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メカデザイナー山本薫のBlogです~2006・11・30 お仕事募集中 sp2q6z79@polka.ocn.ne.jp

今年を振り返って 2010

2010-12-31 20:47:30 | 日記・エッセイ・コラム
  •  今年の日本の経済状況は、前年と引き続き低調な据え置き状態で回復の兆しが

まだ見えない上に、政治的・軍事的に不安定要素が多く現出してきた年でした。

旧来からの世代交代がいよいよ本格的になった事で、これまでの経済の構造にも

変化がおとずれそうです。ゲーム産業も頭打ち傾向が顕著になって、ユーザーの関心も

携帯ゲーム等への移行が目立っています。

  • 091_b

 このような暗中模索の中でいくつか目立つ動きもありました。宇宙戦艦ヤマトの実写

映画の公開です。

 この古いコンテンツのリニューアルにはある意味があります。ここ10年、あらゆる映像

コンテンツが創作されましたが過去の名作を超えるほどの知名度は得られなかったと言う

現実があり、満を持しての登場となったのがヤマトだと言えるのです。

 これに関して、今年の10月ごろ某所である質問がなされたことを思い出します。

 「70年代には宇宙戦艦ヤマトが80年代には機動戦士ガンダムが90年代には新世紀

エヴァンゲリオンがあったが、2000年代には何があったのか?」という問いです。

アニメ業界には10年ごとに一大センセーションを巻き起こしたムーブメントが発生し、

その輝きはいまだに衰えていないと言えます。それでは2000年代にそれに匹敵するもの

はなんであったかという問いに、私は、バイオハザード等のゲームではないかと答えました。

  • 108_b

 2000年以降、急速に発展したゲーム業界は、潤沢な資金や製作環境もあって優れた

人材を多く獲得して行きました。製作側の人材のみならずユーザーも漫画・アニメなどから

ゲームと言う新しい刺激へなだれ込み、それらに取って代わるエンターテインメント産業に

なったのです。

 ゲームの内容も最初は単純なものであったのが次第に複雑なシナリオになり、ついには

ハリウッド映画となった作品をも多く輩出しました。その結果、文化的な流れにおいても

アニメからゲームへ、と言うパラダイムシフトが起きたのではないかと私は推察します。

 ここ10年の流れはまさにそうした動きが現出していたと言えるでしょう。その代表作が

バイオハザードではないかと言ったのですが、2000年代の代表的ゲームタイトルに

関して言えば異論もあると思います。

 ただ、最近の動向を見るにつけ、次の2010年代の代表作は現在のゲーム業界から

出るとは限らないと考えています。ゲーム一作の製作資金は年々肥大化し、近年その極に

達しました。ゲーム機自体も高性能化し、新ゲーム機の更新にともなって旧タイトルを

リメイクすると言う商法も通用しがたくなってきています。

  • 064_b_2

 一方で、携帯やノートPCなどの高度化やモバイル通信の高速化に伴って、ユーザー

にも変化が訪れているようです。漫画や小説を手元で読むことが出来るⅰPadなどの

機器は旧来のメディアをゲームと同じ画面へ引き出しました。こうした現象は、ネット上

にメモリーやプログラムを存在させユーザーが必要に応じてアクセスして利用する

クラウドコンピューティングの活用を想起させます。

個人レベルで普及するモバイル機器は単価が安いかつての漫画やTVアニメの伝播と

ベースが似ていると言えます。

 こうしたことから、2010年代の代表作は漫画・アニメ・ゲーム等の垣根に関わらず

ネット上から発生するのではないかという考え方もできるでしょう。

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 これからの様々な可能性の前にあって、製作現場は環境整備に対応してゆかねば

ならない上に、製作者の保護も行わなくてはなりません。

 しかし、私の見た感じでは今までの状態では製作者の保護は全く不十分に見えます。

私自身、20数年に渡って私生活をストーキングされ相当の被害を受けたにもかかわらず

それらへの対応は後手後手になっています。ネットの普及は創作者にとって巨大な

泥棒市場の現出となりかねない危険をはらんでいます。全く残念なことに、ここ10年で

その既成事実の積み上げが出来上がってしまった現実があります。これは業界全体に

とっても避けねばならなかった事である上に、消すことのできない汚点と言えましょう。

 これを覆すには、過去の事例においてその違法性の摘発と始末をはっきりつける

以外に方法がありません。そうしないと違法な手段が通用することに味を占めた者が

いくらでも脅迫的手段を使って創作者を食い物にするでしょう。それは今までも散々

繰り返されてきた明白な事実と言えます。

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  さて、わたくし事においては今年念願のゲームの仕事をした一方、肉体的な限界

も強く感じる年になりました。アンチ活動を繰り広げるストーカーとの決着もいまだに

付いていません。後退はしなかったものの前進したとも言いがたい年でした。

 現状維持と様々な準備を整えることに終始したことは、しかし日本の状況を鑑みるに

誠に幸運であったと思うことができるのです。

  • 044

 これは今年のクリスマスに作ったケーキです。毎年、市販のロールケーキ等を芯に

クリームを塗って作っています。今年も一年無事だった感謝の意が込められています。

来年も作ることが出来れば良いな、等とと思っています。

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今年見た映画

2010-12-30 19:32:13 | 日記・エッセイ・コラム
  今年もあと一日半を残すのみとなりました。ちまたではコミックマーケットの最中だそうですが
毎年私は参加していません。そこで、今年見た映画について感想など綴ってみようかと思います。
もともと、ここ10数年は映画館にほとんど行かず、ビデオやDVD観賞に頼っていましたし
TV放送の映画もよく録画しました。
 宇宙戦艦ヤマトの映画(SPACE BATTLESHIP ヤマト)は私にとっても特別のイベントで、
久しぶりに劇場へ足を運びました。劇場で観賞するのはやっぱり良いものです。
 そしてここ5・6年はレンタルビデオ店がDVDへソフトを入れ替えたり閉店するのにともなって
レンタル落ちと呼ばれるビデオソフトが多く市場に出回るようになりました。画質云々を問題
にする向きもありますが、映像を所有している事と無い事とでは雲泥の差があります。
安価で大量に発売されるこれらのソフトの中には貴重な作品も散見され、それを見つける
のも一つの楽しみであり、私は精力的に探して自分のアーカイブスを作りました。
 また、過去の埋もれた秀作をDVDとして再発掘する動きも盛んで、これも勉強になる教材
として購入したりしています。
 こうした映画鑑賞を有効な学習とするには、それぞれの映画の関連や背景を知りポイントを
押さえる必要があります。そして自分が何に感じたか悟ることも大切です。
 そのようにして今年は50近い映画を鑑賞しましたが、心に残る作品をいくつかピックアップ
してみましょう。
────────────────────────────────────
   ● アルファビル (1965年 フランス)
 フランスでは1960年代にヌーベルバーグというムーブメントがあり、その旗手でもある
ジャン・リュック・ゴダール監督の手になる唯一のSF作品がこの映画です。
 SF映画でありながら特殊撮影は一切無く、全篇パリ内でのロケーション撮影で俳優の演技
演出や効果音を上手に使って後世に多くの影響を与える作品が製作されました。
 日本特撮「ウルトラセブン」の某エピソードにその影響が見られますが、ハリウッドSF映画
においてもその影響は大きく「ブレードランナー」等は非常に描き方が似ていると思います。
 SF映画と言えば科学考証や舞台装置やガジェットの派手さと思われがちですが、この作品
の示している所は、SFと言えども人間のドラマでありSFらしさは雰囲気の演出が大きな
ファクターを占めているという点ではないか、と考えられます。
 それは次に紹介する作品にも言えることなんですが、現代の派手なSF映画でも見習うべき
点ではないかと思えます。

   ● ラ・ジュテ (1962年 フランス)
 一種の実験映画でありますが、28分と言う短さの中でしっかりとした物語が展開されています。
上記のアルファビルに影響を与えていると見られますが、確証はありません。
 全篇がモノクロスチール写真とナレーションによる紙芝居形式で、一部動画が挿入されています。
それがドキュメンタリー風の演出となり独特の緊張感を演出しています。
 タイムトラベルによって現在の状況を打破しようとする政府の実験によって、主人公は過去に
未来に赴きます。その過程において語られる彼の記憶は、感傷的に我々の心に訴えかける部分
があり、その個人的事情に踏み込んでくる政府の科学者の冷淡さは、第二次大戦中の精神的
拷問を伴う尋問風景の再現とも取れます。
 タイムトラベルはケミカルな方法が描写されており、はたして精神的な旅が物質的な時間軸と
フュージョンするのかと言った疑問は残ります。しかし、こうした未知の技術については、現在の
我々にも自由な発想の展開が許されているわけで、そうした可能性について大いに検討すべき
ではないかと考えさせられました。

   ● MOON 月に囚われた男 (2009年 イギリス)
 つい前年公開されたSF映画で、私は英語版DVDを手に入れて観賞しました。
残念なことに日本語字幕が無いので半分ほどしか理解できませんでしたが、見た感じで大体の
ストーリーは把握できます。舞台は月面の小さな採掘基地であり、セットもその内部が多用されて
他は月面作業などの地味な画面の映画となっています。
 このセットデザインが最近の派手なデザインの未来ではなく70年代SF(もっと直接的に言うと
1968年製作の2001年宇宙の旅)を意識した抑えたデザインになっている所が良いのですが、
その内部で展開されるサスペンスが、究極的には自分ひとりしか頼ることが出来ない現代人の
苦悶をよく表現していて共感するところがありました。

  ● π (1998年 アメリカ)
 公開後まもなくレンタルで見たソフトを入手して今年再び観ました。
 π(パイ)とは、言うまでも無く円周率のことですが、この映画に出てくる数値とは関係ありません。
暗に難解な数字列が世界を形作っている法則と深く関わっていることを指しているように思えます。
 主人公は上記のMOONの主人公のごとく孤独で、自室で電子計算機を相手に株価の予想をする
プログラムを開発しています。そのさなか偶然見つけてしまったある数学の命題を解くことに人生
を捧げる事になります。
 舞台は都会のただ中で、月面と違って周囲の様々な人間と関わりがあり、彼の人生に干渉してきます。
しかし、数学の天才である彼は命題の解決に取り付かれ、それが彼を孤独にしているのです。
 孤独のうちに彼は、世界を支配している神の法則を自分が理解できることを悟りますが、それを自ら
放棄します。それまでの過程で、彼はほとんどのものを失い人間の身勝手さも見てしまったのです。
私は彼の無常がなんとなく分かる気がしました。

  ●バーチャルジャッカー (1990年 イギリス・ハンガリー)
 日本ではほとんど無名のハンガリー映画でありSF映画です。ネット上で検索をかけると某所の
アーカイブスの解説に行き当たり、
>近未来, ある東欧の都市に繰り広げられる無軌道な人々の事件.
>ハンガリー映画は, 1960~70年代国際映画祭で注目を浴びたが, 1989年の民主化以降映画へ
>国家的助成の削減などで転機に立ち, 外国との合作などで新しい道を模索中という
 と言う一文以外は個人的な感想ページがヒットするのみでした。そして、それらの感想でもB~C級の
評価しか得られていません。
 主人公は近未来のスラムで気象観測の仕事をする無口で孤独な青年で、ギャングまがいの友人が
いるのみです。バスタブの水に漬かって宇宙の夢を見る彼はコンピューターに関しては天才的で、
彼の仲間と共にコンピューターでギャンブルの勝ちを予測し儲ける計画を実行します。
 彼の気象予報のアルゴリズムがギャンブルの予想に一役買っているらしいのですが、説明不足でうまく
伝わっておらず、そこが残念な点です。
 果たして彼に、金に対する欲望があったのかは分かりません。金を儲けてスラムから抜け出すこと
を切望していた友人がこの計画を成功させたともいえます。
 内向的で天才的な主人公と肉体派で享楽的な彼の友人との奇妙な友情関係は、しかし突然終わり
を告げ、物語は感傷的なエンディングへ向かいます。
 こうしたプロットを正しく理解できれば必ずしも悪い映画ではなく、むしろ描き方の稚拙と予算や撮影
機材の少なさが惜しまれる所です。
 最近NHKでシリーズが放送されている「カイルXY」というアメリカのTVシリーズSFが、根幹ではこれと
通じるところがあり、20年前の無名のハンガリー映画人が狙った所は正しかったと思えます。
────────────────────────────────────
 これらの他にも様々な映画を観ました。当たり外れもありますが、私はあまり派手な映画は好きではなく
低予算でも製作に工夫をこらした作品を好んでみる傾向があります。
 今回はSF映画を紹介しましたが、ジャンルにはこだわらず良いものを見たいと常々考えています。
以前、ここでプロットを紹介した邦画の忍者映画のオリジナルを購入したので、そのうち見る予定です。


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ぼくの考えた戦艦 の内部構造 (笑い)

2010-12-11 22:06:00 | スケッチ

   ●航空戦艦 能登 の内部構造

  • B_b

 以前紹介した航空戦艦能登の内部構造を考えてみました

大和型戦艦の内部図解を元にレイアウトをいじって実現可能か探ってみたのです。

上図のように二層の航空機格納庫を持ち、艦首に四連装40cm砲塔二基を持ちます。

斜め飛行甲板は着艦専用で艦尾の二層の発艦甲板が飛行機をカタパルト発進させる

部分になります。

これによって、航空機は艦攻/艦爆が約20機、戦闘機が10数機搭載可能なことが

分かりました。これは小型空母一隻分にあたります。

40cm四連装砲塔が46cm三連装砲塔と同じ大きさにまとまるかはまだ分かりませんが

とりあえず斜め飛行甲板と上部構造物のレイアウトが内部に及ぼす影響について

シミュレーションしてみました。

 結果としては、一応可能であるという結論になりました。

ただし、思ったほどバイタルパートが縮小しないことも分かりました。もう少し改良の余地

があると思います。

 バイタルパートとは、艦の主要な部分である機関・ボイラー・砲弾薬庫などを収めた艦の

中核と成る部分(上図薄い赤色の部分)で、非常に強固な装甲板の箱となっています。

自分の主砲と同等の砲で撃たれても貫かれることなく、かつ魚雷の攻撃にも耐えるよう

設計されており、当然ながら非常に重量を食う部分でもあります。

 バイタルパートを小さく作ることを出来れば、それだけ艦を軽く作ることが出来、かつ

節約した重量を装甲板の厚みに還元できるわけです。航空戦艦能登の場合、そうして

節約した重量を飛行甲板の装甲へ振り向ける予定でしたが、ほとんどその余裕が無い

ようです。

  ●V型飛行甲板の場合

  • B_v

 以前、アイディアスケッチを掲載したV型飛行甲板のレイアウトを試してみました。

このような飛行甲板の利点は、飛行機が着艦する時に上部構造物の引き起こす乱流

の影響を受けないことです。

描画ソフトを使って各部を移動させ、飛行甲板は単純に上下反転させてレイアウト

しましたが、一目見て分かる通り、上部構造物が限界まで後ろへ来てしまいました。

イギリス戦艦ネルソン級と同じくボイラー室とタービン機室を前後入れ替える等しても、

バイタルパートは非常に長く伸びてしまい、装甲厚が圧迫される事が分かります。

 このような時、水平防御に重点を置いた建艦によって予備浮力を確保する方法

もありますが、それはアメリカ空母等によく見られる構造なので、日本戦艦である能登

の場合考証上使えない方法だと思いました。

 

  ● SPACE BATTLESHIP ヤマト

 今日、映画観へ見に行きました。非常に良くまとまった作品で全年齢向けに楽しめる

作品に仕上がっています。

 ヤマトといえば一作目のTV版アニメと二作目の劇場版さらば宇宙戦艦ヤマトがアニメ史

における金字塔として存在していますが、それらを上手く生かしてCG画像全盛の現代

に蘇らせています。

 ただ、映画としてヤマト中心に描きすぎだったり、冗長な演出があったりで、二割がた

隙があるようにも感じました。ソフト発売時に完全版などのタイトルで修正を入れても良い

のではと思います。

 日本におけるSF映画は宇宙船が活躍するスケールの大きいコンテンツでは全滅状態

で、今回のヤマトの成功はその意味でも貴重な物と言えましょう。

コメント (2)
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