T.N.T.-SHOW

メカデザイナー山本薫のBlogです~2006・11・30 お仕事募集中 sp2q6z79@polka.ocn.ne.jp

ガングリフォン 二○式

2008-08-30 00:23:33 | 設定画

 リクエストのあった二○式の設定を掲載します。

二○式は私の受け持ったAWGSのなかで最後に描かれました。

他の設定の影響で製作時間が圧迫され、細かい詰めが甘くなり、

完成度の低下をきたしてしまいました。

 ● 二○式

  • Photo

 画像は後で描かれたポーズラフを先ほど塗ったものです。

 日本的な兵器の特徴を要求され、現用自衛隊兵器を研究したものの

それは明確な定義のむずかしいものでした。強いて形で言えば四角い

と言う事が言えます。最近の日本の陸上兵器は寸法と重量の制約から

寸詰りでこじんまりとしており、容積を多く取るためか四角いのです。

 時間もないのに煮詰まってしまい、過去のガングリフォンからデザインを

参考にしようとも考えましたが、それは有効な考えではありませんでした。

12式は全く日本的ではなく自由にデザインされた事は明らかです。

 ● 二○式 コンセプト

Photo_2

 二○式のデザインは、このようなコンセプトから始まりました。

胴体の中心に円筒形のコクピットモジュールがあり、これが脱出装置

を兼ねています。上半身は戦車の砲塔のように旋回ができ、ここに

砲や弾薬がセットされます。

 主翼は使わないときは折りたたまれ、邪魔にならないように配慮します。

その他、推進器の推力軸が重心を押し上げるように配置し、動力のリンク

や砲弾の通路、装甲スペースなど、バランスを取るように考えました。

 ● 二○式 三面図

  • Photo_3

 こうして時間の切迫する中描かれた三面図ですが、モデリングチームは

この図面を無視して独自のバランスで3Dモデルを作ってしまい、時間がなかった

為かリテークもなされなかったのです。

 これらを行ったモデリング班はその後すぐやめたと聞かされました。

向うでは、製作スタッフが簡単に退職するのは珍しくないそうです。

 Photo_4 ● 二○式 背面

 コンセプトを詰め込んだために、立体的に複雑になって二次元の絵では

非常に描きにくい物になってしまいました。

 コクピットへのアクセスや推進装置の位置、兵装・翼の配置などは正しい

物ですが、いかんせん時間がなく細部のディテールがついて行きません。

 ● 二○式 細部補稿

  • Photo_5

 腕はスライドして伸びるようになっており、横転した時のジャッキとして

使えるよう配慮されています。この部分にミサイル等をつけることも考え

ましたが、造形が複雑になるので断念しました。

 ● 二○式 改稿

  • Photo_6

 この機体もユーザー視点が単純な点が指摘され、頭部の後ろに電子戦

装備が、砲弾用弾装にバスケットが付け足されました。

 また、担当氏が脚部のディテールや構造に不満を表明したので、下のように

設定画が描き足されました。

 さらに、初代ガングリフォンのように股間の幅を広く取るべきと主張したので、

私が折れる形で改案が描かれています。しかし、これが生かされたかどうかは

確認していません。

 ● 脚部 補稿

Photo_7 Photo_8

 結局、二○式は私にとって位置付けのはっきりしないメカになってしまいました。

もし、他のガングリフォン2機分の時間を使ったなら、確実に良いものなったはずで、

返す返すも残念に思います。

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ガングリフォンのエンブレム

2008-08-28 00:53:44 | 設定画

 現在応募している案件がモンスター関連のデザインなので、

少し関りのある設定を紹介しましょう。

 本格的なモンスターを描いた事が何度かありますが、現在

スケッチ画が見つからないので後日にいたします。

 ● エンブレム 1

  • Photo

 少し仕事に余裕があった時期にエンブレムを描いてみないかと言われ

いくつか描いてみました。ガングリフォンには最初に設定されたグリフォン

のマークがありますが、少し変化をつけるつもりで頭部が鳥類の物を

描きました。

 ● エンブレム 2

  • Photo_2

 これが第二稿くらいになると思いましたが、ゲーム製作の進行

が思わしくなく、担当氏のエンブレムに対する関心はトーンダウン

して行きました。正式な発注から

 「そう言うものがあった方が励みになる。」

程度の言い方になり、次のイラストを提示したころには、別の仕事

にかかって欲しいと言われ、これらのデザインはお蔵入りとなりました。

 ● エンブレム 3

  • Photo_3

 コミカルなイラストをマークにしたものです。

ロケットマンには元ネタがあります。

  • Photo_4

 20式のスタイルや構造を説明したイラストです。

15年ほど前にパオパオチャンネルという子供向けTV番組があり。

そこに出演していた関根勤がセキネ大使いう寸劇(?)をやっておりました。

 マグマ大使のパロディーなのですが、彼がロケットになる訳にはゆかず、

この絵のようにロケットを着たのです。

 当時、放送用の小道具を作るアルバイトをしていた私は、そのロケット

を作ったのですが、それがこのマークの元ネタです。(長い前フリですね)

 これらのマークは不採用になりましたので、ガングリフォンとは正式な

関わりはありません。

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ガングリフォン K-MACS

2008-08-27 00:59:04 | 設定画

 先日申し込んだシナリオ案件は見送りとなりました。

社名を伏せての応募だったのですが、以前関りのあった会社でした。

しかし、完成して納品されたゲームを明確な理由もなく発売中止にした

過去がありましたので、不採用となってむしろホッとしたというのが本音です。

 ● K-MACS

  • Kmacs

 リクエストがありましたので、K-MACSについて解説と三面図の掲載をします。

ゲームのデザイン請負について契約した後、各国のガングリフォンが登場する旨を

私は告げられました。私は一機の新型ガングりフォンしか想定していなかったので、

急遽資料収集とデザインにかからねばなりませんでした。

 当時の韓国兵器において、その国独特のデザインを見せていた物は少なく、唯一

国産戦車K-1にその片鱗が見られました。そこで、ベースとなった米国のM-1と

比較して、どのあたりが韓国的であるか抽出する所から始めるました。

 K-1戦車は国情に合わせた軽量化のため、外観は微妙な面角度を持った複雑な

構成となっており、これをある程度取り入れた無骨な感じを出す事としました。

 上図はゲームが完成した頃に自分で描いたポーズラフです。

ゲーム内の正面立ちポーズがあまりにカッコ悪く、どうすれば解決できるか探った物

ですが、既に後の祭りでありました。

 ● K-MACS 三面図

Kmacs_2

 三面図自体が見つからず、図はパイロットのシルエット入りのものです。

内部は非常にタイトで、人間の比率が大きいように感じます。

 ● K-MACS ディテール

Kmacs

 このように細かいディテールまで描きましたが、ゲーム製作チームからの

指摘で背面についてりテークが繰り返されることになりました。

以下、その顛末を追ってみましょう。

 ● 背部ディテール 初期

Kmacs_2 K-MACSのエンジン下面と弾装部分のディテールが不明なので

加筆したものです。

エンジンはヘリコプターの物を参考に冷却用空気の導入を考えまし

た。ディテールの不足を指摘されての処置ですが、韓国側スタッフ

は納得せず、背面の形状の変更をする事になります。

  •  ● 背面 改稿

    Kmacs_3  打ち合わせでゲームアーツに出向いた先で描いたラフです。

     いわゆるユーザー視点という後方斜め上から見たとき背面が

    板状に見えるのを防ぐため二つに分けることになり、その場で

    ラフを描きました。

     しかし、向うの真意は弾装を二又にすることだったらしく、

    (左のスケッチ)それにあわせて次のラフを描きます。

     ● 背面 改稿 2

    Kmacs_4  見栄えを考えて、排気管を派手にして弾装の形状も工夫します。

    内部の弾丸の配置は、上図左のように考えて、二又という要求を

    クリアーしました。

     排気管は元もままで良いと指摘され、弾装の角度は開いた物を

    指定されました。

    •  ● 背面 改案決定稿

    Kmacs_5  実を言うと、この弾装の形状は80年代ロボットに良く見られる

    背中に突き出した推進剤タンクそのもののイメージに思えます。

    私はそのことを告げましたが、それで良いと言われました。

     当時、某ロボットアニメに初期案のような弾装を付けたデザインが

    出現してしまい、遠まわしに変更を求められたのが真相ではないか

    と私は見ています。

    •  現実のゲームプレイでは多くの人がコクピット視点を選択し、この混乱は

    後から考えれば無用に時間を取っただけのように感じます。

     私は、このゲームのデバックに関わりましたが、通信対戦で1対1で接近戦を

    行った場合、コクピット視点は背面に回りこまれた敵を視認できず、不利な事を

    確認しています。その時点では、ユーザー視点が重要であると信じていましたが、

    肝心の通信対戦がほとんど発生しなかったので、やはり背面を改正した目論みは

    外れていたと言える、と今では考えています。

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    文章設定 AWGS開発史

    2008-08-18 02:09:05 | 設定画

     先月、スカウトの件で面接を受けました。

    某所にアニメ学校を作るので、講師を探しているとのスカウトでしたが、

    学校の設立が遅れており、私は講師候補のまま保留となりました。

    その後、一件の仕事先へ申し込んで見送られ、現在一件の返答待ち

    の状態です。

     ●ガングリフォンアライドストライク AWGS開発史

    Photo

     今度の申し込み先がシナリオ関連と言う事で、過去に携わった

    文芸設定を紹介します。

     テクモからの要請で書かれた二枚分のAWGS開発史と銘打った

    文章です。テクモ側に正式に渡されたものの、その後音沙汰がなく

    未発表となっています。

    今回の掲載は私の独断で行っておりますので、記事は予告なく削除

    される場合があります。

    これを元に文法の一部修正等をしてタイプし直しました。

    ─────────────────────────────────────

     日本は十二式によって第二世代AWGSに先鞭をつけ、緒戦において華々
    しい成功を収めた。これに刺激を受けた先進各国は、第二世代AWGSの
    開発を急ぎ、十二式の優位性を崩そうとした。
     十二式の生産開始直後からこの動きを感じていた日本は、来るべき第三
    世代AWGS戦をにらみ、次世代AWGS開発計画を始動したのである。
     第三世代AWGSとは、一言に言えば完全な空中機動性を持った、いわ
    ば航空機としての特性を備えたAWGSである。この機体が部隊配備され
    れば、地上から低空域に至る広い範囲での主導権を握ることが出来る、画
    期的戦闘兵器の登場となるはずであった。

    Photo_2

     しかし、諸々の海外事情と国内の経済状態に鑑み、次期生産期
    の採用は当分先送りとなる見通しであった。そこで、十二式で得
    られた技術的優位を保つためのプロットタイプ機(後に二○式と
    呼称)の開発が検討されたのである。この機体は強力なエンジン
    の搭載により、十二式より多くの装備を可能とし、同時に空中機
    動性の改善までも考えた野心的な設計であった。また、パイロッ
    トの脱出を考えたエスケープモジュール等、生存性向上も考慮さ
    れており、技術デモンストレーターとして多くの可能性も盛り込ま
    れていたのである。

     こうしたプロットタイプには良くありがちな重量増加や初期不良の解決に力が注がれる中、いきなり
    増加試作30機の訓示が下った。これは明らかに海外へ派遣する実線テスト部隊の編成を意図したもの
    であった。工廠側ではこの生産計画を実行に移すために、3つの計画を立案した。その第一はスペック
    ダウンしながら実戦に耐える仕様として本機をまとめ直す案であったが、これは各所からの抵抗が大
    きく、実行は困難と思われた。第二は、十二式をベースに二○式の技術を取り入れた新たな機体を作
    り、二○式との混成部隊を作る案である。いわゆる、ハイ・ロー・ミックスによって数を揃えようと言
    う案であるが、補給の複雑化や部隊の混乱が予想された。(この第二案は、後に意外な形で実現する事
    になる)そして第三は、当面の問題解決にかつての提携相手、アメリカの助力を仰ぐことで、これが一番の良策と思われていた。

    Photo_3

     ところがこの時すでにアメリカは第三世代AWGの生産に向
    けたプロジェクト、「ブラックフット」を始動していたのである。
    アメリカはこれによって、軍事ばかりでなく兵器市場においても世
    界に先行しようとしていたのだ。ブラックフット計画の成果、
    XVW-2はすでにハンガー上にその姿を具現化していた。
    ステルスデザインを全面的に採用し、強力な電子装備を持つXVW-2は、あらゆる敵をスタンドオフで撃破できるはずであったが、
    エンジンの開発が難航し、現在は既存のジェットエンジンが装備され
                    ていた。

     こうした事情から、日本の革新的AWGS・二○式へのアメリカからの技術供与は望み薄ということ
    が判明した。工廠では第二案の設計と平行して二○式の開発を急いだが、元々精微なプロットタイプ
    をそのまま生産に移すには、どうしても無理がともなったのである。

     そうして時間だけが過ぎる中、韓国より新型AWGS開発への援助要請があったのである。
     韓国は、国際平和維持軍に積極的に参加することで、先進国間での認知を受けようとしていた。そし
    てそのための派遣軍に新型AWGSを装備することは、一級の存在価値をアピールするためにぜひとも
    必要な事だったのである。
     韓国は、最初アメリカに援助を打診したが、太平洋地域からの撤退を奨めていたアメリカは日本に
    対してこの件を振ってきたのであった。

    Photo_4  日本は、前述の理由からこれを断る手はなく、
    二つ返事で聞きうける結果となった。二○式は
    一部の装備と性能がスペックダウンされて量産
    に移されたが、韓国軍の保有するAWGSの補
    佐を受ける確約を得た前提があっての事だった。
     このAWGSが、前述の十二式を元に二○式の
    技術を加えて計画され、韓国工業界によって生産
    されたKW-1bである。それは、日本の基本
    設計に手を加え堅牢性と実戦での使いやすさ等を付加されて完成し、大量生産に
    移されたのであった。

    こうして元西側では三種類のAWGSが開発されたが、それらは「2.5世代」と呼ぶべきもので、
    完全な空中機動性をある程度犠牲にした機体群であった。

    Photo_5

     この一方、兵器輸出に力を入れるロシアでは、独自のコンセプトと
    して第三世代AWGSの開発に挑んでいた。十二式によって破壊され
    た多くのAWGSの戦闘記録を分析し、地上から一定高度の領域を高
    機動で運動することが第二世代AWGSの強みであるとことをつかん
    でいた。ロシアの設計局では、旧来から研究されてきたWIG(地面
    効果翼機)と強力なエンジンの組み合わせでそれが実現可能と結
    論し、Mi-57(アリヨール)としてまとめ上げたのだのである。
     十二式を凌駕することを目標に作られたMi-57は、スピードに
    おいてはるかに勝り、武装が同等な上に価格は低くおさえられてい
    た。そのため数多くが輸出されて、「2.5世代」の好敵手として各地に出現したのである。

     これらのAWGS群を横目に、ドイツもヤークトパンツァーの次世代機を開発中と伝えられているが
    未だその姿は発表されていない。またアメリカも、VW-1とXVW-2の中間にあたる機体を計画し
    ていたようであるが、これもまだ未確認情報である。
                                                          以上

    ─────────────────────────────────────

     当時のゲーム開発上の事情を反映したストーリー構成となっており、

    従来のガングリフォン世界と矛盾する部分もあると思います。

    当時の開発状況では、資料も乏しく人材も4~5人の体制で、過去の

    スタッフによるバックアップなど望むべくもなく、この文章は一応承認

    は受けていますが、私による独断と見ていただいて差し支えないと

    思います。

    追記 この記事は2004年12月3日に書かれました。

    コメント (2)
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