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メカデザイナー山本薫のBlogです~2006・11・30 お仕事募集中 sp2q6z79@polka.ocn.ne.jp

Ⅳ号戦車 改造案 番外

2009-01-17 17:08:34 | スケッチ

 Ⅳ号戦車を実際にドイツ軍が改造した資料を探すうちに、思わぬものを見つけました。

1972年9月20日発行 航空ファン別冊 「第2次大戦 ドイツの4号戦車」 です。

下図は計画当時の図面らしいのですが、そのまま転載するわけには行かないので、

ほぼ正確にトレースしました。

  ● 5号重戦車の75mm戦車砲の搭載計画 : 1944年11月

  • Photo_4

 Ⅳ号の車体にパンターF型の砲塔シュマルツルム(小砲塔)と呼ばれるものを乗せるため

上部車体を改造したもので、重量過大で放棄されたとあります。

 この計画の前段階としてⅣ号の砲身をL70のモックアップに換えた物がつくられており、

写真が残っています。

 PANZER誌1995年1月号にも同様の計画が紹介されていますが、編集部側で作成された

図面で無改造の車体の転輪前4個が鋼製転輪に換えられています。こちらには、重量の増加

はともかくターレット径を増大させる事は現実性に乏しく、計画は検討だけで終ったと記してあります。

 当時のドイツの実情は、Ⅳ号の生産ラインをパンターに変える余裕すらなく、Ⅳ号の性能アップ

で対処しようとしていた事実をうかがう事が出来ます。

 ただ、この図面が「思わぬもの」である点は他にあります。

  ● 宮崎駿氏による0点改造案 4号 I 型

  • Photo_5

 これは例のコンテストの出題で宮崎氏が描いた悪い改造例で、パースを少し変えて模写したものです。

トランスミッションを流体自動変速機に換えてエンジンの隣に移動し(実際に3両の車両が実在しました)、

前を軽くして前部を傾斜装甲にし「小パンター化」するとあります。

 その上で、この改造が0点の理由を解説していますが、私はその絵が、「5号重戦車の75mm戦車砲

の搭載計画」の図面に似ていると思いました。そして、宮崎氏は航空ファン別冊を所蔵しており、コンテスト

の出題をするさいに参考にしていたと推測しました。

 元よりメカに関する資料が少なく世間的な関心も薄い中で、あれだけの企画と作画を短時間で仕上げ、

模範解答例まで提示してしまうのですから、宮崎氏は一級のクリエーターである事は間違いないと思います。

 しかし、なにかしらの資料を元に創作するのは偽の創作だと言う者もいます。何も無い所から創造する天才

の技が本物だと言う主張は、個人の自由だと思いますが、偽者の正体をあばくためと称して過激な行動

に出る者もいます。そのような過激な行動は創作にたずさわる者の世界を突き崩す行動と言えましょう。

 収集した資料や観察を元に創作することはクリエーターが普通にやっている事で、私もクリエーター

でありたいと考えています。創作者が理不尽な理由で迫害されることなく自然に生きてゆける社会を

切に望むものであります。

 

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