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Ⅳ号戦車 改造案の別案

2012-12-04 19:09:43 | スケッチ

 2009年にⅣ号戦車の改造についてスケッチと解説を掲載しました。

その後モデルアップしてイエローサブマリンの模型コンテストに出品しましたが、その記事

の中で別案が必要だと書きました。その理由は、Ⅳ号戦車の改造は生産ラインに大幅な

改編を加えることなく実行できるものでなければならないからです。(後述します)

 今回はその別案ができましたので紹介しましょう。

●Ⅳ号K型 改砲塔

Photo

 ご覧のように外見上は主砲の防盾がザウコフ型に

変わった他、砲塔上面が変わった程度に見えます。

これは砲塔の主要な装甲板に前回のような大きな改変

を加えると生産ラインへの影響が大きくなりすぎるからです。

 本家ドイツでⅣ号戦車の車体前面装甲をⅣ号駆逐戦車

のように改変しようとしたところ、ジグを交換する間のライン

の停止が生産数に深刻な影響を及ぼすので不可能という

結果になったのです。

 そこで今回の別案では、装甲のパーツの形状変更を最低限にして、ジグの変更に依存

しないような案にしたのです。

●変更点の概要

 この案の変更点は大きく分けて三つあります。一つは砲塔前部装甲の増強、次に車長席

の移動、そして主砲取り付け部分周りの変更です。

 砲手・装填手用ハッチは変更するのが好ましいのですが、旧来のままでも問題がなければ

そのままにしておいても良い部分と言えます。

Photo_2

 前面装甲の増強に関しては、内部から装甲板を内張り

して内部スペースを作り防御するという方法を考えました。

前面の50mm装甲板はそのままで、そこを敵の砲弾が

突き抜けた場合、内側の30mm装甲板が斜め面によって

上へ弾くプランになっています。

このスペースは上面を開けておいて雑具箱として使用できます。

 砲塔左側のこの部分には砲塔の旋回ギアボックスがあるらしく、詳しい形状が分かって

いません。モーターとの兼ね合いから移動が困難なので、プランの変更が考慮されます。

 砲塔右側には装填手用の砲塔旋回用手動ハンドルが設置されていますが、これは

わずかな設計変更で移動できるはずです。

Photo_3

  車長席は色々検討した結果、上方へ15cm後方へ30cm

移動することになりました。シルエットの増大となりますが

後述の主砲の改造と関連があるので外せない部分です。

 Ⅳ号戦車の三面図で計算したところ、キューポラを取り付け

る開口部の直径が約60cmであることが分かりました。

後方への移動距離はこの半分、上方へはその1/4となります。その為、キューポラの下に

円筒形のスペーサーを入れ、前方に防盾を設置して基部とします。この防盾はⅢ号突撃砲

のような鋳造のものが良いでしょう。

 そして砲塔後部の雑具箱を15cm高く設置してキューポラの防御にします。

この雑具箱は設計変更した新型になりますが、外形はほぼ以前の物と変化なく、既成の

シュルツェンが使えるようになっています。

 これらの変更で幾分か後方への重量分布を稼げるので、砲塔前方の装甲強化の助け

になるはずです。

Photo

 主砲は、車長席を30cm後退させた分だけ後方へ砲尾を

伸ばせます。

この変更は主砲本体に変更はなく、砲耳の基部の設計変更

で対処します。

車外に突き出た駐退復座機のシリンダーは、その部分の長さがちょうど30cm程なので、

基部に納めることで箱状のカバーを廃止できます。

 機銃の装備位置も30cm後退できるので基部のカバーに収まってしまいます。

こうしてザウコフ型の防盾を取り付けることが可能になるのです。

 これらの追加された装甲パーツは上から見ると主砲を先端としたくさび形を形成し、

良好な被弾経始を得る事ができるはずです。

●Ⅳ号K型 砲塔の組み立て

Photo_4

 砲塔を製造するにはまず上図のように装甲板を組み立てて

箱を作った後、様々な加工をしてパーツを追加して行きます。

この工程で旧来のジグが使えれば、生産ラインへの影響は

最低限になるはずです。

 次に、砲塔のスリップリング用のベアリングを取り付ける

平面加工が必要になります。

溶接で鉄の箱を作ると微妙な歪みが出て、そのまま設置

すると精密部品のベアリングが正確に旋回しなくなるためでしょう。

おそらく図のような大型工作機械で切削加工をすると思われますが、砲塔の形状がこの

時点で変更されていると、加工に関連するジグの変更が必要になると思います。

 キューポラの支筒やドアの閉鎖板はこの加工の前に溶接するのが好ましいと思います。

ドアの開口部は最初から穴の開いていないパーツにしても閉じる事ができますが、部品

のストックを消費するまではこのような工程が必要です。 

 ●車体部前面の変更

Photo_5  

 車体前部の装甲は、Ⅳ号戦車の場合充分な増強が

なされており、他国の中戦車と比べても見劣りするもの

ではありません。

 しかし、常に戦車不足に悩んでいるドイツでは様々な

局面にⅣ号を投入せざるをえず、前面80mmの81度

傾斜の装甲板でも充分とは言えなかったのです。

 本家ドイツでの改造プランでは傾斜装甲板への変更

がいくつか提示されていますが、いずれも実行されていません。

 その大きな理由は、改造部位が大きいと生産ラインに影響をきたすからでしょう。

(またしても!)

そこで私は上図のように、最小限の変更で改造可能な案を考えました。

 Ⅳ号戦車はトランスミッションの点検ハッチとドライバーの位置の関係から、充分な

傾斜を持った装甲板の設置が難しいので、途中で屈折した装甲板の設置なら可能

だという結論になったのです。

 下10cmの部分は厚さ100mmですが、その上は80mm45度の装甲板を溶接して

砲弾をそらすようになっています。

 A案ではⅣ号の銃眼と視察用クラッペの流用が可能です。

 C案ではパンターのものを流用するアイディアになっていますが、装甲板の傾斜が

パンターより浅いので部品に変更が必要でしょう。

 B案は二つの折衝案ですが工数の割には効果は薄いと思います。

 いずれはこれらの案を又モデルアップしてみたいと思っています。

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● ガールズ&パンツァー

 絶賛放送中のアニメですが、戦車描写が非常に良く、あなどれません。

主役がⅣ号戦車に搭乗しているとあって毎回楽しみに拝見しています。

1クールと言わず2期も3期も製作して欲しいと思います!!


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明けましておめでとうございます。 (ミサイラー)
2013-01-01 10:44:16
明けましておめでとうございます。

4号の改修案ですか・・・基本はパンターとの置き換えがイメージに合ったので新鮮ですね。

ただ、シュペーア軍需相が入った話だと思うんですが、一番ドイツにとって効率的だったのは、4号とティーガーの大量生産だったというのは、やはり山本さんの思想が正しかったのではないか、と悔やまれる部分がありますね。
返信する
明けましておめでとうございます (山本薫)
2013-01-02 09:02:57
明けましておめでとうございます
前年はお世話になりました
今年もTNSHOWをよろしくお願いいたします。

Ⅳ号戦車の改修はパンターの生産数がなかなか上がらないので
たびたび試みられていますが、シュペーアが言う通りにするには
新型の砲塔に乗せかえる等の根本的解決方法が必要だと思います。
 僕自身はティーゲルやケーニヒスティーガーは止めておいて
パンターとパンター車台を使った自走砲およびⅣ号系列の二本立て
で十分ではなかったかと思います。
返信する

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