大槻雅章税理士事務所

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№175 振込手数料相当額に対する適格返還請求書(返還インボイス)

2023-09-14 | ブログ
2023.09.14

買手が振込手数料を差し引いて銀行口座に振込むことにより、売手が請求金額を値引きする商慣行があります。この売手が負担する振込手数料について消費税はどうなるか質問がありました。今回は、売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合の適格返還請求書の交付について解説します。

1.売手が負担する振込手数料相当額に適格返還請求書(返還インボイス)の発⾏が必要か?

インボイス制度が施⾏されてからは、返品や値引に対して 「適格返還請求書 (返還インボイス)」を交付しなければなりません(新消法57 の4③)。

ただし、税込1 万円未満の振込⼿数料の値引きであれば 「適格返還請求書」の発⾏が免除されます(新消法57 の4③、新消令70 の9③⼆)。つまり、一般的に振込手数料相当額は1万円未満となるので、適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。

2.経理処理について

例えば、税込11,000 円(税抜10,000円、消費税1,000 円)の商品代⾦を振り込む時に、税込振込⼿数料440 円(税抜400 円、消費税40 円)が発⽣した場合で考えます。
この場合、売⼿Bが振込⼿数料相当額を売上値引きとする場合は、買⼿Aが売手Bに⽀払う⾦額は10,560 円(11,000 円−440 円)です。

税抜価額10,000 円から税抜振込料400 円の値引きをしたので課税売上は9,600 円 (10,000円−400 円)、BがAから預かる仮受消費税額は 960 円( 1,000 円−40 円)になります。

売⼿側仕訳:
(借⽅)cash 10,560 /(貸⽅)売上10,000
(借⽅)売上値引400 /(貸⽅)仮受消費税1,000
(借⽅)仮受消費税40

買⼿側仕訳:
(借⽅)仕⼊10,000 /(貸⽅)cash 10,560
(借⽅)仮払消費税1,000 /(貸⽅)仕⼊値引400
(貸方)仮払消費税40

ただし、返品や値引きをした場合の適⽤税率は、返品や値引きの基となる売上等の適⽤税率に従います。そのため、軽減税率(8%)対象の売上等を対象とした振込⼿数料相当額の売上値引きには軽減税率(8%)が適⽤されます。

また、振込手数料の勘定科目を「売上値引き」ではなく「支払手数料」とした場合の適用税率も同様です。したがって、支払手数料勘定の摘要欄に売上げに係る対価の返還等と分かるように記載し、通常の支払手数料と区別できるように補助コード等を付ける必要があります。

※国税庁「消費税の仕⼊税額控除制度における適格請求書等保存⽅式に関するQ&A」の
「問30.売⼿が負担する振込⼿数料相当額」を参照して書きました。

(完)