すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

「地球」

2018-12-23 20:45:15 | 
 若い頃、一昨日のように冬の陽だまりの山歩きをしていて、幻のように空に浮かんだ昼の月を見て書いた詩。そのときぼくには、その白く美しい月が、人が住まなくなった後の地球のように、そして自分がいま立っている陽の暖かな大地の方が、幻影のように思えたのだ。

  地球         

青空に
地球が白く浮かんでいる

あれはすでに亡んだ星だから
乾ききった骨のように軽い

ぼくたちはかげろうの立つ落葉樹林に
冬芽の薄紫をさがし
枯れ草の間に
ちいさな青いイヌノフグリをさがす

空は光に満ちて澄み
ここの陽射しは明るい
ぼくたちの体は
陽に解けていきそうに希薄だ

あそこに地球が浮かんでいる
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの地球

ここにぼくたちが立っている
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの意識と肉体

こう感じているのは束の間だけ残った
ぼくたちの思いのかけらで
このおだやかな陽射しも林も草も
亡びる前に思い浮かべたものの
消え去るまでの残像で

青空に
乾いた骨が浮かんでいる
人間から解放されて
白く軽く浮かんだ地球

池の岸にイヌノフグリの咲いていた
冬の終わりの一日のまま

 …これも昔、月の地平から上る地球の写真の美しさに息を呑んだことがある。ぼくと同じように感じた人は多いのじゃないだろうか。
 「これはなんとしても護らなければならない」と。
 初めて宇宙から地球を見たガガーリンは、「地球は青かった」と空から送信してきた。今は空にいる彼は、「かつて地球は青かった」と思っているかも知れない。
コメント (1)
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