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今日の筆洗

2016年08月09日 | Weblog

 人間の悲しみは、消えたり、薄らいだりするものではないかもしれないと、作家の井上靖さんが『星と祭』の中に書いている。「水のように蒸発したりするものではなく、石に刻まれた跡のように、それは永遠に残るものかも知れない」▼消えも薄らぎもしない、しつこい悲しみ。それがつかの間やわらぐとすれば、その悲しみを理解し、少しでも分かち合いたいという心であり、「石に刻まれた跡」をそっとなでさする「手」による、おかげではないだろうか▼天皇陛下がきのうのお言葉で、生前退位の実現に対する強い思いをお示しになった。「高齢による体力の低下」「次第に進む身体の衰え」。一人のご高齢者として正直な表現であり、素直に胸の内を国民に伝えたいというお気持ちなのだろう▼天皇の務めとして「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」とお述べになっていたが、それはやはり悲しみの「石に刻まれた跡」をさすることに他ならぬ▼在位二十八年。大震災などの被災地で、かつての激戦地で。悲しみをさする手のご負担は年々大きくなっていたに違いない▼世論調査では、国民の八割以上が生前退位に前向きと聞く。議論を急ぎたい。お一人の悩みを抱える八十二歳の方がいらっしゃる。耳を貸し、その手を取ることは、不自然なことではあるまい。