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ボギー転輪の疑問

2015-03-01 23:19:23 | スケッチ
 戦車のボギー転輪の研究は私が好奇心からやっていることですが、日本では当然の事
ながら資料が少なくネットで外国のサイトを閲覧する等しながらの思索となっております。
分からない部分はとりあえず飛ばして先へ進む場合も多々あり、後になって間違いに気づく
という事も多いのです。
 
● ダブルボギーという名称
 普通に検索してもゴルフ用語が多数ヒットするばかりで、英語で検索してもトラックの
サスペンションが出てきます。私がダブルボギーと言っている根拠は大日本絵画のシュピールベルガー氏の著作「パンター戦車」の一文のみです。
 抜き出してみますと
「しかしⅢ号戦車の車体は後にとりわけ初期生産型のダブルボギー式走行装置が有効でない
と実証され、改良が加えられて以降重宝されるようになった。」
とあります。これはⅢ号戦車の先行量産型の中のB型からD型をさしていると思われます。
転輪が8つあり2個づつのボギーになっておりそれぞれが板バネで支えられている物です。

これはマチルダ戦車のダブルボギーで2つのボギーをバネで連携した典型的な形の物です。
Ⅲ号戦車の場合、板バネの位置に試行錯誤があってこのように割り切った物ではなく、結局
は失敗してトーションバー式へ移行しました。
 ダブルボギーはリンクの配置によって一つの転輪が乗り越えた高さが1/4以下になって
車体へ伝達される特性があり、その分類のためにも特別な名称がついていて然るべきだと
思うのですが、今ひとつはっきりしないのが私の現状です。
記事を閲覧なさる方はその点にご留意下さい。

 去年の年末に発表したスローモーション・サスペンションに関しても異説があり、
バレンタイン戦車の三輪ボギーがスローモーション式という訳ではなく、スプリングが
斜めになっているので「斜めのアクション」と言う意味らしいです。これもはっきり
させなくてはいけませんが、今の段階では資料がなく、なんとも言えません。

● 身近なボギー転輪、自転車
 と言っても一種の思考実験なのですが。

 ご覧のように前輪が起伏に乗り上げた事点では後輪は持ち上がっていません。と言う事は
その中間の位置は1/2aの高さしか持ち上がっていないと言う事になります。
これがボギー転輪のサスペンション効果の原理です。
二輪ボギーを二つ並べさらにシーソーのようなアームで連結するとさらに1/2になり・・
これがダブルボギーというわけです。
 現実の自転車では図の矢印のようにハンドルから腕を伝って頭へ衝撃が伝わるので、
この効果はあまり実感されませんが、1輪車に乗るようにペダルの上に直立したと仮定
すると、純粋に1/2の効果が現れるはずです。
 私は実際に後サスペンションのある自転車でその効果を実証しましたが半分手放し状態
で前後のバランスをとるのは難しいのでお奨めはできません。

● M4シャーマン戦車のサスペンション

ボギー転輪についての記事の中でM4戦車のサスペンションは独立懸架と書きましたが、
よく調べてみたところ図のような機構らしいと分かりました。
 最初のT5軽戦車の時はリンクでしっかり連結されて上からバネで押さえる形だった
のですが、重量が増したM3のあたりになるとばねも強くなり、リンクが省略されて「へ」
の字型のバーが転輪の連動をさせています。このような機構はフリクション(摩擦)や
整備性の点から良い方法とは言えないのですが、後に改良されるまでホルストマン式の
ような割り切った形にはなっていません。
 時間的余裕がなくT5の実績を受けてこうするしかなかったのか、あるいはパテントの
問題でもあったのか、なぜこうなったのか理解に苦しむのですが、一つの可能性として
鉄道のサスペンションからの技術流用があったのではないかと思えます。

● 鉄道技術からの技術流用
 戦車ができる以前から鉄道は普及しており、多くの技術が流用されたはずです。
ボギーという考え方も鉄道車両の4輪ボギーが先行していて、キャタピラも無限軌道と言う
日本語に訳されたりもします。軌道とは鉄道線路のことで戦車も鉄道の上を走る車両という
見方ができます。
 鉄の箱で作られた重量物という点でも共通するところが多く、イギリスが戦車開発を
始めていたころは技術者の移転も盛んではなかったのかと想像できます。
 それらは今後の研究課題です。何か分かったらここで発表いたします。
 


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