若い頃、一昨日のように冬の陽だまりの山歩きをしていて、幻のように空に浮かんだ昼の月を見て書いた詩。そのときぼくには、その白く美しい月が、人が住まなくなった後の地球のように、そして自分がいま立っている陽の暖かな大地の方が、幻影のように思えたのだ。
地球
青空に
地球が白く浮かんでいる
あれはすでに亡んだ星だから
乾ききった骨のように軽い
ぼくたちはかげろうの立つ落葉樹林に
冬芽の薄紫をさがし
枯れ草の間に
ちいさな青いイヌノフグリをさがす
空は光に満ちて澄み
ここの陽射しは明るい
ぼくたちの体は
陽に解けていきそうに希薄だ
あそこに地球が浮かんでいる
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの地球
ここにぼくたちが立っている
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの意識と肉体
こう感じているのは束の間だけ残った
ぼくたちの思いのかけらで
このおだやかな陽射しも林も草も
亡びる前に思い浮かべたものの
消え去るまでの残像で
青空に
乾いた骨が浮かんでいる
人間から解放されて
白く軽く浮かんだ地球
池の岸にイヌノフグリの咲いていた
冬の終わりの一日のまま
…これも昔、月の地平から上る地球の写真の美しさに息を呑んだことがある。ぼくと同じように感じた人は多いのじゃないだろうか。
「これはなんとしても護らなければならない」と。
初めて宇宙から地球を見たガガーリンは、「地球は青かった」と空から送信してきた。今は空にいる彼は、「かつて地球は青かった」と思っているかも知れない。
地球
青空に
地球が白く浮かんでいる
あれはすでに亡んだ星だから
乾ききった骨のように軽い
ぼくたちはかげろうの立つ落葉樹林に
冬芽の薄紫をさがし
枯れ草の間に
ちいさな青いイヌノフグリをさがす
空は光に満ちて澄み
ここの陽射しは明るい
ぼくたちの体は
陽に解けていきそうに希薄だ
あそこに地球が浮かんでいる
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの地球
ここにぼくたちが立っている
今はもうほんとうは亡んでしまった
ぼくたちの意識と肉体
こう感じているのは束の間だけ残った
ぼくたちの思いのかけらで
このおだやかな陽射しも林も草も
亡びる前に思い浮かべたものの
消え去るまでの残像で
青空に
乾いた骨が浮かんでいる
人間から解放されて
白く軽く浮かんだ地球
池の岸にイヌノフグリの咲いていた
冬の終わりの一日のまま
…これも昔、月の地平から上る地球の写真の美しさに息を呑んだことがある。ぼくと同じように感じた人は多いのじゃないだろうか。
「これはなんとしても護らなければならない」と。
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