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今日の筆洗

2016年10月04日 | Weblog

 親子の鰻(うなぎ)が泳いでいると、おいしそうな匂いがしてくる。子の鰻が「とっさんや、ぷんぷんと、いい匂いがしてくるよ。買っておくれよ」とねだると、親の鰻が「あれは蒲焼(かばや)きといって、泣いている鰻の子を醤油(しょうゆ)の付け焼きにするのだ。早く黙れ」▼それを聞いた子どもの鰻、さてどれほどおいしいのかと自分のしっぽをなめていたが、ついには食べてしまい、とうとう頭ばかりになって泣きだしてしまう。グロテスクで鰻の子が気の毒だが、こんな話が江戸期の戯作者、振鷺亭(しんろてい)が書いた「振鷺亭噺日記」にある▼自分を自分で食べる。ギリシャ語の「オートファジー」にはもともとそういう意味があるそうだ。二〇一六年のノーベル医学生理学賞に「オートファジー」(自食作用)の分子レベルでの仕組みを解明した大隅良典・東京工業大栄誉教授が選ばれた▼小咄(こばなし)の鰻の子のように人間は自分で自分を食べることはないが、目には見えない体の中では、やっぱり自分を食べているといえば、人を食った話に聞こえるが、事実である▼細胞内でいらなくなったタンパク質を分解して、栄養補給するなど再利用。単細胞生物から人間にまで共通する生命維持の大戦略で、光を当てたのが大隅さんである▼日本人のノーベル賞は三年連続。受賞のサイクルが食べ尽くされることなく、「オートファジー」のように続いていけばありがたい。