2009年度の部門目標[※1]は、「知識デザインの具体化」です。「知識デザイン」については、ビジネスユニット内では、すでに、何度かお話させていただいたと思いますが、この「知識デザイン」を私たちの具体的なアイデンティティとして確立していく元年と位置づけたいと思います。
部内のメンバーには、繰り返しになりますが、「知識デザイン」とは、クライアント企業や商品のなかに複雑に重層的に蓄積されている知識を、よりわかりやすくエキサイティングにデザインしていく技術で、もちろんここでいうデザインとは、単なるグラフィックデザインだけを示すものではなく、いわゆるコミュニケーション設計とかストーリーといったものを含むデザインということになります[※2]。
これまでの日常の業務も、この「知識デザイン」に極めて近い方法で取り組んでもらえていると思いますが、ちょっとした矜持もって、自覚的に、わたしたちの仕事は、「企業の知識デザインをサポートすることである」さらには「私たち自身が知識デザイン企業である」ということを目指してしていただければと思います。
このことによって、[対外的]には、あらゆる情報の非対称をなくしていくことで、豊かで正しい消費活動に貢献する会社であることを明確にし、[対外的]には、むしろこちらのほうが重要かもしれませんが、個人個人の知的好奇心がそのまま仕事に直結するという喜びのある会社である、ということをひとつの理想として、これが実現できる流れを作っていきたいと思います。
もちろんビジョンだけでは、お金は儲かりませんので、この「知識デザイン」という考え方を具体的なビジネスとして私たちの利益の源泉としていくために、4つのアクションをキーワードとしてあげておきます。
まず、知識デザインというものを端的にあらわす[商品]が必要です。これについては、すでに現状の仕事のなかでその息吹といえるようなものが生まれていて、たいへん力強く感じています。それは、たとえば、「雑誌型の情報カタログ」であったり「情報を徹底して集積する教育・研修ツール」であったり「ユーザーコミュニティ型のWEBサイト」といった仕事なのですが、今年はそういったものをパッケージとしてメニュー化・体系化し、対外的にアピールできるような形として完成度を高めていければと思います。具体的な成功事例が、どうすればプロダクツになるのか、これについては、みなさんもぜひ考えてください。
ただし、[商品]は、言うまでもなく[サービス]との両輪です。私たちはあくまでも「サービス業」なんだ、ということをあらためて強く認識いただき、「ここまでやるか」のCS(顧客満足)を追求していきたいと思います。この[サービス]が2つ目のキーワードです。そういったコミュニケーション活動のなかで、クライアントからの「ああ、こいつとは話ができる」といった地道な評価をコツコツと積み上げていくことで、はじめて「商品」が認められ、仕事がうまれるし、積み上げていくことでしか私たちの仕事は拡がらないと思います。
もちろん、これは、「おもねる」とか「こびる」といったことではなく、あくまでも「知識提供のサービス」による顧客満足です。ときには相手に憑依するほどの慮りをもって、本質課題(オーダー)を先読みし、相手がイメージしていた以上の回答を提出していく。そういったことが、私たちのような仕事における顧客満足の理想ではありますが、ハードルはけっして低くはありません。情報の知悉に基づいた仮説力といった技術も必要になります。
ただし、キャリアを問わず、最低限の満足を提供できる方法はあります。それは、クライアント企業の商品情報、市場情報などの「ファクト」とりわけ「見込客」に対するファクトに対する関心と蓄積です。これさえしっかり確保できれば、キャリアを問わずクライアントに、満足を提供できる可能性が増えるはずです。少なくとも商品情報についてくどくどレクチャーする必要がないという、それだけでも満足度は数ポイントアップするのではないでしょうか。
そのために、重要になってくるのは、「学習」と「対話」です。「学習」については言うまでもありませんが、今年はもうひとつ「対話」の技術を学んでいってもらいたいと考えます。新しいアイデアや知恵は、他の人との「対話」からしか生まれない、といっても言いすぎではないと思います。社内はもとより、クライアントと正しく発展的な「対話」「議論」を積み重ねることによって、他者のすぐれた考えを引き出しつつ、その発想をとりこんで自分のふところを広げていく、といった「対話」の力、というものを自覚的に学んでいってもらえれば、と思います[※3]。どうすれば、相手の意見にうまくかぶせるかたちで自分の意見を配置でき、結果としてよりよいアイデアを導きだせるのか?ネガティブな思考停止状態に直面したとき、御茶らかしではない方法、愛想笑いではない方法で、会話を進行させるにはどうすればいいか。切迫的なやりとりを平和的に着地させるためにはどうすればいいのか[※4]。上司の状況適応技術などをしっかり観察しながら学んでいってください。
整理すると、「知識デザインの具体化」としての「商品」「サービス」、それを支える「学習」と「対話」の技術、これが、今年、みなさんと一緒に手に入れたい、と考えていることです。
今年は、よく言われるように、チェンジの年でもあり、チャンスの年でもあります。言われているだけはなく、実際にそうだと思います。しかし、なんのあてもないのに「チェンジ」、「チャンス」と虚勢をはってもまったく意味はありません。何を「チェンジ」してくのか、なにを「チャンス」としてくのか、みなさんそれぞれがクールに考えていただきたい。「知識デザイン」という考え方は、そのためヒントとなりえると思います。
一方で、当然のことですが厳しい状況に直面することも多くなってくるかもしれません。しかし、それはもう起こりえることとしてあらかじめ織り込んでいただき、状況の変化に一喜一憂することなく、しっかりと地に足をつけていただければと思います。
危機感をもって悲観的に考えつくし、楽観的に対処していく。これをひとつの行動原則としていただき、1年が終わった頃には、みなさんそれぞれが「チャンス」を捕まえ「チェンジ」できた、といえる年にしたいと思います。本年もよろしくお願いします。
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[※1]どちらかというとビジョンに近いのかもしれません。こういう話をオフィシャルにする機会はなかなかないので、あえて意図的にビジョンに近い話をさせてもらいました。なお、ここで言う「知識デザイン」とは紺野登のアイデアに触発されてはいますが、意味的には敷衍(拡大解釈)しており、彼の定義とは少し異なります。
[※2]さらに、もちろん、グラフィックデザインも重要です。構造のデザインとコンセプトのデザインは、ビジュアルと両輪です。相乗であり補完である。だから、ツールのサムネイルや企画書の制作はつねに、グラフィックデザインを意識しながら進めなければなりません。
[※3]もちろん、クレクレくんのための対話ではありません。ギブ&テイク。つまり、「だす→かぶせる」が基本、出しがいのある対話、かぶせがいのある対話を。
[※4]「あの人はああですから」という前に、ほんとうに正しく対話ができたのかどうか、いまいちど省みてください。コミュニケーションの決裂は、結果を問わず、敗北である、というぐらいの自省が必要です。
部内のメンバーには、繰り返しになりますが、「知識デザイン」とは、クライアント企業や商品のなかに複雑に重層的に蓄積されている知識を、よりわかりやすくエキサイティングにデザインしていく技術で、もちろんここでいうデザインとは、単なるグラフィックデザインだけを示すものではなく、いわゆるコミュニケーション設計とかストーリーといったものを含むデザインということになります[※2]。
これまでの日常の業務も、この「知識デザイン」に極めて近い方法で取り組んでもらえていると思いますが、ちょっとした矜持もって、自覚的に、わたしたちの仕事は、「企業の知識デザインをサポートすることである」さらには「私たち自身が知識デザイン企業である」ということを目指してしていただければと思います。
このことによって、[対外的]には、あらゆる情報の非対称をなくしていくことで、豊かで正しい消費活動に貢献する会社であることを明確にし、[対外的]には、むしろこちらのほうが重要かもしれませんが、個人個人の知的好奇心がそのまま仕事に直結するという喜びのある会社である、ということをひとつの理想として、これが実現できる流れを作っていきたいと思います。
もちろんビジョンだけでは、お金は儲かりませんので、この「知識デザイン」という考え方を具体的なビジネスとして私たちの利益の源泉としていくために、4つのアクションをキーワードとしてあげておきます。
まず、知識デザインというものを端的にあらわす[商品]が必要です。これについては、すでに現状の仕事のなかでその息吹といえるようなものが生まれていて、たいへん力強く感じています。それは、たとえば、「雑誌型の情報カタログ」であったり「情報を徹底して集積する教育・研修ツール」であったり「ユーザーコミュニティ型のWEBサイト」といった仕事なのですが、今年はそういったものをパッケージとしてメニュー化・体系化し、対外的にアピールできるような形として完成度を高めていければと思います。具体的な成功事例が、どうすればプロダクツになるのか、これについては、みなさんもぜひ考えてください。
ただし、[商品]は、言うまでもなく[サービス]との両輪です。私たちはあくまでも「サービス業」なんだ、ということをあらためて強く認識いただき、「ここまでやるか」のCS(顧客満足)を追求していきたいと思います。この[サービス]が2つ目のキーワードです。そういったコミュニケーション活動のなかで、クライアントからの「ああ、こいつとは話ができる」といった地道な評価をコツコツと積み上げていくことで、はじめて「商品」が認められ、仕事がうまれるし、積み上げていくことでしか私たちの仕事は拡がらないと思います。
もちろん、これは、「おもねる」とか「こびる」といったことではなく、あくまでも「知識提供のサービス」による顧客満足です。ときには相手に憑依するほどの慮りをもって、本質課題(オーダー)を先読みし、相手がイメージしていた以上の回答を提出していく。そういったことが、私たちのような仕事における顧客満足の理想ではありますが、ハードルはけっして低くはありません。情報の知悉に基づいた仮説力といった技術も必要になります。
ただし、キャリアを問わず、最低限の満足を提供できる方法はあります。それは、クライアント企業の商品情報、市場情報などの「ファクト」とりわけ「見込客」に対するファクトに対する関心と蓄積です。これさえしっかり確保できれば、キャリアを問わずクライアントに、満足を提供できる可能性が増えるはずです。少なくとも商品情報についてくどくどレクチャーする必要がないという、それだけでも満足度は数ポイントアップするのではないでしょうか。
そのために、重要になってくるのは、「学習」と「対話」です。「学習」については言うまでもありませんが、今年はもうひとつ「対話」の技術を学んでいってもらいたいと考えます。新しいアイデアや知恵は、他の人との「対話」からしか生まれない、といっても言いすぎではないと思います。社内はもとより、クライアントと正しく発展的な「対話」「議論」を積み重ねることによって、他者のすぐれた考えを引き出しつつ、その発想をとりこんで自分のふところを広げていく、といった「対話」の力、というものを自覚的に学んでいってもらえれば、と思います[※3]。どうすれば、相手の意見にうまくかぶせるかたちで自分の意見を配置でき、結果としてよりよいアイデアを導きだせるのか?ネガティブな思考停止状態に直面したとき、御茶らかしではない方法、愛想笑いではない方法で、会話を進行させるにはどうすればいいか。切迫的なやりとりを平和的に着地させるためにはどうすればいいのか[※4]。上司の状況適応技術などをしっかり観察しながら学んでいってください。
整理すると、「知識デザインの具体化」としての「商品」「サービス」、それを支える「学習」と「対話」の技術、これが、今年、みなさんと一緒に手に入れたい、と考えていることです。
今年は、よく言われるように、チェンジの年でもあり、チャンスの年でもあります。言われているだけはなく、実際にそうだと思います。しかし、なんのあてもないのに「チェンジ」、「チャンス」と虚勢をはってもまったく意味はありません。何を「チェンジ」してくのか、なにを「チャンス」としてくのか、みなさんそれぞれがクールに考えていただきたい。「知識デザイン」という考え方は、そのためヒントとなりえると思います。
一方で、当然のことですが厳しい状況に直面することも多くなってくるかもしれません。しかし、それはもう起こりえることとしてあらかじめ織り込んでいただき、状況の変化に一喜一憂することなく、しっかりと地に足をつけていただければと思います。
危機感をもって悲観的に考えつくし、楽観的に対処していく。これをひとつの行動原則としていただき、1年が終わった頃には、みなさんそれぞれが「チャンス」を捕まえ「チェンジ」できた、といえる年にしたいと思います。本年もよろしくお願いします。
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[※1]どちらかというとビジョンに近いのかもしれません。こういう話をオフィシャルにする機会はなかなかないので、あえて意図的にビジョンに近い話をさせてもらいました。なお、ここで言う「知識デザイン」とは紺野登のアイデアに触発されてはいますが、意味的には敷衍(拡大解釈)しており、彼の定義とは少し異なります。
[※2]さらに、もちろん、グラフィックデザインも重要です。構造のデザインとコンセプトのデザインは、ビジュアルと両輪です。相乗であり補完である。だから、ツールのサムネイルや企画書の制作はつねに、グラフィックデザインを意識しながら進めなければなりません。
[※3]もちろん、クレクレくんのための対話ではありません。ギブ&テイク。つまり、「だす→かぶせる」が基本、出しがいのある対話、かぶせがいのある対話を。
[※4]「あの人はああですから」という前に、ほんとうに正しく対話ができたのかどうか、いまいちど省みてください。コミュニケーションの決裂は、結果を問わず、敗北である、というぐらいの自省が必要です。