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「ヨーナとソウシ」13

2016年12月20日 | T.B.1998年

ヨシヤとマルタは
強盗に襲われて命を落とした。

しばらくして、
ヨーナが村人から聞いた話。

その場には
ヨーナ達は居なかった事になっている。

「司祭様が握りつぶしたんだと思うよ」

「……司祭様って、
 ソウシのお父様、なの?」
「縁は切っていると言ったろう。
 僕は、望まれても跡は継がない」

絶対にね、と笑顔でソウシが付け加える。

「これからどうなるのかしら」
「司祭の家系以外から、
 三つ目を招くのかも知れない、
 それでも、」

「血が絶えるなら、
 そうあるべき物って事だ」

昼を僅かに過ぎた時間。
今日の宿泊客が来るには少し時間が空く。

宿の受付は静まりかえっている。

「僕、ヨシヤ達の子を
 引き取って育てようかと思っている」

ここ最近、ソウシが何かを言おうと
ずっと様子を伺っていたのを
ヨーナは知っている。

それほど大事な話。

言うほど簡単な事ではないのは
ソウシが一番分かっている。

「ヨーナのこと、
 ずっと待たせていたのに。
 こんな結果になってしまって」

「こんな結果って?」
「ヨーナとは結婚できない」
「私の事嫌いになった?」

まさか、と、ソウシは言う。

「だったら、その子、
 一緒に育てましょう」

「……いや、ヨーナ。
 無理だよ」
「無理ってなぜ?」

「あの子は僕にとっては甥っ子で、
 血のつながりがある。
 でも、君にとっては他人の子だ」

「そうね、でも
 最初からは諦めたくないわ」

ダメだよ、とソウシが言う。

「それに、
 ヨシヤが言っていただろう。
 特殊に生まれるって事は
 当たり前の生活は送れない」

止めよう、無理だ、と
ソウシは必死に否定する。

「ソウシ……怖いの?」

ヨーナの言葉に、
どこか納得がいったように、
ソウシが頷く。

「あぁ、そうだ」

「お前もこうなる運命だと
 見せつけられた気がした。
 ヨーナ、僕は」

「ソウシ」

言い聞かせるように、ヨーナが言う。

「ちゃんと、目を見て言って」

ソウシは目を開く。
唯一視力を持つ、額の瞳。

「……ヨーナ」

「ねぇ、きっと最初は上手くいかない事が多いわ。
 でも一緒に居ましょう」
「……」
「誓って」

「ヨーナは、諦めが悪いな」

「そうね、しつこいわよ、私は」

「それじゃあ、逃げられないな」

ソウシが笑う。

「ヨーナが諦める、その日まで」
「その時には、
 ソウシが私を諦めないと思うわ」

「分かった、誓うよ」

「………」

さっきから、
出るに出かねて、
宿屋裏口の外で、ケンは唸る。


「ヨーナからプロポーズしちゃったよ」


T.B.1998
ヨーナとソウシ


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