●Ⅰ号戦車のサスペンション
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/1e/0e0e0b7439e8cba6d7e9c4edf213071d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/58/d5/abb20f63a27e53fda12a085fcb11c2ea_s.jpg)
ナチスドイツは1920年代は条約で兵器の開発を禁じられていましたが、再軍備のため
の用意を密かに進めていました。
Ⅰ号戦車はトラクターという名目で戦車技術の蓄積のために作られた訓練用戦車です。
その原型はイギリスが各国に輸出したカーデンロイド・ガンキャリアーだと言われています。
右側のⅠ号戦車a型のサスペンションがそれだそうです。その後すぐ左側のb型に発展し、
Ⅱ号戦車の初期型まで使用されました。
このサスペンションは二輪ボギーの後ろの車輪を二つの板バネではさんだ物で、車軸が
そのままバネで保持されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/2b/17/0cf92309e2a9338bc3c1dad133cddf1e_s.jpg)
戦車と言っても二人乗りで装甲もきわめて薄いⅠ号戦車は、この程度のサスペンションでも
問題がなかったと思われます。前輪が起伏を乗り越えるとバネのしなりが後輪を押し下げ、
ショックを吸収するわけです。
この機構は軽量の車両なら問題はなく、ほかの国の戦車にもよく似た例が見られます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/02/71/575d728375b22082fd55ff041b5a8d4a_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/26/20/19f47dbe7ffd9308dd6a0d0168b0e3e8_s.jpg)
ただ、右図のようにキャタピラが傾くと脱輪する危険があり、Ⅰ号戦車ではレールで挟む事
によって強引に車軸の傾きを補正しています。
言うまでもなくメカとして不完全なものでありますが、Ⅰ号戦車の用途から問題ないと判断
されたのか、その後の戦車設計に受け継がれました。
● Ⅳ号戦車とフェルディナンド駆逐戦車のサスペンション
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/47/78/2c9d24e918ac30c69ffb0b4950a4f5b6_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/36/2950097882b4a5eeba4f885adc302ad0.png)
左がⅣ号戦車のサスペンション、右がポルシェ博士の考案した縦置き式トーションバー
サスペンションです。
Ⅳ号戦車はⅠ号戦車の後すぐに開発が始まったので、時系列的にもつながりがあり、
スィングアームによって後輪の欠点を補正したと見ると技術的関連があって面白いですね。
ポルシェ博士のサスペンションは時期も同じころタイガー戦車の為に開発されましたが
戦車そのもが問題が多くあまり知られずに終わっています。しかしその形態から言って
Ⅰ号戦車の二輪ボギーによく似ており、彼なりの改良案だと言うことがわかります。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/64/bb51c95f083684e412f7bc967312dbc1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/12/0e/a6d52be99ec155d486845c3ed2dbd2b9_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0f/ab/d99c86868b0462b8f76738c2d1d7ea63_s.jpg)
このサスペンションはカム機構によって、ボギー内部のトーションバーをねじるように
なっていて、機構としては非常に巧妙にできています。キングタイガー戦車の車台を
使った自走砲や超重戦車マウスにも使われる予定でしたが、マウスの自重が計画変更で
重量オーバーになったので別設計の物に変更されました。
自走砲の方も、前後の揺れが収まらないという実験結果が出て少数の生産で一般的な
横置きトーションバー方式に変更されました。この前後の揺れは戦車設計によくある物で
大抵の場合オイルダンパーの設置で解決を見ています。
設計がタイトだったポルシェ博士のサスペンションはダンパーを組み込む場所がなく
揺れの問題を根本的に解決できなかったと見られます。ただ、素人目には車体の軸から
前輪へ伸びるスィングアームあたりに設置スペースはあるように見えますが、改良され
なかった事を考えるとまだ他の問題があったのかも知れません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/13/cc/c58cdb4154f347637c9b6731a993c770_s.jpg)
さてではⅣ号戦車の場合、この揺れ対策はどうだったのかと言うと、これといった
対策はとられていませんでした。これは、上図のような板バネの特性のためダンパーが
省略されても問題なかったためと思われます。
板バネは通常何枚かが束ねられて使われますが、全体が曲がると各バネの接触面が摩擦
を起こして揺れにブレーキがかかる現象が起きるのです。お手元に本かノートがあったら
右図のように曲げてみると、各紙面が擦れ合って抵抗になることが確認できると思います。
このように、ローテクである板バネが現在でもサスペンションとして使われる理由が
Ⅳ号戦車のサスペンションには反映していると言えます。
この後、ドイツ戦車は横置き式のトーションバーが一般的になりますが、イギリスの戦車
は戦後も二輪一組のホルストマン式サスペンションにこだわり続けていきます。
またサスペンションに非常に高級な機構を採用したパンターは、最初はオイルダンパーで
揺れをコントロールしようとしましたが、すぐに廃止されました。ダブルトーションバー
と言う機構そのものに揺れを吸収する特性があったのかも知れません。
それらはまた別の機会にしましょう。
「戦車サスペンションの本」のオンライン販売を始めました (終了)
「戦車サスペンションの本」の電子書籍販売
「戦車サスペンションの本Ⅲ」のオンライン販売
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/1e/0e0e0b7439e8cba6d7e9c4edf213071d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/58/d5/abb20f63a27e53fda12a085fcb11c2ea_s.jpg)
ナチスドイツは1920年代は条約で兵器の開発を禁じられていましたが、再軍備のため
の用意を密かに進めていました。
Ⅰ号戦車はトラクターという名目で戦車技術の蓄積のために作られた訓練用戦車です。
その原型はイギリスが各国に輸出したカーデンロイド・ガンキャリアーだと言われています。
右側のⅠ号戦車a型のサスペンションがそれだそうです。その後すぐ左側のb型に発展し、
Ⅱ号戦車の初期型まで使用されました。
このサスペンションは二輪ボギーの後ろの車輪を二つの板バネではさんだ物で、車軸が
そのままバネで保持されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/2b/17/0cf92309e2a9338bc3c1dad133cddf1e_s.jpg)
戦車と言っても二人乗りで装甲もきわめて薄いⅠ号戦車は、この程度のサスペンションでも
問題がなかったと思われます。前輪が起伏を乗り越えるとバネのしなりが後輪を押し下げ、
ショックを吸収するわけです。
この機構は軽量の車両なら問題はなく、ほかの国の戦車にもよく似た例が見られます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/02/71/575d728375b22082fd55ff041b5a8d4a_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/26/20/19f47dbe7ffd9308dd6a0d0168b0e3e8_s.jpg)
ただ、右図のようにキャタピラが傾くと脱輪する危険があり、Ⅰ号戦車ではレールで挟む事
によって強引に車軸の傾きを補正しています。
言うまでもなくメカとして不完全なものでありますが、Ⅰ号戦車の用途から問題ないと判断
されたのか、その後の戦車設計に受け継がれました。
● Ⅳ号戦車とフェルディナンド駆逐戦車のサスペンション
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/47/78/2c9d24e918ac30c69ffb0b4950a4f5b6_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/36/2950097882b4a5eeba4f885adc302ad0.png)
左がⅣ号戦車のサスペンション、右がポルシェ博士の考案した縦置き式トーションバー
サスペンションです。
Ⅳ号戦車はⅠ号戦車の後すぐに開発が始まったので、時系列的にもつながりがあり、
スィングアームによって後輪の欠点を補正したと見ると技術的関連があって面白いですね。
ポルシェ博士のサスペンションは時期も同じころタイガー戦車の為に開発されましたが
戦車そのもが問題が多くあまり知られずに終わっています。しかしその形態から言って
Ⅰ号戦車の二輪ボギーによく似ており、彼なりの改良案だと言うことがわかります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/64/bb51c95f083684e412f7bc967312dbc1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/12/0e/a6d52be99ec155d486845c3ed2dbd2b9_s.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0f/ab/d99c86868b0462b8f76738c2d1d7ea63_s.jpg)
このサスペンションはカム機構によって、ボギー内部のトーションバーをねじるように
なっていて、機構としては非常に巧妙にできています。キングタイガー戦車の車台を
使った自走砲や超重戦車マウスにも使われる予定でしたが、マウスの自重が計画変更で
重量オーバーになったので別設計の物に変更されました。
自走砲の方も、前後の揺れが収まらないという実験結果が出て少数の生産で一般的な
横置きトーションバー方式に変更されました。この前後の揺れは戦車設計によくある物で
大抵の場合オイルダンパーの設置で解決を見ています。
設計がタイトだったポルシェ博士のサスペンションはダンパーを組み込む場所がなく
揺れの問題を根本的に解決できなかったと見られます。ただ、素人目には車体の軸から
前輪へ伸びるスィングアームあたりに設置スペースはあるように見えますが、改良され
なかった事を考えるとまだ他の問題があったのかも知れません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/13/cc/c58cdb4154f347637c9b6731a993c770_s.jpg)
さてではⅣ号戦車の場合、この揺れ対策はどうだったのかと言うと、これといった
対策はとられていませんでした。これは、上図のような板バネの特性のためダンパーが
省略されても問題なかったためと思われます。
板バネは通常何枚かが束ねられて使われますが、全体が曲がると各バネの接触面が摩擦
を起こして揺れにブレーキがかかる現象が起きるのです。お手元に本かノートがあったら
右図のように曲げてみると、各紙面が擦れ合って抵抗になることが確認できると思います。
このように、ローテクである板バネが現在でもサスペンションとして使われる理由が
Ⅳ号戦車のサスペンションには反映していると言えます。
この後、ドイツ戦車は横置き式のトーションバーが一般的になりますが、イギリスの戦車
は戦後も二輪一組のホルストマン式サスペンションにこだわり続けていきます。
またサスペンションに非常に高級な機構を採用したパンターは、最初はオイルダンパーで
揺れをコントロールしようとしましたが、すぐに廃止されました。ダブルトーションバー
と言う機構そのものに揺れを吸収する特性があったのかも知れません。
それらはまた別の機会にしましょう。
「戦車サスペンションの本」のオンライン販売を始めました (終了)
「戦車サスペンションの本」の電子書籍販売
「戦車サスペンションの本Ⅲ」のオンライン販売
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます