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今日の筆洗

2021年03月05日 | Weblog
 ものごとが衰える兆しは、盛りの中にすでに表れているものだ。<衰颯(すいさつ)の景象(けいしょう)は、すなわち盛満(せいまん)の中にあり>。中国の古典『菜根譚(さいこんたん)』は、難しい表現で君子の心構えを説いている。だから、平穏な時にこそ、わざわいの兆しを気にかけよと。コロナ禍に通じる教訓に思えて、難しい一節を頑張って覚えている▼一年前を思い出す。桜が盛りを迎えていた公園や観光地が、そこそこ多くの人でにぎわったのは、三月の三連休であった。四月には感染が増えて、地方にも広がっている▼二週間ほどの時差で厳しい現実を突きつけてくるウイルスである。盛りの中に衰えの兆しをもっと感じるべきだったという無念は記憶に新しい。首都圏の一都三県に出されている緊急事態宣言は、先日の解除見送りに続いて、再度の延長となりそうである▼各都県では、さまざまな指標がたしかに改善した。喜ばしいことだが、一方で、感染減のペースが鈍っていることを示す数字がある。一年前の教訓を生かすならば、わざわいの兆しをみるのがいいはずだ。我慢の時が続くけれど、同じ無念を味わうわけにもいかない▼きょうは二十四節気の中で冬を越した虫がはい出すとされる「啓蟄(けいちつ)」である。二十四節気をさらに分けた七十二候では「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となる▼花の盛りに向かう季節が巡ってくるが、心の守りの戸も、まだ固く閉めている時であろう。