にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【映画】『帝王カバーリ』

2017年05月03日 | MOVIE
『帝王カバーリ』Kabali(2016年/印タミル)
監督:パ・ランジット
出演:ラジニカーント。ラーディカー・アプテー。ウィンストン・チャオ。

マレーシアのクアラルンプール。25年前ギャングたちの抗争で妻と子を亡くしたカバーリが服役を終え出所してくる。再びギャングたちの抗争を懸念する警察。カバーリを陥れ彼の妻と子を殺害した組織ギャング43も出所後の彼の動向を伺うが、カバーリもまた再びギャング43への復讐を狙っていた。

『ロボット』以来のラジニ作品。逃すわけにはいかない。うまく休みを当て込んで行ってまいりました。白い髭を蓄えたラジニ・・・激シブです。かっこよすぎです。しかし・・・マレーシア?タミル人移民?で、中国系の組織?ほとんどなんなんですかそれ?な思考回路で臨んでしまったために、把握が難しかった(笑)。なんでもマレーシアにはタミル人移民が本当に多いそうで、実際に裏切り、寝返りなんていう抗争も多いそうです。そしてその不毛な争いへの警告、告発を込めてのこの作品なんだとか・・・。なるほど。
そこが頭に入ったところで再見したいところなんだけど、もう行けないのが残念だ。一般公開してくれるとありがたいんですが、なさそうだなぁ・・・。
ラジニ映画にしては珍しいR15はつくだろうなという暴力描写。その暴力描写も一部カットされているとか。で、笑いのシーンが全くない。ダンスシーンもない。あ、ちょっとだけあったか。でもないに等しい。只管硬派な作品でした。
しかしラスボスである中国人ギャングのトニー・リー。残念ながらラスボス感が全くない(笑)。で、観ていてこの人誰かに似ているなぁ~・・・って思ってたら、そうだ!荒木しげるさんに似てるんだ!と気づく。と言っても荒木しげるさんって誰な方が多いだろうなぁ(笑)。ちなみにこの方台湾版の『孤独のグルメ』のゴローちゃんだそうです。うん。そっちの方がしっくりくるな。
ラストもなんともクールな終わり方です。今回上映のラストはインド版だそうで、ラストにテロップが入るバージョン。ラストの手前でカットされているバージョンなんてのもあるそうです(笑)。インド版っていうことはこれが正規版なんでしょうね。私としてはカットバージョンの方が心穏やかに終われたかも・・・という気はしますけどね。(^_^;)

-2017.5.2 シネ・ヌーヴォ「南インド映画祭」-

【映画】『幸せをつかむ歌』

2016年04月07日 | MOVIE
『幸せをつかむ歌』RICKI AND THE FLASH(2015年/米)
監督:ジョナサン・デミ。
出演:メリル・ストリープ。ケビン・クライン。リック・スプリングフィールド。

ロサンゼルスの小さなライブハウス。ステージに立つのはリッキー&フラッシュという若くはないバンド。ボーカルのリッキーはバンドだけでは食べていけないので昼はスーパーのレジ打ち。実は彼女ロック歌手という夢が捨てきれずに三人の子供を夫の元に残して離婚していた。そんなある日元夫から娘のジュリーが夫に捨てられ離婚したことで精神的なダメージが強く助けてやってくれと連絡がくる。早速インディアナポリスへと向かう。高級住宅街にある家に到着したリッキーは完全に場違い。飛行機代で手持ちのお金が全くなくなったリッキーはそのまま元夫の家に泊まり込み、娘のジュリーと向き合い、今は家を出ている二人の息子とも再会するが・・・。

冒頭のライブハウスのシーンに「見に来てよかった!」という気になる。結構単純である(笑)。往年のロックのヒット曲だけではなく、なんとレディガガ!まさかレディガガの楽曲を歌うメリル・ストリープを見られるとは思いませんでしたよ。このメリル・ストリープ演じるリッキー、本名はリンダなんだけど、私は歌手!ロッカーなのよ!ってな感じで子供を放って家を出て離婚したんだろうな・・・というのが現在のスタイルでなんとなくわかる。ライブハウスのステージ上だけのファッションならともかく、普段も濃いメイクにロッカーな髪型。タトゥにアクセサリージャラジャラですからねぇ。しかもその恰好でインディアナポリスの高級住宅街の元夫と娘のいる邸宅を訪れるんだけど、元夫も娘も、久しぶりに食事でもとやってきた息子も驚かないんだからすごい(笑)。奔放な母親、自分たちを捨てた母親。憎しみや恨みはきっと彼らの中にあったとは思うけど、心底憎めないできたんだろうな。そんな気がした。自分の父親の介護のために家を空けていた現妻が帰宅。生みの母親であることを訴えるリッキーに、あなたが知っているのは小さい頃だけ、私が育ててきたんだと怒りをぶつける現妻。いつも送っていたカードなども嫌がるあの子たちに書くようにと私が書かせていたんだと本当のことをぶつける。傷心で戻ったリッキーにバンドのギターで現彼でもあるブラッドは言う。「愛するのは親の義務だ。君の使命だ」と。子供たちから愛してもらえないようなことを自分はした。でも私は子供たちを愛しているきっとリッキーはそう気付いたんでしょうね。ここからの展開はとても素敵です。ラスト、よくあるパターンの大団円。いいんじゃないですか。親子で歌う「Drift Away」気持ちのいいラストです。劇場で私のななめ前に座っていた女性がこのシーンで体を左右にゆすってノリノリで見てらっしゃいました。その気持ちよくわかるよ!って微笑ましく思えましたよ。今すごくこの作品のサントラが欲しい!って思っている・・・きっと密林あたりでポチッってしてしまうんだろうな。(^_^;)

-2016.4.6 シネリーブル梅田-

【映画】『恋人たち』

2016年01月28日 | MOVIE
『恋人たち』(2015年/日本)
監督:橋口亮輔。
出演:篠原篤。成嶋瞳子。池田良。山中聡。光石研。

3年前、妻を通り魔殺人で亡くしたアツシは、橋梁点検の仕事はしているものの拭えない喪失感を抱え無気力な日々を送っていた。夫と姑と暮らす瞳子は、代わり映えのしない毎日をただ淡々と過ごしていた。ただのビジネスと割り切った感じで日々相談者と接する弁護士の四ノ宮。そんな彼らの日常がふとしたことがきっかけで変わっていく。

この先、ネタバレになります。
ま、この作品ネタバレしないと感想書けないんですけどね(笑)。
なんだかこの作品やたらと評判がいいので、気になっていたんですが、ちょうどアンコール上映されていたので観てきました。うーん・・・。なんだかなぁ~というのが私の感想(笑)。いや、メインのアツシの物語はすごくよかった。殺された嫁の姉の独白にも心かき乱された。そして彼が働く会社の社長黒田がいいんですよ。妻を殺した男の判決が出たとき、そのあまりの理不尽な結果に自暴自棄になり仕事場へも現れなくなったアツシの元を訪れ淡々と「殺しちゃダメだよ。・・・だってこうしてあなたと話せなくなるでしょ。僕はもっとあなたと話したいよ」って・・・ここウルウルきちゃいました。彼を思う人の気持ちが彼を支える。この社長役の黒田大輔さん。いいですわ。なんでも「天皇の料理番」というドラマではすごく憎たらしい役で話題になった人らしいんですが、この作品では柔和な笑みを常に湛える隻腕の、この作品の中のなんだか訳わかんなかったり気分悪かったりする登場人物の中で唯一素敵な人を演じてらっしゃいます。彼が隻腕であることが彼のあの柔和な笑みの理由なのかな・・・と思ってたら昔皇居にロケット打ち込んで吹っ飛ばすつもりが自分の腕吹っ飛ばしちゃったって。なんかこの理由に納得。過激派を肯定するつもりはないですけどね、でも何か世の中に不満を持ち、世の中の理不尽に憤り、この世の中を変えるんだ!なんて大きなこと考えて行動していた彼が腕を失くしたことで、もう一つこの作品の中にパートを作れるくらいの物語があって、今目の前にいる人々が幸せに暮らしてくれるといいななんて境地に至ったんじゃないだろうか?と私は思ったんですよね。だから彼がアツシに係ることで、アツシがまたちゃんと生きようとするこのパートの物語はすごく好きだ。私はもうこれだけでいい(笑)。一番訳わかんなかったのはあの主婦。なーんにも読み取れなかった。ま、あのパートに出てくる人たちみんな私は絶対に付き合わないだろうなって人たちでしたが。弁護士のパートは可もなく不可もなく「ふーん」って感じだったのですが、あの息子にいたずらしたとかなんとか・・・あれってあの友人の嫁がわざと言ったんじゃないのかな?って私思ってるんですが。感想いろいろ見ましたがそう思っている人はいないようで。まずあの病院で四ノ宮の恋人がやってきたときにあの嫁ニコ~って笑ったじゃないですか、あれで、きっとあのあとあの彼にコナかけてゲイで彼の恋人だってわかって、「うきゃ~」「うきー!」ってなって旦那が危ない、あんな奴と付き合いさせたくない、したくない。で、息子がいたずらされそうになったという話作ってシャットアウト。と思うとね、あの四ノ宮が決して悪いことしてる訳じゃないけど、相手のこと考えないで自分のことだけ考えて行動してたことに対して、される側にまわった結果という面白い流れだなぁ~とより納得がいくんですよね。ま、どうとってどう楽しむかってのは観客の特権ですから、これはこれでありだよね(笑)。決して悪い作品ではない。でも絶賛するほとでもない。あの主婦のパートがなければ私はよかったかな・・・というのが私の総評です(笑)。

-2016.1.25 テアトル梅田-

【映画】『パリ3区の遺産相続人』

2015年12月17日 | MOVIE
『パリ3区の遺産相続人』MY OLD LADY(2014年/英・仏・米)
監督:イスラエル・ホロビッツ
出演;ケビン・クライン。クリスティン・スコット・トーマス。マギー・スミス。

長年疎遠だった父が亡くなり遺産相続することとなったパリの高級アパルトマンを、早く売り払い借金を清算し、人生をやり直すつもりでニューヨークからやってきたマティアス。ところが、その物件には一人の老女マティルドとその娘クロエが暮らしていた。マティルドの話によるとそのアパルトマンはフランス独特の不動産売買制度「ヴィアジェ」、月々の支払は普通に購入するよりも安いが、本当にその買い手のものになるのは、その所有者が死亡した時で、それまでは売買もできないし、月々の支払いも続けていかなくてはいけないというものだった。パリに来るために有り金を使い果たしたマティアスは、マティルドの好意?によりしばらくはこのアパルトマンで生活することになるが・・・。

手持ちのお金すらほとんどないマティアスが、マティルドに内緒で家具をこっそり古道具屋に持ち込んでお金にするところや、マティルドの主治医に彼女の健康状態を確認しに行くシーンなんかを見ているとおしゃれなコメディっぽいんですが、実はマティルドとマティアスの父は不倫関係だったという事実がわかるところから、少しシリアスになる。このあたりから確かに元々はこの作品舞台劇だったというのが納得の流れになっていきます。まんま舞台を見ているようなセリフの応酬に自分語り、物語としては少し重たいのかもしれませんが、舞台劇であるという感覚がその重さを感じさせない。そして本来だったら、マティルドあなた最低だよ・・・ってなっちゃうんですが、憎めないんですよねぇ。マギー・スミスの巧さもあるのかもしれませんが。
マティルドが子供のような無邪気さで犯していた罪。その罪が生んだクロエの孤独とマティアスの心の傷。マティルドの罪を犯していたと同じ無邪気さが二人を結びつける。あ、だから原題は「MY OLD LADY」なのか。ほっとするラストです。
そうそう、この作品で私初めて知ったんですが、ケビン・クライン歌うまいんだ!もっと聴きたいくらいでしたよ。

-2015.12.15 シネリーブル梅田-

【映画】『パリよ、永遠に』

2015年08月24日 | MOVIE
『パリよ、永遠に』DIPLOMATIE(2014年/仏・独)
監督:フォルカー・シュレンドルフ。
出演:アンドレ・デュソリエ。ニエル・アレストリュプ。ブルクハルト・クラウスナー。

1944年8月25日。ナチス統治下にあるパリ。しかし連合軍はパリ市街に近づき、ドイツの敗北は時間の問題となっていた。だがリヴォリ通りに建つホテル ル・ムーリスに駐留するナチス・ドイツ軍にヒトラーから「パリ破壊」の命令が下されていた。戦略上何の意味もなさない壊滅作戦。その指揮を執るのはパリ防衛司令官ディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍。そのコルティッツ将軍の前にスウェーデン総領事ラウル・ノルドリンクが現れる。彼の来訪の理由は「停戦の提案」。指揮官室となっているホテルの一室で始まる二人の駆け引き。

これは見逃さずに済んでよかった!面白い!新開地の大人の社会見学で行った「名画座利用講座」で、この作品の上映を知り、オーナーのおすすめもあり、これは見に来なければ・・・とやってきた甲斐がありましたよ。「名画座利用口座」でオーナーもおっしゃっていましたが、目的はもう一本の方だったとしても、二本立てになっていると、知らずに観たけどよかった!って作品にも会えるんですよね。まさしくこの作品がそうでした。いやあ全くのノーマークでしたね。二人のやりとりはどちらかというと淡々としているんだけど、だるくなるどころか、なぜか引き込まれていく。二人ともとても深みのある人間なんですよね。しかも史実。このパリ開放を描いた『パリは燃えているか』という有名な作品もあるんですが、こちらも未見。だから余計にこの物語は面白かった。まるで舞台劇のようだ・・・と思って見ていたら、これ元々舞台劇なんですね。(^_^;) この主演俳優二人は舞台からこの役を演じているのだとか・・・。もう完璧ですね。でもこれの舞台版も見てみたいなぁ。あ、もちろん日本で。どなたか演らないでしょうかね?『パリは燃えているか』も見たくなっちゃいましたよ。

-2015.8.21 パルシネマしんこうえん-

【映画】『ゆずり葉の頃』

2015年06月20日 | MOVIE
『ゆずり葉の頃』(2014年/日本)
監督・脚本:中みね子。
出演:八千草薫。仲代達也。風間トオル。岸辺一徳。

戦後まもなく復員してきた夫は一人息子を残して病死。和裁を覚え、着物の仕立てを生業に息子を育てた市子。息子は大きくなり今では商社の海外勤務。市子は今でも着物の仕立てをしながら一人暮らしをしていたが、ある時「ある絵」を追いかけて軽井沢へと旅立つ。母の不在を知らずに海外勤務から一時帰国した息子進は母の家を訪ね、母を探しに同じく軽井沢へと向かう。市子が追い求める絵は宮謙一郎という画家の「原風景」。展示されている絵は日により入れ替えされると聞き毎日美術館へ足を運ぶ市子。しかし市子が目にしたいと思っている「原風景」は個人所有で展示されることはないことがわかる。がっかりする市子に思いがけない出会いが訪れる・・・。

自ら何かを選ぶことなど出来なかった時代。与えられた場所で実直に生きてきたであろう市子が、遠い昔「本当にやりたいことをやり遂げるんだ」と言った少年の夢の結晶である一枚の絵に自らの姿をみつけ、ぜひとも自分の目で本物の絵を見たいと思う。淡い恋の思い出、これから終の棲家を探す決心。燐とした一人の女性の姿に心が暖かくなる。ゆずり葉は新芽が出ると葉がまだ緑のうちに地面に落ち、地面で枯れ、地に還る。生き方として本当に潔い。そう思います。この市子というキャラクターは八千草さんへのあて書きだそうで、八千草さんだからこそ出来る役ですね。絵を探す旅、その映画の映像がすべて絵画のように美しくて、場面、場面すべてが背景と役者さんたちがマッチしている。きれいな映像の映画です。
美しいシーンの一つに市子が湖面にあめ玉を投げ入れ、湖にその波紋が広がるというシーンがあるんですが、今回監督の舞台挨拶付きということで聞けたお話の中にそのシーンのことがあったんですが、そのシーンの撮影にはとても苦労したとのことです。あのあめ玉・・・現実には小石なんだそうですが、それをカメラマン指示の場所へ投げ入れるのがみね子監督の役だったそうで、コントロールが悪くなかなかその場所へ行かない。そして一度投げ入れると波紋が消えるまで待たないと次の撮影が出来ないという状態で、本当に大変だったそうです。その苦労が報われる美しいシーンになっています。
舞台挨拶後、パンフレットにサインがいただけるということでいただいてきました。「古臭い映画でしょ」なんておっしゃってましたが、丹念に丁寧に撮られた素敵な作品です。決して派手な作品ではないですが、清々しい気持ちにさせてくれる美しい作品でした。
そうそう・・・そんなことないよって言われるかもしれませんが、私はこの作品を見ていてフッと喜八監督の雰囲気を感じる時があったんですよね。作風は全然違うハズなのにね。
舞台挨拶付きの回に行って中みね子監督とお会い出来て本当によかったです。映画の中の市子さんも素敵ですが、みね子監督も素敵な人でした。
シニア向けの映画と言われてしまえば、そうなのかな~って気がする作品ですが、「ゆずり葉の頃」までにはまだまだあるっていう人でも、ああ向かうには今どうすればいいのかな?なんて考えるきっかけになる作品でもあるんじゃないかと思います。


-2015.6.20 シネ・リーブル梅田-

【映画】『あん』

2015年05月31日 | MOVIE
『あん』(2015年/日・仏・独)
監督:河直美。
出演:樹木希林。永瀬正敏。内田伽羅。市原悦子。浅田美代子。

小さなどら焼き屋「どら春」。そんなに繁盛しているわけでもないこの店で、単調な日々を送る雇われ店長の千太郎。そんなある日一人の老女が店の前に貼った求人募集を見て、働かせてくれないかとやってくる。最初は断った千太郎だったが、再び現れた老女は自分が作ったものだと「餡」を置いていく。その餡の美味しさに千太郎はその老女、徳江を雇うことに。
徳江の餡の美味しさで店は繁盛するが、ある事実が状況を変えてしまうことに・・・。

河直美監督の作品ってどうも私はそそられなくって、『萌の朱雀』を流し見(笑)した程度で、この作品が初めてまともにみる作品なんですよね。なんかこうドキュメンタリーっぽい流れとか、メリハリのない感じとかが苦手で、予告みただけで以前の作品は完全スルーしてました。ところがこの作品の予告観た時、なんかグッって惹かれるものがあったんですよ。で、劇場へ行って正解でした。河監督の手法と物語と、そして樹木希林さんの存在が見事にマッチしている。樹木希林さん無くしてこの作品はあり得ないんじゃないかと私は思います。樹木さん演じる徳江は本当に素晴らしい。私は映画でも小説でも、その作られた主人公に実際に会いたいと思う。そんな作品が好きなんですよ。私はこの作品を見終わってすごく徳江さんに会いたくなった。
「私たちは見るために、聴くために生まれてきた。だから何かにならなくっても、生きている意味はあるんじゃないでしょうか?」徳江さんの言葉が心に染みる。
この物語はともすれば悲しい物語なのかもしれません・・・でも、なぜか流れる涙は温かいんですよ。心がふわりと優しくなる・・・そんな作品でした。

-2015.5.31 シネマート心斎橋-

【映画】『クリッシュ』

2014年12月13日 | MOVIE
『クリッシュ』Krrish3(2013年/ヒンディー)
監督:ラーケーシュ・ローシャン。
出演:リティク・ローシャン。プリヤンカー・チョープラー。ヴィヴェーク・オーベローイ。

科学者の父ロヒートとニュースキャスターの妻ブリヤと暮らすクリシュナは、仕事が長続きしない。その理由は実は彼はスーパーヒーローのクリッシュだから。父と妻とそして新たにブリヤが妊娠したとの朗報でこれ以上ない幸せな日々を送るクシリュナ。そんなある日地方都市で最近が原因の病気が流行。ほどなく科学者カールが経営する製薬会社が治療薬を発売し感染は終息するが、その最近はカールが作り出したものだった。今度はクリシャナたちが暮らすムンバイでその病気が流行する。為す術もないクリシュナたちだったが・・・。

この作品邦題は『クリッシュ』ですが原題は『Krrish3』。つまり続きものの三作目です。冒頭前作のあらすじというか流れが駆け足で語られるのですが・・・。間違いなく1と2が気になります。配給会社さんどうにかしてください!ととりあえず叫んでおきましょう。
一作目は『Koi... Mil Gaya』。この作品でのお父さんであるロヒートの物語で、能力の劣っていた彼が宇宙人との接触ですごい能力を身につけるという作品だそうです。あるサイトではインド版「アルジャーノンに花束を」と解説されていた(笑)。うぅ・・・すごく見たい。2作目の『Krrish』はロヒートの能力を遺伝した本作の主役クリシュナが本作と同じくクリッシュとなるまでを描いているようですね。きっと二作目でロヒートと再会してブリヤと恋に落ちて・・・って感じなんでしょう。
リティクを見るのは『時に喜び、時に悲しみ』以来。なんだかマッチョ度が増しててすごいことになってますねぇ。この役にあわせて鍛えあげたのか・・・。ロヒートとの二役も演じ分けが見事です。それにしてもカール・・・。スクリーンを見ながら思わず心の中で叫んじゃったじゃないですか「マグニートー!!」。あ~、でも面白かった!やっぱインド映画は大好きだ。

-2014.12.6 シネマート心斎橋-

【映画】『バルフィ!人生に唄えば』

2014年09月06日 | MOVIE
『バルフィ!人生に唄えば』BARFI!(2011年/ヒンディー)
監督:アヌラーグ・バス
出演:ランビール・カプール。プリヤンカー・チョープラー。レアナー・デクーズ。アーシーシュ・ヴィダヤールティー。

耳が不自由で言葉の話せない青年バルフィは、ある日町へやってきた一人の女性に一目惚れをする。彼女の後を追い、いきなり告白する。しかしその女性シュルティーには婚約者がいた。友達としてバルフィと付き合うシュルティーだったが、いつしかシュルティーはバルフィに惹かれていく。母に諭され、婚約者の元へ戻るシュルティー。失意のバルフィに追い打ちをかけるように彼の父親が病に倒れる。病院代を必要とするバルフィは、幼なじみの富豪の娘ジルミルの誘拐を思いつくが・・・。

まさかこんなサスペンスのようになっているとは思わなかった。町へ来たばかりのシュルティーに一目惚れするバルフィにはおいおい・・・と思ったんだけど、でもそのプロポーズがおしゃれだ。言葉が無くっても恋する気持ちは伝えられるんですよね。言葉を話せないバルフィの手話に字幕があるわけでもなく、手話をわかる人が訳すわけでもない。でもそれがすごく効果的に登場人物たちの気持ちを伝えているように思う。ジルミルもまた、自閉症のために多くの言葉を発しない。言葉ではなく本当に心で通じ合うバルフィとジルミルがすごく素敵だ。警官とバルフィの追いかけっこはまるで無声映画の喜劇を彷彿とさせる。楽しくて悲しくて心がほっこりする素敵な作品です。しかしびっくりしたのはジルミル役のプリヤンカー・チョープラー。上手いよなぁこの女優さん。と思って見てたんだけど、まさか『DON』のロマだったとは!素晴らしすぎます。
で、ちょっとネタバレ。










シュルティー。あなた何やってんの?(笑)。一度目バルフィから去っていくのはわかる。許そう。しかし・・・。自分の立場を考えようよ。元はと言えばあなたが原因じゃん。ジルミルとバルフィの間に入ってどうすんのよ。ラスト、こいつ耳の聞こえないバルフィに教えてやらないんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ(笑)。で、その後、ジルミルがシュルティーとバルフィが近づかないようにする仕草に笑った。かわいいなぁ。
あとさぁ、ジルミルの父ちゃん。何バルフィをボコボコに殴ってんだよ。あんたが一番の悪人じゃないか!ま、ハッピーエンドだから許すとするか・・・。でもラストは『君に読む物語』じゃないか。

-2014.9.3 TOHOシネマズなんば-

【映画】『いのちのコール ミセスインガを知っていますか』

2014年08月28日 | MOVIE
『いのちのコール ミセスインガを知っていますか』(2013年)
企画:渡邉眞弓。
監督:蛯原やすゆき。
脚本:南木顕生。
出演:安田美沙子。室井滋。山口賢貴。国広富之。筒井真理子。

仲良く引っ越し作業をする結婚を控えたたまきと高志。愛猫のインガと共に新居で幸せな日々を送るはずだったたまきを子宮頸がんという病が襲う。子宮と卵巣の全摘出手術が必要で、子どもを産むのは無理だという診断に結婚を諦めるたまきだったが、高志は何があっても俺が守ると約束する。それから2年。長年続いていた地元FM番組『サンデイ ジェット・ストリーム』の最終回、「インガ」と名乗る女性から自殺を仄めかす電話が入る。

自らも子宮頸がんで余命半年と宣告された渡邉眞弓さんの企画で、残念ながら渡邉眞弓さんは映画の完成を待たずにお亡くなりになられたそうです。子宮頸がんの原因は性交渉ということで、差別や偏見の多い病気で、そんな考えを改め真摯に子宮頸がんという病気について知ってもらおうという啓発作品なんですが、なんでも子宮頸がんのワクチンの副作用の問題なんかで公開が一年ほど伸びてしまったとか・・・。それとこれとは違うのにね・・・。
どんな病気でも当事者は一番しんどいんだけど、謂れのない差別や偏見でパートナーにさえ背を向けられてしまうかもしれないというこの病気のことを、この作品はわかりやすくしっかり伝えてくれていたような気がします。ただ・・・たまきと高志の二人の芝居がね・・・つらい。始まってすぐ私はクラクラしていた。うわ~・・・このまま最後まで・・・耐えられるかなぁ・・・って(笑)。とっとと二年後になってくれて、ラジオ局に場面が移り、ここはベテラン俳優さんがガッチリ占めてくれていたので、ホッと一安心しました。
この作品の脚本の南木顕生さんとは、大阪で南木さんを囲むオフみたいなのがあって初めてお会いして、その後MIXIでマイミクになっていただいていたんですよね。そんなに頻繁にやりとりすることはなかったんですが、南木さん・・・ハンドルネームなんきんさんの日記なんかは常に読ませていただいていて、いつも強気でなんかやたらと突っかかってる感じで(笑)。それに執筆されている脚本はなんだかキワモノっぽくって・・・というか私の思い込みなんですけどね。だから今までなんきんさんの作品観たことなかったんですよ。ところがこの作品はそれらとはどうも違う。だからすごく気になってて・・・。やっと公開で観られるというのに、そのなんきんさんは今年の3月に急逝されてて。ちょっぴりセンチな気持ちで映画館に行って、この作品を観て、作中に出てくるラジオのリスナーのラジオネームが私のよく知るマイミクさんのハンドルだったり、映画の中のセリフで人とのつながりを凧をあげるのに似ていると言うのがあって、自分がしっかり立ってしっかり糸を持っていないといけない、かと言って糸を張りすぎると切れてしまう・・・なんきんさんらしくない優しく強いセリフだったり・・・なんきんさんの違う側面を観たようでラストにはウルウルしてました。「え~!?まさかなんきんさんがあんなセリフ書くとは思ってもいませんでしたよ!」って直接言いたかった。この映画を観たなんきんさんを知る人たちはみんな同じようなこと思ってるでしょうね。

-2014.8.23 第七芸術劇場-