デパートに妻と行き
自分は買い物もせずに
ただベンチに座っている
いや
ただ座っているだけではなく
ただ黙って人を観察している
ただ黙って
すると
面白いことに
なんとたくさんの人々が
デパートには
押し寄せていて
いろんな動きを
ただで見せてくれる
みんな同じ
ホモサピエンスなんだが
それぞれ固体ごとに
年齢も違えば
動き方や情動や表情
親子や夫婦の人間模様が
違うことに気づく
あるいは
それは店員同士だったり
お客同士だったり
店員とお客だったり
家族関係だったり
友人関係だったり
恋人関係だったりもする
見ている人と
見られている人もいる
さすがにここでは
演じる意識の人は少ないが
演じているんじゃない?と
そう思える人だっている
たとえばこの人だ
書籍売り場で書籍を持ち
レジに進んだ比較的高齢な婦人
めがねをかけた比較的若い店員
この二人が今まさに
一食触発のハプニングだ
高齢な婦人客が
突然カウンターをバン!
手で叩いたのだ
びっくりするのは
周囲の客や店員たち
レジ係の店員も
一瞬眼が点になる
続いて平身低頭
「申し訳ありません」
何事が起きたのか
数秒は静まり返る周辺だが
その後でまた
何事もなかったように
それぞれがそれぞれの
行動特性に戻って
動作を始めるのだ
筋書きのないドラマが
こうして
さまざまな売り場で
あるいは店内や駐車場で
展開されているのだ
僕には人間模様が
たまらなく面白い