考えるための道具箱

Thinking tool box

◎増田俊郎の2枚。

2008-10-09 00:31:46 | ◎聴

…なんて言っても、関西の音楽の世界にいない限りは、ほとんどの人が知らないだろうな。ウィキもめちゃくちゃしょぼい。「ラジオパーソナリティ」とかになってる。しかし、いまではほとんど曲を作っていないとしても、いちおうミュージシャンである。つーか、最近のことをほとんど知らないので、けっこう意欲的にライブ活動などはやっているかもしれない(書きながら調べたところ、石田長生とか村田和人たちと定期的にライブを行っている。90年代もしっかりと活動を続け、2000年に入って、いくつかのアルバムも出しているようだ)。

じつは、おれがいわゆるロックといわれるジャンルのライブに初めて行ったのがこの増田敏郎で、それは中学生のときで、たぶん彼のメジャーデビューに合わせたファーストライブのようなものだった。友だちの知り合いの知り合いからまわってきた席を埋めるためのチケットだったような気がする。もちろん、そのときはようやくカシオペアとかQUEENとかPOLICEとか聴き出したころだったので、この増田敏郎という男には、ほとんど関心はなく、まあ、町のコミュニティのなかでちょっと歌のうまい兄ちゃんが歌手としてデビューするのか、といった程度の認識しかなく、だからライブじたいもきっと退屈に感じていたはずだ。中学生だからしようがない。かれこれ30年ぐらい前の話。

デビューアルバムが『GOOD BYE』。2枚目は『CROSS BREED』。結局、彼は第一期としてはこの2枚の作品しか残さなかった。ライブにいった誼で、友人からなかば無理やりのような感じで借りたはいいが、高校生ぐらいの間は、そんなに熱心に聴くことはなかった。やがて、大学生になり、もてあますヒマの間にただ流して聴いていると、いくつかの曲がひっかかってきた。最初は、アメリカにあこがれた日本のロックミュージックの典型だよ、と思っていたが、そうではないことがわかってきた。フォークでもニューミュジックでもない、紛れもない日本のロック。ボーカルにも味がある。夜中にまわりの音を遮って聴いてみれば、シンプルなアレンジが腹に響いた。聴き始めて5年後、ようやく増田俊郎に覚めた。

しかし、その後はといえば、手元にはカセットテープしかなかったことが災いし、聞き込みすぎてテープが伸び、切れてしまってからは、確かに残念ではあったけれども、ちょうど仕事が忙しくなっていたこともあって(同時にアナログからCDに移行するような面倒な時期でもあったので)、とりたてて新しい音源を探し回るというようなアクションはとらなかった。そもそも、音楽を聴くということすら忘れていた失われた10年に入っていた。

空白は20年。ある日、まったく突然に彼のことを思い出した。とくに彼の歌を聴いたというわけではない。メディアで見かけたというわけでもない。itunesの引越し作業をやりながら(かなり難作業!)、昔聞いていたアナログで、ほかに入れるべきものはなんかないかなあ、と考えているときに、前触れもなく、ああ、と思い出した。

「昼も夜も」、「枯葉の街」、「BROTHER ON A WATER」、そして「光る風」、「TAKE ME TO THE NIGHT」、「SEE YOU AGAIN 」といった曲が、無性に聴きたくなった。もう、ほとんどサビのところしか記憶にないが、当時を思い出すには、それだけで充分だ。まあ、でもきっと廃盤だろう、というのは杞憂で、紙ジャケCDとしてアマゾンでも在庫が確保されていた。むしろ、音の記憶があまりにも美化されすぎているのではないか、という不安の方が大きかった。良いほうに転ぶ記憶。記憶というのは、だいたいにおいてそんなふうにできている。だから、衝動的な1-Clickは、なんとかかわした。よし、今度タワレコに行って、もし、そこに2枚揃っていたら買おうと約束し、決心を先送る。

残念ながら、渋谷の店にあったのは1枚だけ。チキンジョージでのLIVE盤なんてのもあったので、これとあわせて2枚、といった都合の良い解釈も胸中をよぎるが、いったんは約束をたっとぶ(もし、その1枚が『CROSS BREED』ならそこで約束を反故にしていた?)。じつのところ、そんなふうにあっさり見送れたのは、ためらいがあったからかもしれない。そのあと、HMVやTSUTAYやBOOK-OFFなんかでも、とうぜん見つけられなかったのだけれど、ひょっとすると見つからないことを願っていたから見つからなかったのかもしれない。
しかし、残念ことに(?)、茶屋町のタワレコで、しっかりと揃った2枚を発見することになる。もはや約束を破る理由はない。保険として『さよならリグレット』とあわせて(なんの保険や?)購入する。

どうやら記憶は間違っていなかった。すべての曲がストンと落ちてきた。ふつうに良い曲だ。「RAINY MORNING」、「TWILIGHT」、「17の頃…」、「行き止りへの道」なんて曲もしっかり思い出した。もちろん、詩なんかは青くてイタいところもないとはいえない。でも、浜田省吾だってB'zだってだいたいこんなもんだ。補って余りある曲と演奏を讃えたい。凡庸なロックが好きなあなたなら、きっとうなずいてもらえるはずだ。サザンロック風、80年代風とか、きっといろんな言われようがあるかもしれないが、「BROTHER ON A WATER」なんかを聴いてみると増田俊郎のオリジナリティがわかる。

ちょっと大げさすぎないか、って?たしかに、増田俊郎は、あまりにもベタすぎる。きっと買いかぶりすぎだ。しかし、音楽とは、音楽の記憶とはそういうもんじゃないか。1000枚聴いたって、2000枚聴いたって、「いい物はいい、でも悪いものは悪い」、としかいえないもんな。
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■人気もあるし、じゅうぶん現役っぽい。
http://musicave.exblog.jp/5188599/

■「BROTHER ON A WATER」は、このライブならスタジオのほうがいいかもしれない。
http://jp.youtube.com/watch?v=dbYNxBidwJo

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