戦車の動揺を軽減する装置オイルダンパーについて解説します
● オイルダンパー
基本的なオイルダンパーの構造はこの図のようになっていてピストンとシリンダーと密封された
オイルによって構成されています。オイルの中をピストンが行き来するとピストンに開けられた穴
をオイルが通過する際に抵抗になって戦車の揺れを抑制するのです。
この時、ピストンロッドがシリンダー内に出入りした分の体積に変化があるのでこの図の場合右
のガスが封入されたピストン部分が動いて体積を相殺します。他にも様々な方式がありピストン
ロッドがシリンダーを貫通した物や弁を設けた物などがありますが、基本的にオイルの粘性で
ショックを吸収する点は同じです。
● 戦車の揺れを示す概念模型
戦車はサスペンションによって鉄の箱が懸架されています。オイルダンパーのような装置がなければ
車体の揺れは上図のように長く続いて車体は安定しません。そうすると様々な障害が出てくるので揺れ
を抑える必要が出てくるのです。
● 油槽の中に模型を入れる
これがひとつの回答であるオイルダンパーの考え方です。流体の抵抗力によって振り子は少ない回数
の揺れで停止するはずです。イギリスやドイツは早い段階から戦車にダンパーを取り付け乗り心地や
射撃精度の改善に努めました。アメリカも少し送れてシャーマン戦車の懸架装置を更新しこれに続いて
います。
一方ソビエトや日本はこの装備の導入が遅れ(私の研究不足かもしれませんが)妥協があるように
見えます。
● バネを大きいものにする
最初の模型と同じ重さの錘を二倍の長さと厚さのバネで保持してみます。すると、バネに対する相対
的な錘の慣性が小さくなって揺れは早く収まります。バネがさらに大型になると錘の重さは無視できる
ほどになります。これはパンターがダブルトーションバーという方式で普通の戦車の数倍のバネを使用
した事の再現となります。
トーションバーは単位重量あたりのショックの吸収率がコイルバネより高くそれが床に敷き詰める程
使用されていたので車体の重量が相対的に揺れを生み出さないさないレベルに達したのだと思われます。
● コイルバネの縮んだ状態
図の角bab'はバネの断面から見たねじれを指しています。コイルバネが縮むとこの角の範囲でバネ
自体にねじれ応力が加わっていることが分かります。この応力はバネ全体に均等にかかっており、これ
はトーションバーのねじれとほぼ同じと考えることができます。そこで、コイルバネとトーションバー
に関して単位重量あたりの比較という考え方が成立するのでしょう。
実際の所バネの性能は焼入れの温度管理によるところが大きく、ソビエトのT-34のバネはその
関係で使用時間とともに反発力が劣化していたことが知られています。
板バネのように機械的に摩擦を生み出すことで揺れを抑える装置については「ボギー転輪について4」
で述べましたが、シャーマン戦車の例についても同様ではないかと思えてきました。
このような特別な構造について疑問を述べましたが、よく考えてみるとフリクションによって揺れに
ブレーキをかける構造だったのではないかと思えてきたのです。
M3・M5軽戦車では上のリンクでつながったボギーを使用していますが、誘導輪が直接接地して
揺れを抑えていたためと軽量の車体のため充分な性能を持っていたのではないかと推測できます。
これによって、重量の大きな中戦車以上になると特別な揺れ対策が必要になるという仮定が出てきました。
ナチスドイツは戦車兵の発言を戦車設計に反映していたらしく、初期の戦車には乗員と同数のハッチ
があり脱出が迅速にできました。また車体の揺れに関しても同様で車体の前端を越えるような長砲身は
揺れを激しくする懸念を生みました。停車後の揺れが早く収まったほうが射撃照準が早くできる為一時
期のドイツ戦車は備砲が小さかったのではないかと思えます。
しかし現実的にいってヒトラーの見識のほうが正しく長砲身の主砲への転換が行われました。
戦車兵の揺れに対する要望とヒトラーによる長砲身の搭載命令の相反する要求に対する回答がパンター
の高級なサスペンションではなかったのかと思えるのです。
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● オイルダンパー
基本的なオイルダンパーの構造はこの図のようになっていてピストンとシリンダーと密封された
オイルによって構成されています。オイルの中をピストンが行き来するとピストンに開けられた穴
をオイルが通過する際に抵抗になって戦車の揺れを抑制するのです。
この時、ピストンロッドがシリンダー内に出入りした分の体積に変化があるのでこの図の場合右
のガスが封入されたピストン部分が動いて体積を相殺します。他にも様々な方式がありピストン
ロッドがシリンダーを貫通した物や弁を設けた物などがありますが、基本的にオイルの粘性で
ショックを吸収する点は同じです。
● 戦車の揺れを示す概念模型
戦車はサスペンションによって鉄の箱が懸架されています。オイルダンパーのような装置がなければ
車体の揺れは上図のように長く続いて車体は安定しません。そうすると様々な障害が出てくるので揺れ
を抑える必要が出てくるのです。
● 油槽の中に模型を入れる
これがひとつの回答であるオイルダンパーの考え方です。流体の抵抗力によって振り子は少ない回数
の揺れで停止するはずです。イギリスやドイツは早い段階から戦車にダンパーを取り付け乗り心地や
射撃精度の改善に努めました。アメリカも少し送れてシャーマン戦車の懸架装置を更新しこれに続いて
います。
一方ソビエトや日本はこの装備の導入が遅れ(私の研究不足かもしれませんが)妥協があるように
見えます。
● バネを大きいものにする
最初の模型と同じ重さの錘を二倍の長さと厚さのバネで保持してみます。すると、バネに対する相対
的な錘の慣性が小さくなって揺れは早く収まります。バネがさらに大型になると錘の重さは無視できる
ほどになります。これはパンターがダブルトーションバーという方式で普通の戦車の数倍のバネを使用
した事の再現となります。
トーションバーは単位重量あたりのショックの吸収率がコイルバネより高くそれが床に敷き詰める程
使用されていたので車体の重量が相対的に揺れを生み出さないさないレベルに達したのだと思われます。
● コイルバネの縮んだ状態
図の角bab'はバネの断面から見たねじれを指しています。コイルバネが縮むとこの角の範囲でバネ
自体にねじれ応力が加わっていることが分かります。この応力はバネ全体に均等にかかっており、これ
はトーションバーのねじれとほぼ同じと考えることができます。そこで、コイルバネとトーションバー
に関して単位重量あたりの比較という考え方が成立するのでしょう。
実際の所バネの性能は焼入れの温度管理によるところが大きく、ソビエトのT-34のバネはその
関係で使用時間とともに反発力が劣化していたことが知られています。
板バネのように機械的に摩擦を生み出すことで揺れを抑える装置については「ボギー転輪について4」
で述べましたが、シャーマン戦車の例についても同様ではないかと思えてきました。
このような特別な構造について疑問を述べましたが、よく考えてみるとフリクションによって揺れに
ブレーキをかける構造だったのではないかと思えてきたのです。
M3・M5軽戦車では上のリンクでつながったボギーを使用していますが、誘導輪が直接接地して
揺れを抑えていたためと軽量の車体のため充分な性能を持っていたのではないかと推測できます。
これによって、重量の大きな中戦車以上になると特別な揺れ対策が必要になるという仮定が出てきました。
ナチスドイツは戦車兵の発言を戦車設計に反映していたらしく、初期の戦車には乗員と同数のハッチ
があり脱出が迅速にできました。また車体の揺れに関しても同様で車体の前端を越えるような長砲身は
揺れを激しくする懸念を生みました。停車後の揺れが早く収まったほうが射撃照準が早くできる為一時
期のドイツ戦車は備砲が小さかったのではないかと思えます。
しかし現実的にいってヒトラーの見識のほうが正しく長砲身の主砲への転換が行われました。
戦車兵の揺れに対する要望とヒトラーによる長砲身の搭載命令の相反する要求に対する回答がパンター
の高級なサスペンションではなかったのかと思えるのです。
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