すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

東京港野鳥公園

2018-12-12 23:18:01 | 自然・季節
 羽田空港には殆んど行くことがない。ここ数年で、母を連れた家族旅行で2回利用しただけだ。そのせいか、一人でモノレールに乗って浜松町駅を出ると、それだけでなんだかどこかの国に旅行にでも出かけるような、奇妙な気持ちになる。車内の座席の配列やたくさんのスーツケースのせいもあるかもしれない。ぼくはザックに双眼鏡と図鑑とコーヒーとおにぎりだけが荷物なのだ。延々と続くビル群も、延々と続く工事現場のクレーン群も、ひっそりと屋形船を係留した運河も、視角が変わるせいもあるだろうが、非日常的な、少し違う世界に来たような感じがする。ここを毎日通勤する人には、見慣れた風景だろうが。
 羽田には行かずに、3つ目の「流通センター」駅で降りる。野鳥公園へは、ここからコンテナトラックのひっきりなしに続く騒々しい道沿いに20分ほど歩かねばならない。
 以前、横浜に住んでいた(若い)頃は、相模川の河口で冬鳥の観察会をしていた。と言ってもぼくが教えるのでなく、子供たちを連れて行って、日本野鳥の会のボランティアの人に教えてもらっていた(ぼくが教えることができたのは星座の観察ぐらいなものだ。昔は目が良かったし、渋谷のプラネタリウムにはずいぶん通ったのだ)。
 相模川河口はかつては広い砂浜と湿地があったのだが、砂防堰堤工事のせいだとかで、砂浜も湿地も数年のうちにみるみる痩せて小さくなってしまって、それから行かなくなってしまった。今はどうなっているだろうか?
 野鳥公園に来るのも30年ぶりぐらいだろうか。すっかり整備されてきれいになっている。受付の先、干潟に向かう途中の林で、たくさんの鳥が騒がしく啼いている。上空を、小さな鳥が横切っていく。水辺の鳥と違って、林の中の鳥はまず姿を見つけるのが難しい。ヒヨドリだけはすぐわかるが、あとは姿が見えない。カラ類の混群だろうか。ここにしばらくとどまっていればだんだん見えてくるのだが、今日は目的は水辺なので、先に行くことにする。
 平日の午前中のためか、ほとんど人がいない、たまに、ボランティアだろうか、胸に名札を付けた人とすれ違い、あいさつをする。外の音がなければ、大変感じの良い静かな場所なのだろうが、なんせ車の音、飛行機の音が絶え間ない。隣は大田市場で、近くには空港だ。
 観察広場につく。鳥を驚かさないようにブラインドになっている、望遠鏡がいくつも備え付けてある。ブラインドに開けられたスリットから池を泳ぐ鳥に焦点を合わせる。
 嘴が冬モードに黄色くなったダイサギが池の向こうの草地に一羽いる。池の上には、頭が赤茶色のホシハジロとお腹の白いキンクロハジロがいる。他にはいない。久しぶりの水鳥との対面で、しばらく息をつめるように観察してから、その先のネイチャーセンターの建物に向かう。真新しい、木の床の美しい建物で、暖房が効いている。ボランティアと思われる人が一人カウンターの中にいるだけで、観察している人はだれもいない。
 全面ガラス張りの窓の外には、「潮入りの池」という広大な池が広がっているのだが、水鳥はほとんど見えない。すぐ近くに、額から嘴にかけてがくっきりと白いオオバンが10羽ほど、もう少し遠くに光沢のある鮮やかな緑色の頭をしたマガモの番い(どれもオスの特徴)。ずっと遠く、望遠鏡でも判別ができない距離に、あまり大きくない群れ。それだけだ。
 カウンターの人に日曜日の観察会のことを訪ね、ポケット図鑑を買う。薄くて持ち運びが容易でうれしい。ぼくの持っているのは、詳しいがかなり重たいものだ。
 蜂蜜入りのコーヒーを飲み、再び屋外に出る。先端にある観察小屋と観察デッキに向かう。残念ながらカルガモしかいない。人もいず、冬鳥もいず、水面が広がっているだけの静謐な場所だ。外の騒音さえなければ。
 ここは以前は「大井野鳥公園」という名だった。観察用のブラインドの他はほとんど整備されていず、そのかわりもっと勝手に歩き回れたと記憶する。今はほとんど一本道の観察用通路の他は立ち入り禁止だ。もちろん、鳥類の保護にはその方が良いのだが。
 冬鳥がたくさん見られるのはもう少し後、一月の下旬から二月にかけてだと思う。ただし、ここは昔来た時も鳥の数はそんなに多くなかった。相模川河口では、ガン・カモ類の他にカモメ類やシギ・チドリ類も多数見られた。残念なことだ。
 今度、多摩川の河口に行ってみようか。川崎大師近くの河原も、確か冬鳥の観察に向いた場所だったはずだ。いつだったか、正月の3日に行ったら初詣の人混みに呑み込まれて閉口したことがあったなあ。
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