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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「水樹と嗣子」7

2019年07月23日 | T.B.2003年

砂漠当番を終えた友樹と裕樹を
村の正面で水樹が迎える。

「おつかれ、おつかれーい!!」
「お疲れ兄さん。
 今日は門番?」
「そうそう、実樹兄さんと」

今日の門番は始まったばかりなのに
もう、一日経ったと言わんばかりに
疲れた顔で実樹が言う。

「俺は門番には向かないと思うんだ。
 早く帰りたい」
「またまたぁ、謙遜を」
「俺って占術師だからな!!」

「人手不足なんだ仕方無い」

諦めろ、と
友樹が実樹の肩を叩く。

あ、そうだ、と
裕樹が言う。

「水樹兄さん、嗣子と会ったんだって?」
「そうそう。
 この前の飲み会の帰りに、って
 どこからそれ聞いたんだ?」

うーんと、裕樹。

「嗣子が、俺に苦情を訴えてきたというか」
「苦情とな!?」
「ほら、最初に砂漠で会った時。
 俺と兄さんが一緒だったから
 接点があるという事でなんだろうけど」

言いにくいけど、と、続ける。

「あの変な人に
 これ以上私に絡まないように言って、と」

「変な人ぉお!!?」
「まぁ兄さん。
 確かに、夜道に面識のない年頃の男に
 声かけられるって、まあ、なかなかに
 警戒事項だからさ」

「それは、まずいぞ水樹」
「訴えられたら、
 完全にあちらの勝利だぞ」

それはちょっと、と
友樹と実樹が言う。

「面識あるもん!!
 砂漠で会ったもん!!」

「もん、て、兄さん」

その年と顔と声で
その語尾はちょっと。

「だって、砂漠行こうとしてたし。
 危ないし~」
「正義って難しいな」
「普段の行いの現れだよな」

裕樹にまで言わせるとは
本当に怒らせちゃったな、と
水樹は人知れずため息をつく。

「兄さん?」
「あ、いやいや、何?」

「兄さん、喋らなきゃまともに見えるよ」

「喋ったらアホって事!?」

「騒がしい枠というか」
「沈黙は金だな。黙っとけ」
「ええええぇ」

だが、と実樹が言う。

「確かに砂漠は危ないな」
「夜に1人で砂漠に出掛けるって
 結構度胸あるけどな」
「あれは度胸じゃないよ。
 分かってないだけだって」

「砂の動きが不穏だ。
 夜でも、昼でも、
 気をつけるに越したことはない」
「変に静かだなとは思う」

兄さんも!?と水樹は驚く。

「友樹兄さんもそう思う?
 動きを見せなくなったよな」

ぐ、と実樹が杖を握り直す。

「何か企んでいる気がする。
 こういう時はいつもより危険だ」
「お、占術か?」
「ああ」

こくり、と頷き、
不敵な笑みを浮かべつつ言う。

「俺はまだ見習いだからな。
 これは、大樹兄さんの占術結果だ」

「自分の占術じゃないんかーーーい!!」


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