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「西一族と巧」15

2020年03月13日 | T.B.1999年

 日が暮れる。

 火を囲み、3人は話をする。

 華は、今育てている花の話を。
 相変わらず、いくつか花を集め、育てているらしい。
 また、北一族の村に行って、園芸のものを買いたい、と。

「ほら、あのときの花、まだ元気なのよ」
「あのとき?」

 巧は首を傾げる。
 華も首を傾げる。

「えーっと、いつだった?」
「だから、巧はそれを訊いているんだろう」

 携帯食をほおばりながら、向が云う。

「巧が買ってくれた花なのよ」
「そんなことあった?」
「何年前だったかな?」

 華が云う。

「私がひとつ買って、もうひとつ巧が買ってくれたのよ」

 その言葉に、巧はぼんやりと思い出す。

「海一族産の?」
「それ!」
「海一族産ってどう云うことだ?」
「海辺に咲く花ってこと」
「それが何で、華ん家で咲いているんだよ?」
「育て方がいいから、かな!」
「すごいな、華は」
「俺からも云うよ、すごいな、華」
「とってつけたように、向!」

 華は巧を見る。

「紅色とか紫色の花が咲いてるよ」
「それは、よかった」

 巧は頷く。

「花で、お腹いっぱいにはならないだろう」
「お腹とかの問題じゃない!」

「いいから、お前らも食えよ」

 向は、小刀で携帯食である肉をそぐ。
 巧と華に配る。
 食べる。

「それ」

 巧は云う。

「北に行ったときに買った小刀?」
「ああ、これか」

 向は、小刀を見せる。

 丁寧に刃が研がれ、手入れされている。

「3人で行ったときに買ったやつだ」
 向が云う。
「持ちやすくてな、いいんだよ」
「ふーん。私でも使えそう」
「狩り用よりも、こうやって、ものを食べるとき用にしてるけど」

 握りやすいから、と、向は再度云う。

「もうひとつほしいな、これ」
「私もほしいな」
「俺も買おうかな」
「だよな、巧!」
「だから、私も!」
「おそろか、俺ら!!」

 3人は笑う。

「また、北一族の村に行きたいね」

 火を見つめながら、華が云う。

「てか、3人で北に行ったの、いつの話だ?」
「3年前だ」
「3年前!?」
「そんなに!?」
「そりゃあ……」

 向が云う。

「俺も背が伸びたわけだ!」
「成長期か!」

 よし、と、向が立ち上がる。

「近々、北一族の村に行くとしよう!」
「ねね、あのときお昼食べた店に行こうよ」
「いいね」
「楽しみ~」

 火を囲み、3人は話を続ける。

 あたりはすでに、日は落ちている。

 獲物が出るまで、もう少し。





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