夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

POEM / 自由への一歩

2009-05-03 15:38:20 | 創作(etude)
 「自由への一歩」

 桜の花びらが
 強風で
 吹き飛ばされ
 津軽の
 ぶんぶという
 凧が長い足を
 振り回しながら
 旋回している

 ぼくは
 きょうこの場所で
 補助輪をはずして
 はじめて
 自走の日だ
 お母さんもこのぼくの
 荷台をつかんで
 必死の形相だ

 ぼくは
 補助輪も
 お母さんのささえも
 きょうついに振り切って
 このペダルを
 力強く踏み出すんだ
 ぼくの願いはただひとつ
 自由という名の自転車乗りだ

 「いち、にぃ、のぉう、さん!」
 ぼくはついに
 大地から足をけって
 ペダルを踏んだ
 ふらふらと
 蛇行しながら
 でも思いは一つ
 ペダルを回し続けることだ

 するとやにわに強風が
 僕の背後から
 ぼくを押しながら
 「ぼうず、えらいぞ」と
 耳にささやいた
 ぼくは今スピードを手に入れた
 お母さんの見守るはずの後ろなど
 決して振り返らないんだ

 自由だ!
 ぼくの自由が
 ペダルにある
 ぼくの冒険の道が
 ハンドルにある
 あの川で魚取りもできる
 あの森で虫取りもできる
 万歳!ぼくの出発の日だ
 
 

一行詩

2009-05-03 11:50:03 | 創作(etude)
「桜祭り」
 
 ・車椅子桜の散り際縫いながら津軽三味線別れの歌よ

 ・花吹雪長い別れだ気を保たせ美は待たせるものか彼の人の如


「畑にて」

 ・若緑小麦一列育ち行く皐月の空よ畑めざめて

 ・鍬を持て振り下ろしたる黒土はわれの悩みを掘り起こしおり

 ・皐月空目指して育つ蕾つけ大地の力ブルーベリーよ

「施設にて」
 
 ・母の愛受け取れぬまま日曜日きみは乱舞す裸になりて

 ・ネガティブな言葉を撒きぬ悲しくて私のこころ十三の春

 ・生き方の指図はいらぬこの我はこだわりの人アスペルガーぞ

散文詩 / さくら(cherry blossoms)の木の下には

2009-05-03 09:10:02 | 創作(etude)
 桜の木が美しいのは
 その木の下には
 人間の死体が
 埋められているという
 短編小説を書いたのは
 「檸檬」でも著名な
 梶井基次郎だが

 坂口安吾が
 「桜の森の満開の下」
 という怖い短編小説で
 「大昔は桜の花の下は
 怖ろしいと思っても
 絶景だなどとは
 だれも思わなかった…」と
 そう書き出している
 それは
 桜の木の下から
 人間を取り去ると
 怖ろしい景色になる
 からだという

 能にも
 さる母親が
 愛児を
 人さらいにさらわれて
 子供を探して
 発狂して
 桜の花の満開の林の
 中へ来かかり
 見渡す花びらの陰に
 子供の幻を描いて
 狂い死して
 花びらに埋まってしまう
 そういう筋書きがある

 現世の人々は
 桜見物をして
 桜の木の下に
 シートを敷いて
 その絶景を愛で
 飲めや歌えの
 大騒ぎ
 桜の怖さなど
 だれも創造だにしない

 挙句の果てに
 飲みすぎたといっては
 救急車の世話になる輩が居たり
 お城の本丸から
 お堀に飛び込んで
 おぼれてしまう輩
 せっかく美味しく
 いただいたものを
 げーげー吐いて
 周囲の人々を
 興ざめにしている
 そんな輩が目立つ

 しかし
 どうだろう
 弘前城公園の
 1600本の桜の木が
 満開になって
 その中に
 自分ひとりしか居ない
 情景を空想してごらん
 あー桜は美しい
 ただそう思って
 和めていられる人が
 果たして
 居るのだろうか

 桜の花は美しい
 美しすぎて
 怖くなる
 美しさの裏には
 人の魂を
 吸い取ってしまう
 魔力があるとしたら…
 間近にいられない
 不安と恐怖を持ったという
 大昔の人の
 実感が
 やけに身に染む
 きょうこのごろだ