるたびに、「すげえな」と呻いていた。ふつうのライブだと、それがたとえジャクソン・ブラウンやミスチル、ハマショーなんかであってもなかなか「すげえな」といった感想には至らないわけで、これは「すげえな」ことだ。ひとつはZeepなんでアンビエンス・エフェクトというか聴覚立体感のようなものにどっぷりつかったからなんだろうけれど、それだけではなくR'n R、R&Bのフォースのようなもの、ギターの神が降りてきたかのようなアウラを、曲やパフォーマンスはもとより、ギターやドラムのような利器からも感じることができたからなんだろう。なんていうのは、まあかなり言いすぎで、そんなふうに気負わないところにちょっとした爪が垣間見えるのが、せっくすちゃんのよいところ。だから、脱力の“いえ~ぃ”が、かっこうよいわけだ。

[01]僕の見たビートルズはTVの中 
[02]男節 ◎
[03]Hey! Mr. Angry man
[04]Baby, I LOVE YOU
[05]空に星が綺麗
[06]YOU&ME
[07]おつかれさまの国
[08]やぁ 無情
[09]レノンの夢も ◎
[10]BAD TIME BLUES
[11]彼女は言った
[12]Rain Rain Rain
[13]誰かの冬の歌
[14]約束の十二月
[15]何もないテーブルに
[16]歌うたいのバラッド
[17]ポストにマヨネーズ
[18]ささくれ
[19]劇的な瞬間 
[20]FIRE DOG ◎
[21]COLD TUBE ◎
[22]I Love Me ◎

□Encore1
[23]Don't Worry. Be Happy
[24]君の顔が好きだ

□Encore2
[25]ベリーベリーストロング ◎
[26]歩いて帰ろう

[02]はスタジオ録音ではどうしようもない曲で、その70年代フォークくずれのようなゆるさにより、だいたいにおいてスキップの対象となっていた。だからライブでしかも二曲目にリストするなんてどうかねーと思っていたわけだけれど、一転、リズムセクションのがんばりによりライブバージョンはロックロール、R&Bに進化し、それこそ、ライブの二曲目にふさわしい仕上げになっていた。スタジオ・バージョンはあれこれ計算しすぎてナマの獰猛さのようなものが削がれていたということなんだろう。よくわかんないですが、チームってのは大事ですよね。

[09]とか[20][21]なんかを聴くと、この人はほんとうにギター狂、ロック狂で、しょっちゅうギターばかり触ってんだろうなというのがよくわかる(実際は、そうではなく、曰く、そうなのは山崎まさよしらしい。しかし、ほんとうは彼も奥田民夫もギター狂だと思う)。そして[22][25]でギター・キッズの最高の戯れが炸裂する。ベタだけれど、この二曲はやっぱりよい曲だ。ベリベリは前にも書いたけれどなんど聴いても涙がでるね。とくにシャンプーのくだり。

あとあれだな、おれが大声であんなこと言うと、まわりから総スカンなんだろうけれど、斉藤なら許されるんだよな。女子は点数甘すぎ。

◎The Drums of War

2008-11-30 12:30:59 | ◎聴


久しぶりに即レジの「BRUTUS」を見ながら、動画の世界を徘徊する。

ジャクソン・ブラウンのライブのレビューで、ベタ褒めした“Drums of War”とはこんな曲。アンプラグドだけれども、そこそこ迫力はある。これにバックのコーラスなどがかさなっていくと、かなり勢いがでてくる。
●The Drums of War by Jackson Browne


重なるボーカリストはこんな感じ。
●Jackson Browne Live - Lives in the Balance Mar, 17, 2007


ちなみに、バンドによる最近の“Lives in the Balance”といえば、これ。もちろん、今回のツアーには、デヴィッド・リンドレーは参加していないが、アレンジとしてはおおむねこの方向。
●Jackson Browne - Lives In The Balance

#
そんなふうにジャクソンの映像をみていると、当然ながらブルース・スプリングスティーンと絡んでくる。
●Bruce Springsteen & Jackson Browne - The Promised Land


●Bruce Springsteen & Jackson Browne - Running On Empty


●Bruce Springsteen & Jackson Browne - Racing In The Street


そのボスが、オバマの選挙で披露し、1月の新譜に入るのは
●Bruce Springsteen - Working On A Dream - High Quality

#
ついでに関連動画、ボブ・シーガーも発見。久しぶりに聴いたけれど、これはそうとうな名曲だな。
●Bob Seger - Against the Wind


●Bob Seger Against the Wind Live Kansas City, MO 12/2/06

◎www.mtvmusic.com

2008-11-03 13:37:18 | ◎聴
すばらしき産業ロックの世界へようこそ。

Coldplay ≫ Viva La Vida (Live)
Pink Floyd ≫ Another Brick In The Wall
Dire Straits ≫ Money For Nothing
Dire Straits ≫ Sultans Of Swing
Queen ≫ Under Pressure
Queen ≫ Another One Bites The Dust
Jackson Browne ≫ Tender Is The Night
Jackson Browne ≫ The Pretender
Jackson Browne ≫ Lawyers In Love
Jackson Browne ≫ For America
Neil Young ≫ My My, Hey Hey (Out of the Blue)
Bruce Springsteen ≫ Waiting On A Sunny Day
Bruce Springsteen ≫ Fire
Bruce Springsteen ≫ Radio Nowhere
Cheap Trick ≫ Dream Police
The Police ≫ Spirits In The Material World
The Police ≫ Every Little Thing She Does Is Magic
The Police ≫ Invisible Sun
Bryan Adams ≫ Cuts Like a Knife
Journey ≫ Separate Ways (Worlds Apart)
Eurythmics ≫ Sweet Dreams (Are Made Of This)
Eurythmics ≫ Here Comes The Rain Again
Michael Jackson ≫ Bad
Prince ≫ When Doves Cry
John Mellencamp ≫ Paper in Fire
Blondie ≫ Call Me
Nirvana ≫ The Man Who Sold the World (Live)
Nirvana ≫ Smells Like Teen Spirit
Beck ≫ Orphans
Beck ≫ Gamma Ray
Genesis ≫ That's All
Phil Collins ≫ Easy Lover
Coldplay ≫ Viva La Vida

◎増田俊郎の2枚。

2008-10-09 00:31:46 | ◎聴

…なんて言っても、関西の音楽の世界にいない限りは、ほとんどの人が知らないだろうな。ウィキもめちゃくちゃしょぼい。「ラジオパーソナリティ」とかになってる。しかし、いまではほとんど曲を作っていないとしても、いちおうミュージシャンである。つーか、最近のことをほとんど知らないので、けっこう意欲的にライブ活動などはやっているかもしれない(書きながら調べたところ、石田長生とか村田和人たちと定期的にライブを行っている。90年代もしっかりと活動を続け、2000年に入って、いくつかのアルバムも出しているようだ)。

じつは、おれがいわゆるロックといわれるジャンルのライブに初めて行ったのがこの増田敏郎で、それは中学生のときで、たぶん彼のメジャーデビューに合わせたファーストライブのようなものだった。友だちの知り合いの知り合いからまわってきた席を埋めるためのチケットだったような気がする。もちろん、そのときはようやくカシオペアとかQUEENとかPOLICEとか聴き出したころだったので、この増田敏郎という男には、ほとんど関心はなく、まあ、町のコミュニティのなかでちょっと歌のうまい兄ちゃんが歌手としてデビューするのか、といった程度の認識しかなく、だからライブじたいもきっと退屈に感じていたはずだ。中学生だからしようがない。かれこれ30年ぐらい前の話。

デビューアルバムが『GOOD BYE』。2枚目は『CROSS BREED』。結局、彼は第一期としてはこの2枚の作品しか残さなかった。ライブにいった誼で、友人からなかば無理やりのような感じで借りたはいいが、高校生ぐらいの間は、そんなに熱心に聴くことはなかった。やがて、大学生になり、もてあますヒマの間にただ流して聴いていると、いくつかの曲がひっかかってきた。最初は、アメリカにあこがれた日本のロックミュージックの典型だよ、と思っていたが、そうではないことがわかってきた。フォークでもニューミュジックでもない、紛れもない日本のロック。ボーカルにも味がある。夜中にまわりの音を遮って聴いてみれば、シンプルなアレンジが腹に響いた。聴き始めて5年後、ようやく増田俊郎に覚めた。

しかし、その後はといえば、手元にはカセットテープしかなかったことが災いし、聞き込みすぎてテープが伸び、切れてしまってからは、確かに残念ではあったけれども、ちょうど仕事が忙しくなっていたこともあって(同時にアナログからCDに移行するような面倒な時期でもあったので)、とりたてて新しい音源を探し回るというようなアクションはとらなかった。そもそも、音楽を聴くということすら忘れていた失われた10年に入っていた。

空白は20年。ある日、まったく突然に彼のことを思い出した。とくに彼の歌を聴いたというわけではない。メディアで見かけたというわけでもない。itunesの引越し作業をやりながら(かなり難作業!)、昔聞いていたアナログで、ほかに入れるべきものはなんかないかなあ、と考えているときに、前触れもなく、ああ、と思い出した。

「昼も夜も」、「枯葉の街」、「BROTHER ON A WATER」、そして「光る風」、「TAKE ME TO THE NIGHT」、「SEE YOU AGAIN 」といった曲が、無性に聴きたくなった。もう、ほとんどサビのところしか記憶にないが、当時を思い出すには、それだけで充分だ。まあ、でもきっと廃盤だろう、というのは杞憂で、紙ジャケCDとしてアマゾンでも在庫が確保されていた。むしろ、音の記憶があまりにも美化されすぎているのではないか、という不安の方が大きかった。良いほうに転ぶ記憶。記憶というのは、だいたいにおいてそんなふうにできている。だから、衝動的な1-Clickは、なんとかかわした。よし、今度タワレコに行って、もし、そこに2枚揃っていたら買おうと約束し、決心を先送る。

残念ながら、渋谷の店にあったのは1枚だけ。チキンジョージでのLIVE盤なんてのもあったので、これとあわせて2枚、といった都合の良い解釈も胸中をよぎるが、いったんは約束をたっとぶ(もし、その1枚が『CROSS BREED』ならそこで約束を反故にしていた?)。じつのところ、そんなふうにあっさり見送れたのは、ためらいがあったからかもしれない。そのあと、HMVやTSUTAYやBOOK-OFFなんかでも、とうぜん見つけられなかったのだけれど、ひょっとすると見つからないことを願っていたから見つからなかったのかもしれない。
しかし、残念ことに(?)、茶屋町のタワレコで、しっかりと揃った2枚を発見することになる。もはや約束を破る理由はない。保険として『さよならリグレット』とあわせて(なんの保険や?)購入する。

どうやら記憶は間違っていなかった。すべての曲がストンと落ちてきた。ふつうに良い曲だ。「RAINY MORNING」、「TWILIGHT」、「17の頃…」、「行き止りへの道」なんて曲もしっかり思い出した。もちろん、詩なんかは青くてイタいところもないとはいえない。でも、浜田省吾だってB'zだってだいたいこんなもんだ。補って余りある曲と演奏を讃えたい。凡庸なロックが好きなあなたなら、きっとうなずいてもらえるはずだ。サザンロック風、80年代風とか、きっといろんな言われようがあるかもしれないが、「BROTHER ON A WATER」なんかを聴いてみると増田俊郎のオリジナリティがわかる。

ちょっと大げさすぎないか、って?たしかに、増田俊郎は、あまりにもベタすぎる。きっと買いかぶりすぎだ。しかし、音楽とは、音楽の記憶とはそういうもんじゃないか。1000枚聴いたって、2000枚聴いたって、「いい物はいい、でも悪いものは悪い」、としかいえないもんな。
#
■人気もあるし、じゅうぶん現役っぽい。
http://musicave.exblog.jp/5188599/

■「BROTHER ON A WATER」は、このライブならスタジオのほうがいいかもしれない。
http://jp.youtube.com/watch?v=dbYNxBidwJo

◎『TIME the CONQUEROR』

2008-10-05 00:59:31 | ◎聴

Jackson Browneのアルバムは、いわゆる地味目な曲が多いため、一度聴いただけだとなかなか、その良し悪しのようなものが判断できないんだけれど、3度目くらいでだいたい見えてくるかどうか、といった感じだ。もっとひどい場合は、聴き始めて1年後ぐらいに良さがわかってくるなんてのもある。たとえば『LAWYERS IN LOVE』なんかはポップで、しかしじつはしょぼい曲の多さにごまかされて、始めのうちは、いいんじゃない?と、聴きこんでみるが、そのうちアルバムの出だしに固まっているポップな曲のそのしょぼさに気づいてだんだんと聴かなくなって、1年ぐらいたって久し振りに聴いてみて、B面(つまり後半)の曲に圧倒されたなんてこともあった。

『TIME the CONQUEROR』も、もうほとんとが静謐で、キャッチーじゃない曲のように聴けてしまうので2度ぐらいであきらめてしまうと、やっぱり昔のJacksonがいいなあなんてことになってしまいそうなのだが、このたびはそんな愚行に陥ることもなく、この作品群の良さに気づくことができた。6年も待っただけあって、これまでのJBがJBをうまい形で換骨奪胎できたすばらしい曲がそろっている。妙にJBがJBにこだわっていた前作の『The Naked Ride Home』は、それゆえに無理がありどうも好きになれなかったのだが、『TIME the CONQUEROR』には、それこそ『LAWYERS IN LOVE』のB面にも似た感動がある。そしてそれは、"Sky Blue And Black"に出会ったときの感じに近い。あきらめずに、Jackson Browneを聴き続けてよかったと思う。

『TIME the CONQUEROR』は、曲づくりにおいて、昔の何かを目指して無理をしようとしていないところがいいんじゃないだろうか。詩においては、あいかわらずポリティカルな話も多いんだけれど、それすらキンキンになっているようには見えない。全体としては、『I'm Alive』の方向にいったん戻ってそこからなにか新しいエッセンスを加えて突き詰めたような印象がある。Jackson Browneを聴いたことがない人にとってみれば、どれも一緒じゃんということになるかもしれないが、毎回なにかを期待しながら新譜をまっているような人間にとってはかなり新鮮に思える部分がある。女性コーラスを前面に押し出していることもあり、60歳になってまた初めて新しいJBを作り上げられたように思える。

たとえば、10分近くある"Where Were You?"なんかは、「ハリケーンとかなんやかやで、みんながこんなたいへんなことになっているときに、あんたどこにおったんや?」てなことを誰かさんに問い詰めるという点では、"Lives in the Valance"のように歌い継がれる曲になりそうだ。同じくポリティカルなメッセージをもつ"The Drums Of War"のスタティックな迫力はじわじわ効いてくる。"The Arms Of Night"、"Far From The Arms Of Hunger"など、静かな曲に、ずっと聴き続けたいと思えるような味がある(いまあげた曲のほとんどがバンドのメンバーとの共作、というのは彼自身の曲作り能力という点では少し残念だけれど)。

ところで、邦訳は『時の征者』。「しちょうしゃ」って読むのかな。それとも「せいじゃ」?どう考えても「征者」なんて言葉はないような気がするんだけど。もうこんなところに無駄なコストをかけるのはやめにしないか。確かにCONQUERORというのはちょっと発音しにくいので、称呼として必要なのはわからないでもないけどれど。

◎Time The Conqueror

2008-08-20 21:27:57 | ◎聴


Time The Conqueror is Jackson Browne’s first studio release in 6 years. Recorded with his longtime band, Kevin McCormick (bass), Mark Goldenberg (guitars), Mauricio “Fritz” Lewak (drums) and Jeff Young (keyboards and backing vocals), this album adds two members to the band, Chavonne Morris and Alethea Mills, two vocalists Jackson met in early 2001 while working with Washington Preparatory High School located in SouthCentral Los Angeles.

Track Listing:
1. Time The Conqueror
2. Off Of Wonderland
3. The Drums Of War
4. The Arms Of Night
5. Where Were You
6. Going Down To Cuba
7. Giving That Heaven Away
8. Live Nude Cabaret
9. Just Say Yeah
10. Far From The Arms Of Hunger
#
TIME THE CONQUEROR WORLD TOUR 2008-2009

20 November, 2008
Jackson Browne
Geijutsu Hall
Osaka, JAPAN
Tickets: On Sale TBD

22 November, 2008
Jackson Browne
Hitomi Memorial Hall
Tokyo, JAPAN
Tickets: On Sale TBD

24 November, 2008
Jackson Browne
Koseinenkin Kaikan
Tokyo, JAPAN
Tickets: On Sale TBD

ジャクソン・ブラウンは90年代後半から以来、オリジナルのスタジオアルバムを2枚しか作っていないが、ぶっちゃけたところ、それらは以前のものと比べると大きく見劣りする。いわゆる名曲の類もあまり生産されていない。私見では、"The Barricades Of Heaven"、"Rebel Jesus"、"The Next Voice You Hear"といった感じ、もう少し譲って、"About My Imagination"といったろころか。12年の間に3~4曲ではあまりにも少なすぎる。一方で、その間に出された2枚のアコースティックライブアルバム(Jackson Browne Solo Acoustic Vol. 1&2)さすがに素晴らしく、美しく、ジャクソンらしいアットホームな仕上がりになっていて、パフォーマーとしての衰えはいっさい感じさせない。

そして、6年ぶりのスタジオアルバムとバンドとしては5年ぶりのツアー。もちろん期待は大きい。直近で言えば、あいかわらず"Sky Blue And Black"のような曲が聴けるよう望みたいし、たまには、"The Load Out~stay"ではないアンコール、うーん"Hold On Hold Out"とか?を聴いてみたいと思う次第である。地の利を生かして、11月22日、24日の2つのステージに行くって考え方もあるな。ところで、Geijutsu Hallってのは厚生年金の芸術ホールのこと?いまのところプロモーターは未定か。

◎『THE POLICE LIVE IN JAPAN』。

2008-02-25 00:46:09 | ◎聴
[01]『THE POLICE LIVE IN JAPAN』 presented by WOWOW
[02]『ポリス インサイド・アウト』
[02]『Philharmonic or die 』くるり

ポリスのライブは当日券もあったようなので、ぎりぎりまで迷っていたけれど、結局は、いかなかった。高校生のころからずっと、どちらかというと熱狂的なファンだし、パフォーマンスもテクニックもすばらしいということはわかっているのだけれど、いくつかの理由が、なにがなんでも、といったような気を殺いだ。

ひとつは、アリーナライブということだろう。これはまったくの私見で、おそらく激烈な異論があると思われるが、あそこまで大きい会場だと、さすがのポリスといえども3ピースの限界があるよなあという見方だ。80年代にポリスが来日したときは、フェスとか中野サンプラザといったホールで、当時もライブには行かなかったけれど、たしか渋谷公会堂だかのエアチェック音源をもっていて、それを何十回と一心に聞いていたし、それ以降もきっとブートに近いと思うけれど『Live Montreal 83』といったようなCDを入手しては聞き込んだ。いずれも大きくはないホールだし、なにより録音したものを聞いているわけだからそれなりに密度が高く、ベーシックな部分ではアルバムの音を再現し、かつライヴならではのアレンジもあり、一度はライブを観て聴いてみたい、と思っていた。しかし『GHOST IN THE MACHINE』あたりで強大になりすぎたポリスのパフォーマンスは、ライブハウスやホールにおさまりきるものではなく、アリーナはおろかスタジアムにまで広がっていった。その結果、繊細さや工夫や悪戯や敵対心のようなものを受け取るのが難しくなってきたなあ、という気がしてきた。たとえば、手元にあるDVD『LIVE GHOST IN THE MACHINE』を観ているとその思いは強くなる。『Synchronicity』の少し手前なので、まだまだ、彼らの悪童さはかいまみることができるんだけれど、パフォーマンスについては、野外ステージということもあってどうも拡散的だ。起用しているホーンセクションともうまく絡めていない。

そして、同時に、これがふたつめの理由になるが、『Outlandos d'Amour 』以外のポリスの曲というのはじつはライブ向きではないんじゃないか?もしくはライブ上のうまいアレンジが難しいんじゃないか?という私見だ。私見だけれど、いくつかの例をあげてみると、まあそういう気がしないでもない、とうなずいてくれる人も多いかもしれない。“Message in a Bottle”、“Spirits in the Material World ”、“Every Little Thing She Does Is Magic”、“Don't Stand So Close to Me”、“Synchronicity II ”などは明らかにスタジオ録音の原曲のほうがのれる。そう思わないだろうか。

それにちなんで、ライブだからといって特別なアレンジを施さない、といったことが第3の理由になるかもしれない。それがいいんじゃないか、と烈火のごとく怒られそうだけれど、ライブを体感していないとはいえ、先に書いたように、ほんとうに様々な形でライブ音源を聴いたり、映像をみたりしていると、その変わり映えのなさに少し飽きてくる。しかも、彼らは、“ポリスとして”1983年以来いっさいの進化をしていない。体験しないとまったくの意味はない、ということはくれぐれも承知のうえで、それでもその新基軸への期待感のなさから「まあ別に出向かなくてもいいか」となる。

そして、最後の理由は、スティングだろう。彼はあまりにもスティングになりすぎた。偉大なスティングになりすぎた。もはやTHE POLICEのスティングではない。もちろんエース・ファイスのスティングでもない。これは以前にも書いたが、彼は基本的には「The Dream of Blue Turtles」をやりたかったわけで、もちろん、それ以降も完成度の高い音楽活動を続けているわけだが、一度飽きてしまった、音楽に戻ることはない。たとえば、「every breath you take」は、『All This Time』の「every breath you take」以外のなにものではない。

といったようなことが、ポリスのライブにこだわらなかった理由なんだけれど、べつにポリスが嫌いになったわけではないので、wowowの放送をたのしみに待つことになる。

そしてオープニング。「Message In A Bottle」のイントロが流れ出したとたん、いやもっというとスチュワートが銅鑼をぶったたいた瞬間に、これまで書いてきたような御託はいっさい吹き飛ぶ。「Synchronicity II」に続き、それが、たとえ明らかにスタジオ音源のほうがよいとわかっているとしても、ああやっぱり行けばよかった、と嘆くことになる。「Voices Inside My Head」は、明らかにあのころのポリスだし、スティング風アレンジの「When The World Is Running Down」も大いに許せる。しかし、いっぽうで、聴きこみすぎて新鮮さのない「Don't Stand So Close To Me」や、明らかに音の薄い「Every Little Thing She Does Is Magic」などのくだりでは、うーん、やはり映像でじゅうぶんかなという弛緩を起こしてしまう。起こしてしまうが、そんなのはほんのつかの間の錯覚にすぎない。「Invisible Sun」「Can't Stand Losing You/Reggatta De Blanc」「Roxanne」なんかが続くと、一切の弛緩が無に帰す。やっぱり、ポリスは凄い、ライブもすばらしい、と。残念ながら、再アンコールの「Next to you」が放送ではカットされてしまったが、もしそこまで流れていたら、慙愧に耐えられず立ち直れなかっただろう。しかし、ほんとうにおしい冥土の土産を逸した。

01. Message In A Bottle
02. Synchronicity II
03. Walking On The Moon
04. Voices Inside My Head / When The World Is Running Down
05. Don't Stand So Close To Me
06. Driven To Tears
07. Hole In My Life
08. Every Little Thing She Does Is Magic
09. Wrapped Around Your Finger
10. De Do Do Do, De Da Da Da
11. Invisible Sun
12. Can't Stand Losing You/Reggatta De Blanc
13. Roxanne
(Encore 1)
14. King Of Pain
15. So Lonely
16. Every Breath You Take
(再アンコールの“Next To You”は放映せず)

おしむらくは、海外のセットリストより曲がずいぶん少なかったということだろうか。
日本で演らなかった"Spirits in the Material World"、"Truth Hits Everybody"、"Murder by Numbers"なんてのはぜひ聴きたい曲だし、ほんとうのところは、以下の個人ベストにある★のような曲のパフォーマンスが聴きたいところだけれど。

★Fallout ●Next To You ●Can't Stand Losing You ★Masoko Tanga ●Message In A Bottle ●Regatta De Blanc ★It's Alright For You●Bring On The Night★No Time This Time ●Canary In A Coalmine ★Behind My Camel ★Man In A Suitcase ●Shadows In The Rain ★The Other Way Of Stopping ●Spirits In The Material World ●Every Little Thing She Does Is Magic ●Invisible Sun ★ΩMegaman ★Secret Journey ★Darkness ●Synchronicity II ●King Of Pain ●Tea In The Sahara ●Murder By Numbers ●I Burn For You

ということで長くなってしまったので、『ポリス インサイト・アウト』と同じライブのくるりの『Philharmonic or die』(なんちゅう題名や)については、また別の機会に。もっと正確に言うとふたつの「ANARCHY IN THE MUSIK」については、また別の機会に。

◎Magic/Bruce Springsteen

2007-11-23 13:35:40 | ◎聴
数日前、ちょっとした戯言として、ずっと聞いておきたい50曲というのを選んでみたけれど、ことブルース・スプリングスティーンの項目に関しては、新しいアルバムがでるたびにまったく無効になる。いまTUTAYAなんかに行くと、堂々と「ボス復活」といった、Point Of Purchaseの広告が飾ってあって、これが日本における一般的なブルース・スプリングスティーンの認識、つまりは『Born in the USA』以来のヒットの予感といったことなのだろうけれど、ブルースは『USA』以降も、比較的コンスタントに、しかもさまざまなスタイルで楽曲を提供し続けてきて、その多くがそれまでの曲を超えている、という点では「復活」といわれてもかなり違和感がある。

ブルースの場合、なにかよくわからないタイミングでレコーディングだけはされていて発表されていないような曲や、ライブで先行して演奏される曲、ライブだけで演奏される曲といったものもたっぷりあるわけだが、そういったものは少し横に置き、新しくスタジオでレコーディングされアルバムという形で発表されたものだけに絞ってみたとしても、リズムとメロディと詞は、いつも新しく、よくここまで、それまでなかった新しさのバリエーションを引き出してくるものだ、と感心する。

身びいきであることは否定できない。しかし、ぼくが昔からかなり聞き込んでいてオール・タイム・ベストにあたるようなアーティストと比べてみてもその差はあきらかに思える。たとえば、ジャクソン・ブラウンなんかは、新譜のペースが格段に落ちてきているし、もちろん最近も(といっても90年代)、『Sky Blue And Black』とか『Barricades of Heaven』といった珠玉を打ち出しているとはいえ、そういった曲は、1枚のアルバムに1、2曲あるかいないに過ぎない。だから、彼の3曲を選ぶときはさほど悩むことなく昔の引き出しからひっぱりだしてくることになる。また最近ライブをみて、そのパフォーマンスとエンターテインメント性について確信を深めながらもあらためて見直した浜田省吾にしても、曲はまだしも、詞については、ダメぶりを発揮していて、あの『愛の世代の前に』や『パーキングメーターに気をつけろ』の頃の含意の才能は、そのタイトリングも含め完全に枯渇している。これらをみたとき58歳にしてなお、それまで自分がつくったことのなかったサウンド、思索の深い言葉を提供し続けているブルース・ブルーススプリングスティーンのRock & Rollマインド&スキルはすばらしいといわざるをえない。

つまり、新譜『Magic』は、そういったことを、より端的に表現したアルバムだということだ。確かに、今どき、11曲(+1曲)という収録曲の少なさは、数だけみると物足りなさはある。しかし、きっとブルースのことだから、この倍以上の曲がレコーディングされていて、ファンからみれば、それは収録曲とは寸分違わぬ完成度の高いものに違いないのだろうけれど、まるで陶芸家がほんのわずかな瑕疵により焼きあがった作品を破壊してしまうように、数々の名作をこのアルバムから外したのだろう。だから、残った11曲(+1曲)は、すべて、いっさいの隙もない。ぼくたちとしては、外れた曲が今後『Tracks Ⅱ』として日の目を見る日を待ち望むわけだが、まずは『Magic』のコンセプトとして厳選された曲をとことんまで愉しみたい。というか、愉しむ以外になにすればいい?

もっとも、全世界のファンがすべからくこの新しいインシデントを喜んでいるわけではなく、まあ、俺こそがボス党党首といわんばかりの人のなかには、まったくダメなんて言っている人もいるようだけれど、そういう人も、もう少し聞き込んでみれば、にじみ出る良さを感じることができるかもしれない。だいたい前作『The Rising』にしてもそうだったじゃないか。

01. Radio Nowhere
02. You'll Be Comin' Down
03. Livin' in the Future
04. Your Own Worst Enemy
05. Gypsy Biker
06. Girls in Their Summer Clothes
07. I'll Work for Your Love
08. Magic
09. Last to Die
10. Long Walk Home
11. Devil's Arcade
(12.Terry's Song)

「Radio Nowhere」はきわめてキャッチーだ。これぞ、ブルース・スプリングスティーンらしい曲、と思えてしまうのだが、じつは過去の曲のどれを繰ってもみても、これに似た曲はない。「My Love Will Not Let You Down」か?

This is radio nowhere, is there anybody alive out there?
This is radio nowhere, is there anybody alive out there?
Is there anybody alive out there?
I just want to feel some rhythm
I just want to feel some rhythm

まあもうこれ以上ないというくらいかっこいい詞だ。ライブのオープニングで、いつものように"Is there anybody alive out there?"なんてシャウトしたあと、この曲が始まったら、恥ずかしいけれどもらしてしてしまうかもしれない。言うまでもなくマックスのタイトなドラムの真骨頂だ。そういう意味では、ブルースらしい曲というより、Eストリート・バンドらしい曲ということになるかもしれない。ただ、この「ブルースらしい、誰かに似た、らしくなさ(ややこしい言い方でごめん)」は、きっと賛否がわかれることだろうし、そのキャッチーさゆえ、最終的には『Born in the USA』における「Born in the USA」になっていく可能性もある。実際にぼくも、続く「You'll Be Comin' Down」からスタートすることが多くなってきた。でも、どうしようもなく、聴きたくなるときがあるんだよなあ。

「You'll Be Comin' Down」は、一転してライトな印象をもつ曲だが、このビッグサウンドをぼくはかなり好意的に迎えたい。語られているのは「あんたもいつか落ちぶれるよ」ないしは「もと自分がいたところに落ちてくる」みたいな話だから、あまり手放しには喜んでいられないのだが、それでも何か力をつけたいときにテーマを繰り返し口ずさみたい気分になる。ところで、『Magic』には、ほかにもそういった、重く深い含意があって、けっしてストレートではない詞が多い。いろいろと推測を立てて、あれこれ考えてみなければ本意がわかりにくいというのは確かなのだが、具体的な事象から、普遍的で生きていくうえで重要な概念を想起させ、オーディエンスの胸にしっかりやきつける詩人としての手腕にいっそうの磨きがかかったといえる。このあたりは、最近のブルースらしいし、テーマといい選び抜かれたワードといい、たとえ言語圏の違う人間でも立ち止まらせてしまう。

ほんとうは一曲ごとに、ていねいに考えを費やし感想を書いていきたいのだけれど、どうにも言葉が追いつかない。以下、特筆すべき点を、キーワード、つぶやき風に。

「Livin' in the Future」:きっとライブを重ねるごとに、「Darlington」や「Sunny Day」、場合によっては「Tenth Avenue Freeze Out」みたいに成長していくことになるんだろうなあ。
「Your Own Worst Enemy」:このアルバムのなかでベストだと思っている。サウンドはストリングスが効いていて、ブルースのなかでも新しいジャンルに属する。エンディングの「Your flag it flew so high It drifted into the sky」の部分への流れ方は、詞も含めて感動的ですらある。
「Girls in Their Summer Clothes」:厚みのある、フィル・スペクター風な音作りが濃厚に「復活」というか「出現」してきたイメージ。流れるような若い歌声が効いている。これも選びたい良い曲。
「I'll Work for Your Love」:もし、3曲選ぶとすれば最後の1曲はこれ。なんの惑いもないシンプルで元気のでる曲(詞には多少、宗教的な含みがあるようだが)。
「Magic」:不気味で地味なフォーク風だけれど、じつはシャープなかっこいい曲。シーガー・セッションズ・バンドの音も起用しているようで、この数年間の活動がうまい具合に、ブルースの新しい血肉となった。
「Last to Die」:十八番のマイナーロック。もし、これがなければ、アルバムがかなり物足りなくなる。「Further On (Up the Road)」とか「Gloria's Eyes」もっというと「Atlantic City」なんかが、ぼくがブルースから離れられない大きな理由でもある。
「Devil's Arcade」最近のブルースのバラードの新しいジャンルのひとつであり、迫るような音作りは見事。逆に、最近あまりみかけないのが、「Racing In The Street」「Streets Of Philadelphia」「Back In Your Arms」のような、「ブルース」ならではのバラードで、欲をいえば、こちらの方向も久しぶりに聴きたいところではある。

ワールドツアーの第2期の日程も発表されたようだけれど、残念ながらまだ日本には至らない。FM802の来日嘆願署名の伸びもいまいちだ。11月23日現在、1317人。もし城ホールなんかでライブやったら、確実にアリーナじゃないか。あ、「大阪でライブしてほしい」署名か。しかし、それでもボスファンはこんなに少なかったのだろうか。

◎しばらく修行に出てもらいます。あ、ipod持っていってもいいよ。

2007-11-03 17:44:56 | ◎聴
壊れてるから50曲しか入らないけれどね。1アーティスト3曲まで?それ許してもらえたからといってもなあ。

【01】「I Know There's An Answer」The Beach Boys(*1)
【02】「Day in the Life」The Beatles
【03】「Lonesome Tears」Beck
【04】「Nights on Broadway」The Bee Gees
【05】「Everybody Loves You Now」Billy Joel(*2)
【06】「Like A Rolling Stone」Bob Dylan
【07】「Land of Hope and Dreams」Bruce Springsteen(*3)
【08】「Tenth Avenue Freeze-Out」Bruce Springsteen(*4)
【09】「Atlantic City」Bruce Springsteen
【10】「Back To You」Bryan Adams
【11】「Desperado」Carpenters
【12】「陽の照りながら雨の降る」Cocoo
【13】「Take Me」CASIOPEA(*5)
【14】「A Rush of Blood to the Head」Coldplay
【15】「Until I Believe in My Soul」Dexy's Midnight Runners
【16】「Touch Me」The Doors
【17】「Break On Through」The Doors
【18】「Yours Truly, 2095」Electric Light Orchestra
【19】「The Pretender」Jackson Browne
【20】「Sky Blue And Black」Jackson Browne
【21】「Say It Isn't True」Jackson Browne
【22】「観覧車’82」KAI FIVE
【23】「Mind Games」John Lennon
【24】「Authority Song」John Mellencamp
【25】「Human Wheels」John Mellencamp
【26】「MILESTONES」Miles Davis(*6)
【27】「WALKIN'」Miles Davis(*7)
【28】「あんまり覚えてないや」Mr. Children
【29】「Worlds end」Mr. Children
【30】「Smells Like Teen Sprits」NIRVANA
【31】「Acquiesce」OASIS
【32】「Go Let It Out !」OASIS
【33】「The Masterplan」OASIS
【34】「the final cut」Pink Floyd
【35】「Message In A Bottle」The Police(*8)
【36】「No Time This Time」The Police
【37】「Omegaman」The Police
【38】「A Whiter Shade Of Pale」Procol Harum
【39】「Dragon Attack」QUEEN
【40】「Don't Stop Me Now」QUEEN
【41】「Under Pressure」David Bowie/Queen
【42】「Miss You」The Rolling Stones
【43】「My Life Is Dedicated To My Music」SHOGUN
【44】「A Hazy Shade Of Winter」Simon & Garfunkel
【45】「Come on you」SINGER SONGER
【46】「Boat On The River」Styx
【47】「New Year's Day」U2
【48】「Discotheque」U2
【49】「Citizens of Silence」Yellow Magic Orchestra
【50】「グッドモーニング」くるり
【51】「How To Go」くるり(*9)
【52】「からっぽのブルース」Southern All Stars
【53】「cream soda」Supercar
【54】「Electric Sea」Supercar
【55】「夜を駆ける」Spitz
【56】「哀しみのプリズナー」桑田佳祐
【57】「質量とエネルギーの等価性」桑田佳祐
【58】「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」斉藤和義
【59】「歌うたいのバラッド」斉藤和義
【60】「アゲハ」斉藤和義
【61】「誰のせいでもない雨が」中島みゆき
【62】「夜曲」中島みゆき
【63】「家路」浜田省吾(*10)
【64】「終わりなき疾走」浜田省吾
【65】「ON THT ROAD」浜田省吾(*11)

やったー!65曲もコピーできたよ。って、そんな問題じゃないな。そうとう無理があると思うんですけれど、そうまでしていかないといけない修行なんですかね。


(*1)「Hang On To Your Ego」でもいいです。
(*2)『Songs in the Attic』収録
(*3,4)『Live in New York』収録
(*5)『SUPER FLIGHT』収録
(*6)『MILES DAVIS IN EUROPE』収録
(*7)『MILESTONES』収録
(*8)東京or大阪ドームどうだろう。現役時代なら確実に獲りに動いたけれど。あくまで3ピースなので、たとえば、DVDの『LIVE GHOST IN THE MACHINE』なんかを見ていると大きな会場だと少しつらいんだよな。というか3ピースで演るのかな。プレミアム席30,000円お土産付って、升席じゃないんだから。
(*9)『ベスト・オブ・くるり Tower of Music Lover』収録
(*10)『The Best of Shogo Hamada vol.2』収録
(*11)『On The Road 2001』収録

◎シャッフル日記。

2007-08-20 22:05:57 | ◎聴
またまた新幹線が遅れたので、約1時間ほど遅延した道中でうんざりしながら聞いていたシャッフルの結果を列挙してみる。Eli,Eli,Lema Sabachthani?(*1)まあなんというか雑多な人生を救ってくれるのは雑多な音楽だな。やっぱり。

[01]Foreword◆Linkin Park (*2)
[02]Don't Stay◆Linkin Park
[03]Somewhere I Belong◆Linkin Park
[04]Lying From You◆Linkin Park
[05]Hit The Floor◆Linkin Park
[06]Easier To Run◆Linkin Park
[07]Faint◆Linkin Park
[08]Figure.09◆Linkin Park
[09]Breaking The Habit◆Linkin Park
[10]From The Inside◆Linkin Park
[11]Nobody's Listening◆Linkin Park
[12]Session◆Linkin Park
[13]Numb◆Linkin Park
[14]Tomorrow never knows◆Mr.Children (*3)
[15]Contact◆The Police
[16]Until I Believe in My Soul◆Dexy's Midnight Runners
[17]The Diamond Sea◆Sonic Youth
[18]Imgine◆John Lennon
[19]ミレニアム◆くるり
[20]I BELIEVE IN MIRACLES◆Hi-Rise
[21]Cecillia◆Simon & Garfunkel
[22]The Promised Land◆Bruce Springsteen (*4)
[23]INTERMISSION◆スーパーカー
[24]Track for the Japanese Typical Foods called"Karaage" & "Soba"~キラーストリート(Reprise)◆サザンオールスターズ
[25]Spice Up Your Life◆Spice Girls
[26]Get Back To That Good Things◆Casiopea
[27]裸のままで◆スピッツ
[28]ANTENNA◆スーパーカー
[29]Behind The Mask◆Yellow Magic Orchestra
[30]Candy◆Jackson Browne
[31]Intro The Pretender◆Jackson Browne
[32]栞のテーマ◆サザンオールスターズ
[33]TWO MOON JUNCTION (NIGHT TRIPPER REPRISE)◆甲斐よしひろ
[34]If Not For You◆Bob Dylan
[35]Twentieth Century Fox◆38 Special
[36]Melody Fair◆The BeeGees
[37]Coutious Man◆Bruce Springsteen
[38]UNIVERSE◆スーパーカー
[39]Jacob's Ladder◆Bruce Springsteen
[40]Hey Now What You Doing◆New Order
[41]Part Of The Queue◆Oasis
[42]Back Seat Betty◆Miles Davis
[43]鳥になって◆中島みゆき
[44]青い空◆くるり
[45]In The Garden◆Cocco(*5)
[46]何と言う◆奥田民夫
[47]A Rich Man's Girl◆浜田省吾(*6)
[48]Stop Crying Your Hear Out◆Oasis
[49]Strange Days◆The Doors
[50]Every Little Thing She Does Is Magic◆The Police
[51]You Can Look◆Bruce Springsteen
[52]Back Door Man◆The Doors
[53]cream soda◆スーパーカー
[54]グッドモーニングサニーデイ◆斉藤和義
[55]Darkness On The Edge Of Town◆Bruce Springsteen
[56]Radio Song◆R.E.M.
[57]Jackson Cage◆Bruce Springsteen
[58]Invincible◆Muse
[59]Eyes of Mind◆Casiopea
[60]約束の十二月◆斉藤和義
[61]Dolls◆Primal Scream
[62]Avalanch◆New Order
[63]ハイウェイ◆くるり
[64]太陽は罪な奴◆サザンオールスターズ
[65]not now john◆Pink Floyd
[66]観覧車’82◆KAI FIVE
[67]Krafty (Japanese Version)◆New Order
[68]蒼茫◆山下達郎
[69]SynchronicityⅠ◆The Police
[70]ある晴れた日の夏の日の午後◆浜田省吾
[71]Lonely Man◆SHOGUN
[72]Politik(Live)◆Coldplay
[73]City◆Primal Scream
[74]19のままさ◆浜田省吾
[75]Minus◆Beck
[76]JUMP◆サザンオールスターズ
[77]古いラジカセ◆斉藤和義
[78]One Of The Lonely Ones◆38 Special (*7)

(*1)『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』。このどうしようもない映画について思うところが熟したら何か書いてみる。もはや、各界で充満し切ったノイズを一切無視して書ける意見はないだろうけれど、それでもなんかひとこと言っておきたい映画である。
(*2)シャッフルといいつつ、GOをかける前に、休暇明け出勤の景気づけとして『Meteora』を。無理やり昂ぶらせてみる。なんか漲ったかな?いろんな人がとやかくいおうと、やっぱり『Minutes to Midnight』は聴いておいたほうがよいような気がしてきた。
(*3)9月にライブにいきます。しかし、うまい具合に、チケットがとれたもんだ。本年度確率大賞受賞。しかしながら2位。
(*4)E Street Bandとの待望の新しいアルバムが!「Bruce Springsteen's longtime manager Jon Landau said, "'Magic' is a high energy rock CD."」ということらしい。「<ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ>は、ランドー曰く「Eストリート・バンドのサウンドに(ビーチ・ボーイズの)『ペット・サウンズ』的なフィーリングを少し織り交ぜたもの」なんて、もの凄い発言も。この老いた親父はいつまでもやってくれますよ。
『Magic』
1. Radio Nowhere
2. You'll Be Comin' Down
3. Livin' in the Future
4. Your Own Worst Enemy
5. Gypsy Biker
6. Girls in Their Summer Clothes
7. I'll Work for Your Love
8. Magic
9. Last to Die
10. Long Walk Home
11. Devil's Arcade
(日本では10月24日発売)、
http://www.brucespringsteen.net/
(*5)Uncoで話題のCoccoの新譜『きらきら』は、なんだか、それこそ、くそみその評価をもろに受けて立っているという感じで、かわいそうではある。わけ知り顔のレヴューコーナーでは、本気で、んなら聴くな、と怒りたくたくなるような酷い言葉が乱舞している。「期待しているから」とか「応援しているんだよ」(誰を?)といったところだろうけれど、それなら、此岸から彼岸を責めるのではなく、今の音を絶対的に評価してあげればよいのに、と思うわけだ(もちろんそんな冷静な人もいる)。いったい、みんなは音楽に何を求めているんだろう。なんだろう、ちょいと一発、毛羽立った神経のほうをガリガリと卸してもらって、すっきり一杯カタルシス、ってことなんだろうか。と、考えたときに、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』の発想が浮上してくる。もちろん、ガリガリ系の聴き方だって悪くはない。しかし、『エリ・エリ……』が言っているのは、それも含めた多様性への眼差しだろう。ちょっと見えにくいものもしっかり拾っていこう、とか。うん、少しは見えてきたか。
(*6)10月に、"ON THE ROAD 2006-2007"に行ってまいります。ホールなのにチケットがとれるなんて驚きだ。というわけで確率大賞の1位はこちらですね。3位あたりにBank Bandとかくるかも。
(*7)3大ブリティッシュバンドが1曲も出てこなかったのも、確率としては、そこそこのもんだ。あとクラシックも。

◎聴いていないと聴けない。

2007-07-22 00:35:38 | ◎聴
よくわからない話の続き。たとえば、先月の終わりに発売されたくるりの新しいアルバム『ワルツを踊れ Tanz Walzer』を聴いてみよう。例によって、「ウィーンでのレコーディング」であったり「今回はクラッシック」だとか、プレ・プロモーションで期待が高まったわけだけれど、最近のくるりの新譜に違わず、一巡目はどうもいまいちピンとこない。たしかに「JUBILEE」や「ANARCHY IN THE MUSIK」は、力が入っているかなという印象はある。ストリングスの工夫もありクラッシクというのもまあ頷ける。しかし、全体を通してみると『TEAM ROCK』『アンテナ』に比べ、「こりゃ何度も聴くアルバムではないな」と思えた。そこで、くるりってどんなのだっけ?と(別に忘れていたわけではないけれど)、『ベスト オブ くるり Tower Of Music Lover』を通しで聴いてみる。携帯プレーヤーが主軸になると、ベストアルバムを最初から順に聴くなんてのはけっこうまれになってくるのだが、とにかく通しで聴いてみた。すると、やっぱりくるりの良さ(それは個人的にはどちらかという唄というより音作り、そしてロック)が効いてくる。調子にのって『ベスト・オブ…』を3巡ほど聴いたあと、それではと、もう一度『ワルツを踊れ』に戻ってみる。するとどうだろう。最初の肩透かしの片鱗もなく、格段によい感じに聴こえてくる。そして、気がつけば「ああ、ハム食べたい」なんて口ずさんでいる自分がいる。これはいったいなんなのだろう。いわゆる、くるりのコードに、なにかが感応したのだろうか。聴けば聴くほどよくなってくる、というはよくわかる。それこそ、覚えたから、という単純な理由が大きいだろう。しかし、いっぽうでいくら聴いても、どうもピンとこない、というのもあるというのはどういうことだろう。

前回も少し書いたが、中島みゆきの場合は少し異なる。『臨月』に始まり『寒水魚』『予感』『はじめまして』まで続くアルバムは、それまでの作品においてかなり濃厚に現れていたルサンチマンのようなものが洗われつつある段階を進行している4枚だ。知っている人であれば(おそらくその頃中高生だった人だ)わかってもらえると思うが「成人世代」「夜曲」「傾斜」「家出」「歌姫」「誰のせいでもない雨が」「テキーラを飲みほして」「春までなんぼ」「僕たちの将来」など、驚くような曲も多い。さまざまな視点に立ち緻密に計算された詞、バリエーションが豊かなアレンジ、立場と想いを変えての声色など、ほんとうに聴きどころのようなものがたくさんあって、それがゆえに、影響力が大きい音楽である。その影響力というのは、よく言われるような「暗い」気持ちへの引力というわけではなく、むしろエネルギー注入という部分が大きいのだけれど、そのエネルギーが濃すぎるため、たとえば、4枚を2巡してみたあとは、ほかの誰のどの音楽も無力化してしまう。つまり、しばらくは中島みゆきしか聴けなくなってしまう。これは、べつに中島の曲が高尚すぎて、ほかがバカみたいといったような理由ではない。やはり、ここにもコードへの感応といったものがあるのだろうか。

もしかしたら、前回、それはあまりに雑だといってしまった習慣化、つまり慣れのようなものかもしれない。だとすれば、音に慣れるというのはどういうことだろう。読む、書く、考えることに対する慣れとはどういうことだろう。「慣れ」とはどういった感覚なのだろう。運動における練習のようなもの、とは割り切れない。身体が覚えるというのも、かなりアバウトな言い方だ。浅慮に「書いてないと書けなくなるぜ」と忠告することも多いが、それはほんとうなのだろうか。なにかピンとくることがあれば、また考えてみる。