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「戒院と『成院』」3

2019年10月15日 | T.B.1999年

息苦しさと共に目が覚め、
長く息を吐く。

辺りは暗く、
寝付いて、そう時間は経っていない事が分かる。
何度もこうやって目を覚ます。

「……………」

何もない天井を見つめて
先程まで見ていた夢を振り返る。

自分が病に侵されている、と
自覚した時の事。

恋人とは別れ、
家族とも離れ、

他の患者と同じ様にこのまま自分は
死んでいくのだろうなと
日々を過ごしていた。

それが、生き残ってしまった。

奇跡的に助かったのなら
喜びもできたが、
兄の犠牲と引き換えにして助かった。

「命は引き換えにするものじゃない」

普段から軽い性格だと言われる戒院だが、
それでも、医師を目指した1人だ。

「どちらも助かるならそれがいい。
 助からないなら、選ばなくてはいけないなら」

詳しい話は聞けていないが、
成院は薬を1つ持ち帰った。

西一族からという
発覚すればお咎めでは済まない
そんな代物だ。

そこで、成院の病が発覚する。

どこで感染したのかと言われれば
やはり、
家族である戒院からだろう。

薬は1人分。患者は2人。

「なぜ俺に使う事を選んだ」

君の方が症状が重かったからね。
そちらを優先しろと成院が。

そう、医師は教えてくれた。

もしかしたら、
また薬が手に入るかもしれない、
だから自分は、その時にと。

「そんな、訳はないだろう」

気休めだ。
奇跡でも起きない限り
不可能に近い事。

そして、戒院は助かり、成院は。

せめて、声を交わす事が
出来たのなら。

けれど全ては戒院が昏睡しているうちに
終わっていた。

この怒りをぶつける先が分からない。
バカな事をと言う相手はもう居ない。

そんなに仲の良い兄弟では
無かったじゃないか。

「こんな時ばかり
 兄貴ぶりやがって」

兄といっても、
弟といっても、
自分達は双子じゃないか。


 
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