「医者の不養生」「坊主の不信心」「算術者の不身代」「論語読みの論語知らず」−▼人々には立派なことを言っている専門家が自分の生活においては実行が伴っていない。そんなたとえや格言は数多い。言っていることとやっていることの落差が一種の笑いを伴い、人の口によく上るようになったのかもしれぬ▼令和の時代にその手のたとえの大ケッサクが生まれたと皮肉の一つも言いたくなるではないか。ただし笑いはない。悲しくなる。「厚労省の大宴会」である。厚生労働省の職員二十三人が銀座の居酒屋で夜遅くまで会食をしていたそうだ▼新型コロナウイルスの感染対策を担っているお役所である。国民には感染拡大を防ぐため、大人数の会食を控えて、飲食店の営業は午後九時までなどと口酸っぱく言いながら、自分たちは大宴会とはあまりにも情けないではないか▼介護保険を担当する老健局の職員だそうだ。コロナ対策とは直接関係のない局かもしれぬが、コロナ禍での仕事上のストレスは高かろう。憂さを晴らしたくなる気分は分からぬでもないが、その宴会は同じがまんを強いている国民への手ひどい裏切り行為である。同じ省内で日夜コロナ対策に頭を痛める同僚をもないがしろにしている▼一人ぐらいは止める人はいなかったのか。仲間の送別会だったと聞く。送別すべきはその思い上がった心だろうに。