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今日の筆洗

2016年08月13日 | Weblog

 その光景が、フィルムに収められていたら、ドキュメンタリー映画の傑作になっていたのではないか。山田洋次監督は五十年ほど前、渥美清さんと二人、旅館の一室でごろごろ過ごす日々を送った▼問わず語りで渥美さんが自分の少年時代について話す。その絶妙の語り口。語り手の姿は消え、戦前の下町を駆け回っていた渥美さんの姿が映画の一場面のように浮かび上がる▼…渥美さんは小学生のころ、劣等生で学級のお荷物だった。座らされたのは、教室の最後列。そこから級友が一生懸命勉強しているのをぼんやり見ている。しかし、先生も級友も疲れ、ちょっと一息入れたくなる瞬間がある▼そんなとき、みんながふり返って見るのが、あの愛嬌(あいきょう)たっぷりの四角い顔。視線を感じた渥美少年は出番だとばかりにニコニコッと笑う。教室に笑いの渦が起こって、みんなはまた、授業に戻っていく…▼山田監督は一九八二年に出版された『寅さんの教育論』で<少年渥美清は、成長してからも、ずうっと一貫してそういう役割を、かつてのクラスにかわってこの社会のなかで果たしている>と言い当てていたが、『男はつらいよ』シリーズ自体が、そういう作品だったのだろう▼渥美さんが六十八歳で逝って、この八月で二十年。寅さんがいないお盆がまためぐり来たけれど、ふり返れば、まだそこには、あの四角い笑顔がある。


 もう20年たったんだ。