にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

『ヤコブへの手紙』

2011年03月01日 | MOVIE
『ヤコブへの手紙』Postia Pappi Jaakobille(2009年/芬蘭)
監督:クラウス・ハロ。
出演:カーリナ・ハザード。ヘイッキ・ノウシアイネン。ユッカ・ケイノネン。

終身刑であったが恩赦となり12年間暮らした刑務所から出てきた中年女性のレイラは、片田舎で一人暮らす老いた盲目の牧師ヤコブの元で働くことになる。彼女の仕事はヤコブの元へ届けられる手紙を読み、その返事を代筆することであった。毎日の手紙を楽しみにしているヤコブと嫌々その相手をするレイラ。毎日手紙を届ける郵便配達人はレイラが終身刑であったことも知っているため、レイラに不信感を抱いていた。そしてある日を境にヤコブの元へ手紙が届かなくなる。手紙の来ない毎日はヤコブを消沈させていく・・・。そんなヤコブの姿を見かねたレイラは郵便配達人に手紙を届けるように頼むが・・・。

あー・・・なんて悲しくて暖かい物語なんだろう。主立った登場人物は三人。場面もほとんどがヤコブの古びた家の中と庭だけ。まるで舞台劇を観ているような感じだった。大袈裟なセリフも動きもなく、あえて何も語らない見事なまでにシンプルな作りの作品だ。でもそのシンプルさが心に滲みる。なぜ終身刑になったのか?レイラとは元々何者だったのか?何一つ語られずに物語は進む。ふてぶてしいレイラの態度とあの巨漢に、とんでもなく悪いことをした奴なのか?最初はそんな先入観を抱いてしまった。しかし手紙に同封されたお金をきっちり直す場面に悪人ではないんだ・・・と思い、その後彼女の瞳の悲しみに気づく。彼女はヤコブにより恩赦を与えられた。しかし彼女にはそんな恩赦は必要なかった。彼女は人生を放棄していた。そしてヤコブの元へ手紙が届かなくなると、今まで人に救いを与えていたはずの彼が届けられる手紙により救われていたことがわかり、今度はヤコブが自分の存在意義のなさを嘆き、人生を放棄しようとする。人は誰しも誰かに必要とされることが生きていくことなのかもしれませんね。ヤコブはレイラに手紙を読むという仕事を与えることでまず自分がレイラを必要としているのだと思って欲しかったのでしょう。ヤコブは届けられる手紙の主が自分を必要としているという思いで毎日を送っていたし、郵便配達人はヤコブに手紙を届けることが自分がしないといけないこと・・・ヤコブにとって郵便配達人が必要なのだという思いで手紙を届けていたのでしょう。
本当にこの作品は心にしみこむ良品です。私はこういう作品大好きです。

-2011.3.1 テアトル梅田-