考えるための道具箱

Thinking tool box

◎可能性の中心。

2009-01-03 10:51:53 | ◎読
「その後、この「可能性の中心」っていう言葉は文芸批評の中ではある種クリシェのように繰り返されて、今なお機能しているん部分があるんですけど、それでも僕はこの「可能性の中心」っていうのはやはりいい言葉だなって思うんですね。本当は中心っていっちゃうと、これが核心で本物の可能性のど真ん中だみたいな感じがするから、中心っていう言い方も若干良くない部分もある気もするんだけど、要は「可能性」っていうものをどう考えられるのか、その作品に潜在している「可能性」、言い換えるとポテンシャルというか、つまりあるひとつの作品から、一体どういうことが、どこまで考えられるのか、その作品を聴いちゃったり見ちゃったり読んじゃったりしたことによって、その向こう側にどれほどの世界の広がりっていうのがありうるのか、っていうのが僕は批評だって思うんですね。………そして、この「可能性の中心」を必ずしも対象自身が知悉しているとは限らないわけですよ。……」
(『(ブレインズ叢書1) 「批評」とは何か? 批評家養成ギブス』佐々木敦 P31)

対象に入り込まないと何も始まらない。それは批評の世界だけではない。いや、仕事や生活においてすべからく批評の精神をもつことが大切なのだ。しかし、いうまでもなく批評は批判ではない。ましてやレッテルを貼り分類を決め付け、対象と自分の距離に結論を出すことでもない。Yes/No。そういった二項対立の罠に簡単にからめとられないような言葉や思考や態度を手に入れることこそが大切なのだ。

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