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今日の筆洗

2017年02月21日 | Weblog

 「猫のノミ取り屋」など、江戸時代の商売には現代では考えられないものが多く語り継がれているが、この「親孝行」なる商売も相当変わっている▼老いた母親に扮(ふん)した男が張り子細工の「息子」を体の前にぶらさげ、母親が子に背負われている格好をして町を歩く。「えー親孝行でござい」。これで商売として立派に成立していたというから驚きである▼分からぬでもない。その姿を見た人がいくらかのお代を出したのは、過去の親不孝を後悔し、それをわびるような気分ではなかったか。孝行したくともそれがかなわぬ身の上の客もいたかもしれない▼こっちは「親不孝」の話題である。ぎょっとされたか。ご安心を。福岡市天神地区の名物「親不孝通り」の名が十七年ぶりに帰ってくるという。九州出張などでお世話になった方もいるのではないか▼一九七〇年代から続く名だが、二〇〇〇年、その名が非行を助長しまいかと同じ読みの「親富孝」に改名。今回、商店主がやはり元の名にと声を上げ、実現したそうだ▼親不孝にこだわるとは妙だが、これも分かる。親不孝と言わぬまでも誰にも親や親代わりをひどく心配させたという経験があろう。振り返り、親を思い、しんみりした酒を味わいたいのなら、その通りの名は「親孝行」や「親富孝」よりも人間くさい「親不孝」の名がしっくりくる。そう親不孝の身は考える。

三遊亭金馬(三代目)  高田馬場