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今日の筆洗

2016年10月05日 | Weblog

「かみさんが秋刀魚(さんま)を買ってきたんだよ」。同僚がふいに話し始めた。今年の秋刀魚の値の高さの話かなと思いつつ、黙って耳を傾ける。「それで、その秋刀魚、どこのって聞いたわけだよ」「ええ」「そうしたらさ、イオンって言うんだよ」▼もう一つ別の話。こっちは歌人の穂村弘さんが書いていた。仕事に疲れた女性がタクシーを拾おうとしたが、やって来ない。やっと空車を見つけシートに転がり込みながら行き先を告げる。「家まで!」。笑いの素(もと)となったお二人には申し訳ないが、思わず「アハハ」となる。そして誰かに伝えたくなる▼たぶん、われわれの生活の中にはこの種の作為のない自然な笑いの種がたくさん隠れている。それが何かの拍子にひょいと顔をのぞかせ、われわれを笑わせる。悩みや苦労の絶えぬ生活にさっと明るい光を当てる▼その笑いには人の存在や、大げさに言えば生きるということまでいとおしく思わせる何かがあろう。誰かに伝えたくなるのはその幸せな気分を分かち合いたいからかもしれぬ▼大阪で釣り人が相次いで防波堤から突き落とされた事件。かかわったとして中学生四人が補導された。「海に落ちる時の驚いた顔を楽しもうと思って」▼笑えたかい。だが、その笑い声は「アハハ」ではなく、歪(ゆが)んだ「ケッケッケッ」ではなかったか。黒い笑いでは幸せな気分にはなれまいに。