2014.08.31 財産評価:貸家の評価と賃貸割合
貸家とは、賃貸借により貸付けの用に供されている家屋のことをいいますが(評基通94)、相続や贈与があったときの貸家を評価する場合に、たまたま借家人がいないときがあります。このようなケースで、貸家の評価はどうするのでしょうか?今回は、戸建ての場合と、アパート・マンション等の集合住宅に分けて説明したいと思います。
賃貸借とは、民法601条で「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって効力を生ずる契約」と定められ、借家人の権利は借地借家法によって保護されているので、賃貸人(つまり家屋の所有者)にとっては自由な使用に制限が加えられることになります。
そこで、税法は、自用家屋と貸家を同等に評価することの不公平さを軽減するため、貸家の評価を減額しているのです。
具体的には、自用家屋の価額から自用家屋の価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた額を控除した金額で評価します(評基通93)。現在の借家権割合は30%ですから(評基通94)、下記の計算式となります。
家屋の固定資産税評価額-家屋の固定資産税評価額×0.3×賃貸割合
賃貸割合は、アパート等の集合住宅のように複数の独立部分がある場合に、課税時期現在の賃貸状況に応じて賃貸部分の割合を計算します(評基通26の(2))。賃貸割合の計算は、原則として、床面積に基づいて算定します(評基通94)。
ここで問題となるのが、課税時期に借家人がいない場合の賃貸割合をどうするかということです。これは、以下のように、戸建ての場合と集合住宅に分けて判定されます。
(1)戸建ての場合
借家人がいない家屋は、自用家屋と同様に固定資産税評価額に1.0を乗じて評価します。その理由は、課税時期に借家人がいない場合は、所有者はその家屋を自由に使用し処分することができるからです。
(2)集合住宅の場合
課税時期において他の部屋に賃借人がおり、一時的に賃貸されていない空室部分がある場合には、その空室部分も含めて貸家とみなして評価されます。一時的であるか否かの判断は、事実認定されますが、①継続的な賃貸状況、②その空室の賃貸募集をしている、③相続開始後にその空室が賃貸された、④その空室が他の用途に利用されていない等の事実を総合的に勘案して判断されます。
(完)