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サイコパスに関する書籍

2017-03-26 21:30:29 | 日記・エッセイ・コラム
 書店でサイコパスの新書を見つけました。文春新書、中野信子著「サイコパス」です。
初版が2016年11月20日というのでサイコパス関連の本としては珍しく最近の本と言うこと
になります。どうやらこの本が刊行された話題が遠回りにネット伝いに私の所へ届いたの
が今回の研究の発端となったようです。

 この本を一通り読んでみましたが、この1ヶ月に私が読んだ数冊のサイコパス関連の書籍
も紹介されていました。日本では90年代に映画を切っ掛けにサイコパスブームが起きまし
たが、その後は続かず専門書籍も数えるほどしか出回っていないのです。なぜ日本におけ
る取り上げが低調なのかはともかく、中野氏の著作は最新の研究結果として歓迎されるべ
き内容となっています。
 内容的には、これまでの研究をベースに日本でのサイコパスの具体例にも触れており、
第五章の「現代に生きるサイコパス」等は実践的な意味合いもあるので、御一読の価値は
あると思います。

 ついでなので、今まで私が乱読したサイコパス関連の本を紹介してみます。いずれも
図書館の蔵書や古本で入手したもので、残念ながら現在のサイコパスへの関心の低さも
反映している訳ですが、その実像はいよいよはっきりして来たという実感は持てました。

 ● サイコパス ─冷淡な脳─  ジェームズ・ブレア他著

 私が最初に読んだ関連本であり学術書の体裁をとっている専門書でもあります。
内容は整理されているものの一般的には聞きなれない専門用語や言い回しが多く、理解に
苦しむ部分もありましたが、内容を箇条書きにまとめる事によって全体の論旨を把握でき
ました。2005年発表の論文を和訳し2009年に刊行されたもので、その内容としては今もっ
て通用するものと思います。
 特に発生過程に関して書かれた部分は、これにとどめを置く所が大きいでしょう。

 ● 診断名サイコパス ──身近にひそむ異常人格者たち ロバート・D・ヘア著

 古書で手に入れた本ですが、偶然にもサイコパスに関する先駆的書籍でした。
1993年の著作を1995年に和訳刊行したものなので、情報的に不足している部分もあります
が、臨床心理学の立場から豊富な実例とともにサイコパスを解説しています。

 ● サイコパス・インサイド  ジェームス・ファロン著

 神経学者である著者がある日典型的なサイコパスの脳の動きを示す写真を見つけ、それ
が自分の写真であることに気付くというドラマチックな始まり方をする本です。
 サイコパスである本人がその内心を明かす形で著述するという珍しい形になっています
が、その内容は的確なもので信頼がおけます。
 彼の周囲の人間も、彼自身もこの事実を知らず、このことがサイコパスは発生過程によ
っては普通の社会人になることを示しています。これを私も支持して、軽々にサイコパス
のレッテル貼りをすべきではないと考えるようになりました。

 ● 中田光彦著作のサイコパス関連書籍

 氏はジャーナリスト的な立場から2000年代に複数の著作を執筆しており、入手しやすい
サイコパス関連の書籍となっています。その内容は実在のサイコパスの犯罪と顛末をルポ
ルタージュのように綴って、心理学的解説を試みたものです。
 生々しい証言と法廷闘争の内容から、サイコパスが必ずしも殺人を犯すものではなく、
巧妙な詐欺においても大きな傷跡を残すことを活写しています。
 ただ、これらの例は関係者の利害関係が多く絡んでおり、他の関連書籍も読んで中立の
立場から判断を下すべきでしょう。

 ● オブラー博士の危険な患者(クライアント) オブラー・マーティン著

 精神科医である著者が、ある時関わった青年から執拗なストーカー行為を受け命の危険
を感じるに至り、彼がサイコパスであることに気が付くという内容です。
 ノンフィクション小説のような流れとなっているので臨場感はあるものの、純粋にサイ
コパスについて論じている訳ではないので、これも関連書籍を併読した方が良いでしょう。


 現在、数冊の関連書籍を入手しようとしていますが、最新の情報に関しては冒頭に紹介
した中野氏の著作で充分だと思います。
 サイコパスは普通の人間と見分けがつかず、危険な行動をする者や巧みに犯罪を隠蔽す
る者がいます。犯罪に手を染めていなくても平気で嘘をついたり良心や共感に欠けたりし
ます。その一方で害のない人間であったり役職によっては必要な人材となる場合がありま
す。誠に扱いにくい存在であり、それ故に良く学習して対策を心得ておくべきと私は考え
ています。

  ────────────────────────────────────

 前々回に紹介した「ザ・サード・ウェーブ」を著述した原著「ザ・ウェーブ」を入手し
ました。モートン・ルー著の原作は1981年の書で、その和訳に新たに解説ページを加え、
1995年に再版されました。
 全体的にジュブナイル小説のような脚色があり、説明不足からか8ページの解説が加え
られたようです。周囲の状況が落ち着いたら読んでみたいと思います。

 
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サイコパスに関して

2017-03-19 22:14:17 | 日記・エッセイ・コラム
 世間的にサイコパスが話題になっているのは映画や架空の物語の中です。そのために、
サイコパス=殺人鬼という間違った印象が流布されています。サイコパスの研究は、ここ
10年で大きな進展が見られ大まかなその発生過程が解明されつつあります。しかし、い
まだに不明瞭な部分が多く研究はこの先も継続されていくことでしょう。
 例えばサイコパスの遺伝的特質に関してはそういう家系があるらしいと言うことは分か
っていますが、遺伝子のどのあたりにその因子があるのかは特定されていません。また、
遺伝的家系にあっても普通の人間として生活している人は多くいて、発生過程にはまだ解
明されていない部分が多いのです。
 そして残念なことに今の所分かっている部分も、前述の一般的な印象に押される形で知
られずにいるのです。私自身もサイコパスと聞くと真っ先に映画の猟奇殺人の犯人像を思
い浮かべてしまいます。そうした事例は事実に元づいているものの、ごく一部の稀な例と
言えます。
 以下、私が調べた範囲で分かった事を書いてみます。ただ、ネットでよくみられるサイ
コパスを特定する問診票(PCL-R)等は書きませんので、関心のある方は調べて頂きたいと
思います。

 ● 発生過程

 大まかに次の2つの因子が元で反社会的形質が形成されると言います。

  1 先天的な脳障害
  2 学習過程での不全

 1は遺伝の可能性を示唆していますが、前述のとおりまだ未解明です。また2は健常者
であっても環境によって犯罪者となりうる事をもさしているので、1と2の二つがそろわ
ないと反社会的なサイコパスとはならないと言います。
 脳障害は前頭葉の機能不全と偏桃体にある情動を司る部分の機能低下がサイコパスには
顕著に表れると言われています。これを知るには脳の断層写真などでその働きを計測する
必要があります。

 子供のころは誰でも社会の規範や友人同士のコミュニケーションを学習する過程にあり
ます。その間に失敗したり間違えを修正したりして社会人としてのルールを学習して行き
ますが、サイコパスの脳障害を持つものはこの学習が他人より努力を要すると言います。
そしてもし、虐待とか悪い友人に犯罪に誘われたりした場合、それがその後の人生に決定
的な悪影響をもたらし反社会的な行動を繰り返す人格を作ってしまうのではないかと言う
のです。
 サイコパスの特性は衝動的で、計画性に乏しいと言われています。目の前の利益に飛び
ついてしまって、その行動がどういう結果を生むのかとかどんな罰が与えられるのかと言
う部分にまで考えが回らないのです。そんな人物に、犯罪によって暴利を得たり、誰かの
所有物を巻き上げたりと言ったことを教え込めば、まっすぐその道に進んでしまうことで
しょう。

 こうした部分を見る限り、1000人に10人というサイコパスの比率も、そのまま犯罪者の
数を表しているわけではないと分かります。むしろその半数以上は社会に溶け込んで生活
している事実を裏付けているのです。また、一般的な子供たちはサイコパスと似たような
行動を取ることがありますが、まだ学習の途上であるわけですから、正しく指導・教育す
れば改善されると考えられます。

 ● 実質的な人数

 脳障害をもって生まれてきたサイコパスは、私の考えでは三群に分けられると思います。

   1 正常な成長過程を経て普通の人間として生活している群
   2 何らかの異常はあるものの犯罪までは至らず社会生活を送っている群
   3 反社会的な犯罪者となり一般社会の外で生活する群

 これらの群にはその境界例があります。実質的には個々の事例に帰するわけです。
 この内、映画などで扱われるサイコパスは第3群の者を指します。実際の場合、第3群
に関しては警察当局に取り締まりにまかせるべきレベルの問題となります。また、第1群
の場合その存在を私たちが特定することはあまり意味がありません。多少変わった人とか
めげない積極的な人で虚言壁があるくらいのものでしょう。逆にそれを指摘することは魔
女狩りのように無益な結果となるので注意が必要です。
 私たちが問題とすべきなのは第2群のサイコパスであり、その異常性は世の中に波紋を
広げるので、早期に対処しなければなりません。特にネット社会となった昨今では情報の
流通の制限が難しく、良心の呵責のない匿名の人間による情報や印象の操作は特定・追求
しにくい為、致命的な間違いに至って初めて抑制が働くという事態になってしまいます。

 その数が単純に3分割されているとは思えませんが、1000人中の10人のその1/3と見る
ことはできます。ただしアメリカでは刑務所に収監されている犯罪者の半分はサイコパス
であるという研究結果もあり、その犯罪率の高さは特筆されるべきでしょう。

 私は社会に出て、今思い返せばそれらしいと感じた人物を何人か見ています。しかし暴
力沙汰になった様なことは一切なく、また確かな確証もありません。しかし、ネット上に
おいては頻繁にそれらしき言動を繰り返す者を見かけますし、範囲を広げてニュース等で
見ると最近は顕著にサイコパス的性格を表した人物を多く見かけ、その数が増大している
という説を信じたくなります。
 一つの説として、サイコパスも時代とともに進化して、より衝動的に殺意に至る第二世
代が発生していると言う研究者もいます。
 しかし、私の周囲で直接関わりのある人物に関しては、健常者が別の問題によって迷惑
行為を起こしているのではと考えています。それは単なる誤解かもしれませんし精神的な
疾病が関わっているのかもしれません。また、もっと何か別な事情があってそうせざるを
得ない動機があるのかもしれません。軽々にサイコパスの関与に決めつけるべきではない
と思いますが、わずかな可能性は捨てきれずにいます。
 その理由に、何年たっても沈静化しないという事があげられます。罪悪感がないために
サイコパスは自制が困難であり、何度でも同じ間違いを繰り返すからです。

 ● 障害としてのサイコパスはなくならないのか

 残念ながら、その把握と治療に関しては専門家と政府に任せるしかありません。断片的
な対処法は見つかりますが、あくまで場当たり的な方法の域を出ません。
 曰く、サイコパスに反社会的な行動を禁止しても効果はなく、そういう事をしなくても
社会で生きていける事を気長に訓練して行くしかないそうです。また、一般人では対処は
不可能なので直ちに逃げ出せという論者もいます。実際、本当にサイコパスが自分に関わ
ってきたらそうするしかないのは明らかなのですが、それは大きな地震がいつやって来る
かと言った問題と同義で、多くの人は実感がないと思います。
 業界人の中にもサイコパスの性質を色濃く見せている人は何人もおり、宇宙戦艦ヤマト
の故西崎プロデューサーなどは良くそれに当てはまります。彼ほどの偉業を成し遂げる事
は常人には非常に難しいと誰もが言いますが、一方でその弊害に関しても多くのエピソー
ドが残っています。その仕事に関わりたいと思う人が多い一方で、非常な危険もあった訳
です。
 もし、どこかで良心の呵責や罪悪感のない人物を見かけたら、その人がいくら魅力的な
人物に見えても距離を置くべきではないかと思います。

 ● 私自身に関して

 これは愚問かもしれませんが、私自身がサイコパスかどうかという問題です。
問診票によるといくつかの特徴に関して合致するものがあります。そして一部の人間から
(おそらく冗談でしょうが)サイコパス呼ばわりされていたようです。
 これに関してはサイコパスの感情の薄さによって完全に否定されます。エモーショナル
な映画や音楽によって私は涙を流して感動することがありますし、作品内にも感情を込め
ることができます。本物のサイコパスがこの様子を見たならば、女々しいとか弱い人間等
と思うことでしょう。これは根本的な脳の構造から来るものであり、演技などで補えるも
のではありません。
 また、サイコパスは異性との関りが明け透けでだらしなく、何人もの異性との間で性的
関係を持つと言いますが、私にはそのような関係は皆無です。無味乾燥な人生とは言いま
せんが普通の人より低調だとは言えます。
 むしろ私には、サイコパスがターゲットにしやすい人間としての形質があると思えるの
ですが、今の所どういう所がそれなのか特定できていません。ネットによってそういう情
報が広がると、餌食を求めるサイコパスの目に留まり、巧妙な手段で接近を図る事は理解
できますが、そこまでして何を得ようというのでしょう?
 それに関しては今後の研究課題だと考えています。
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