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「涼と誠治」33

2019年07月19日 | T.B.2019年


「何があった!?」

 西一族の村。

 雨が降っている。

 村の広場には、狩りを終えた者たちが集まっている。
 いつも通り、獲物を捌き
 いつも通り、片付けを行う。

 が、

 突然の事態。

 和やかだった雰囲気が、一瞬で変わる。

「何だ!?」
「誠治たちの班だ!」

「誠治!?」

 皆、一様に集まってくる。

 誠治の班は、4人。

 うちふたりが、気を失った誠治を抱え、広場に現れる。
 もうひとりの姿はない。

「何があった?」
「誠治!」

「とにかく病院へ!」

 手を貸す者が現れ、意識のない怪我だらけの誠治は病院へと運ばれる。

 狩りのまとめ役が、ふたりの元へと来る。

「いったいどう云うことだ」

 ふたりは顔を見合わせる。

「それが、」
「私たちにもよく判らないの」

「判らない?」

「ええ」

 ふたりは、経緯を話す。

「大雨の中、誠治は狩りを続けると云ったんだ」
「それで、涼が誠治を止めに追ってくれて」
「俺たちふたりは、先に下山してきた」
「なのに、村の入り口に着いたら」

 なぜだか、誠治が怪我だらけで倒れていた。

「誠治がうわごとで云うんだ」
「崖から落ちたって」

「崖?」

 広場がざわつく。
 狩りのまとめ役は目を細める。

「誠治と黒髪が、崖から落ちただと?」

 ふたりは顔を見合わせる。
 真意は判らない。

「あいつはどこにいる?」

「……涼のことは、」
「判らない……」

 そして、これ以上、何も判らない。

「村長を呼んできてくれ」
 狩りのまとめ役は、声を出す。
「それと、誠治の意識が戻ったら、すぐに知らせるように」

 雨が降り続いている。

 が

 状況を知ろうと、広場には、たくさんの西一族がいる。
 誰もが、雨に濡れている。

「まあ。でも、さ」

 誰かが云う。

「よかったんじゃないか、あいつで」
「崖から落ちたのが、あいつで」
「まあ、そうね」
 さらに、誰かが云う。
「黒髪だったからねぇ」
「いてもいなくても、……いや、むしろいない方が」
「一族のため?」

 小さな笑い声。

「いくら狩りの能力があってもな」
「西一族で黒髪じゃあ」
「とても……一緒にはいたくないよな」

「あっ、おい!」

 皆、広場の入り口を見る。

 いつの間にか、

 そこに、涼の結婚相手が、立っている。






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