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なぜⅣ号戦車の砲塔前面装甲板は50mmのままだったのか

2015-12-20 22:08:37 | スケッチ
 ● 砲塔前の車体内の梁

 先週、Ⅳ号戦車の車体の強度について、弱い部分があったのではないかと考察しました。
その部分について調べたところ、やはりⅣ号はその部分が強度的に弱かったらしいと分かりました。

 Ⅳ号戦車は操縦士の操作性を確保するためギアが右にオフセットされておりエンジンも右よりに
セットされています。それとバランスをとるため砲塔が逆に左にオフセットされていますが、この
ため砲塔の旋回ベアリングは車体左側面に近くなっており、右側には若干の空きがあります。
車体内の天井を見るとその部分にL字断面のリブ(上図の赤いL字)がボルトで取り付けてあり、
後から補強した様子が伺えます。このL字断面のリブは機関室の隔壁から上図の梁までくの字型に
設置されていますが、なぜここを補強する必要があったかと考えると、車体上面の強度不足が考え
られるのです。
 Ⅳ号戦車の車体上面板は14.5mm厚だったものが25mm厚に増強されていますが、梁が
強化された気配はなく、丸い肉抜き穴が塞がれた形跡があります。梁には微妙なカーブをつけて
強度を増していますが、右図のパンターのようなリブはありません。
 パンター戦車の梁はよりアーチ状に近く、リブがT字型に溶接されてさらに補強されています。
70口径という長砲身と重い砲塔の動揺を受け止めるため、この部分は重要な部分だった事が
伺えます。最初から洗練された一体構造だったパンターの車体では、このような構造ができた
わけですが、上下の車体を別々に作りボルト結合していたⅣ号では、思い切った補強ができなか
った可能性があります。

 Ⅳ号とよく似た構造のタイガー戦車では、このような強固な構造の梁になっています。
厚いリブがブリッジとなって肉抜き穴がいくつも開けられています。
 この構造を見るにつけ、なぜⅣ号の梁にもリブをつけなかったのか疑問に感じるのですが、
理由はわかっていません。おそらく強度を出すために微妙なカーブをつけたのが返ってアダと
なって補強しにくかったのかもしれません。

 一方、Ⅳ号と同時期に開発されたⅢ号戦車では、上部車体の幅が砲塔幅と同じくらいに絞られ
ており、砲塔前のハッチもないため、強度的に充分であったと思われます。
 Ⅳ号が砲塔前面装甲を50mmから増強できなかったのに対し、Ⅲ号では57mmと若干
厚いレベルまで増強しています。もっともこれはⅢ号の主砲が60口径50mm砲止まりだった
関係もあると思うのですが。

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