大槻雅章税理士事務所

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№35 所得税基本通達:社会通念上一般的に認められる海外旅行とは

2011-10-25 | ブログ
2011.09.29 社会通念上一般的に認められる海外旅行とは

秋も深まり企業がレクリエーション行事を開催するシーズンとなりました。
近時の円高のため、従業員の慰安として海外旅行を企画する企業も多くなっていますが、使用者が多額な旅行費用を負担すると、その旅行費用は使用者が従業員に対して支給した給与と認定され、源泉所得税が課税されます。
今回は、社会通念上一般的に認められる海外旅行について解説したいと思います。

旅行に参加した従業員が受ける経済的利益に対する課税については、所得税基本通達36-30で基準が明確化されています(下記参照)。
ただし、滞在日数や参加者の割合が通達の基準を満たしていても、旅行が社会通念上一般的に行われていると認められるものか否かの判定に当たっては、使用者の負担額が重視されます。

使用者が負担するレクリエーション費用に源泉所得税を課税しない根拠は、少額不追求の観点から強いて課税しないと取り扱っているからであり、使用者が負担した従業員1人当たりの慰安旅行の費用が、他企業の1人当たりの使用者負担金額を大きく上回る多額なものである場合には、少額不追求の根拠はなくなると判断されています(国税不服審判所、2010.12.17裁決)。

しかし、慰安旅行を海外とする必要性や使用者負担の多寡は、企業の業種や規模、従業員の数、利益の額等、企業によって事情が相違し、従業員1人当たりの旅行費用の他社比較だけで単純に判断できるものではないと思います。
また、所得税基本通達で滞在日数と参加者の割合を列挙して、課税しなくてもよい絶対的な数量基準を定めているにもかかわらず、絶対的とは言い難い他社比較を基準にして課税することは使用者の判断に混乱をもたらすことになります。
もし、使用者負担の多寡を問題とするならば、他社比較という曖昧な基準ではなく、当該通達に従業員1人当たりの旅行費用に関する金額や割合の基準を定めるべきであると考えます。

(所得税基本通達36-30)

使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。

①当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合は、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。

②当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合は、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。

(完)


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